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さりげない、ささやかな人生  スクールゾーン単独ライブ「ゴールデンゾーン」


よしもと∞ホールにて、スクールゾーン単独ライブ『ゴールデンゾーン』を見てきました。

彼らの単独ライブを見るのは初めてでしたが、いつも見ているYouTubeのコント『のぞき見シネマ』のクオリティーが毎度毎度素晴らし過ぎるので始まる前から背を正して待ちに待っていました。

結果、これが本当に素晴らしいライブでした。
面白かった、楽しかった、笑えたはもちろん
『素晴らしかった』としか言いようのないライブだったのです。

映画を一本見たような、という表現がありますがそれを超えて
人生の一生を一時間で見たようなコントライブでした。

正直お笑いファンの間でもっと話題になるべきとんでも無いクオリティのライブだと思います。

何がこんなに胸を打つのか、整理をしたくて感想を書いてみることにしました。

〜スクールゾーンというコンビについて〜

そもそもスクールゾーンというコンビは、韓流モノマネや、一癖ある人間モノマネシリーズをきっかけにInstagramで若い女性を中心に支持を得ているコンビです。

はしもさんの韓流ネタ

俵山さんの一癖ある人間モノマネ




それゆえに実際客席を見回した感じ、あまり普段お笑いライブに来る感じの人は多くないのかな〜という風に感じました。

いわゆるお笑いマニア以外のお客さんを劇場に足を運ばせる魅力がある、まずこれがスクールゾーンの凄いところだと思います。

彼らの動画のコメント欄なんかでも、
『それぞれInstagramをフォローしていたけど、まさか二人が同じコンビの芸人だということを知らなかった。』というコメントがよく付いていたりします。

お笑いに興味が無い人も惹きつけてしまう、
それって簡単に出来ることでは無いので本当にとても凄いことなんですけど、


いわゆるお笑い大好き、お笑いマニアである自分としてはこう思ってしまいます。

『世のお笑い好きよ、こんな凄いコントを見逃さないでよ!』と。

一体どの目線から、何を言ってるんだ…と思われるかもしれませんがこんな素晴らしい単独ライブがたったのアーカイブ三日で終わってしまうなんてあまりにも勿体無さすぎる!と強く思うのです。

以下一部ネタバレを含みつつですが、
なるべく確信に触れないように
この単独ライブの魅力を書いていきます。


〜順番の妙〜

"実は各コントが全て繋がっていたのです!"

こういった構成はお笑い好きな人たちなら一度は誰かの単独ライブで見たことがあると思います。

私もこういった構成は大好きです。
大好きですが、あるっちゃある構成です。

このゴールデンゾーンもそう言った構成になっているのですが、このライブの凄いところは、そのギミックを使って人生の『思い出のワンシーン』をコントとして描いているところにあります。




居酒屋で愚痴りながら、各々一人で呑んだくれている中年男女の映像からスタートするこのライブは

ある中学生女子の苦い恋を描くコント
【聞こえない蝉時雨】

おかしなお客二人に責められる男性店員の悲哀のコント【手取り18万】

時間だけを持て余してコンビニにいつまでも座り込んでいる田舎のカップルのコント
【暇、暇、暇。】

思春期的悪戯を繰り返す男子中学生とそれを注意する女子、そしてその二人のその後の再会を描くコント【あの子】


それぞれのコントの幕間で居酒屋の映像のシーンが流れ、時に中年の女が、時に中年の男が酒を煽りながらそれぞれ愚痴るシーンが映ります。

そこで客席は『なるほど、このライブはこの中年の男女のそれぞれの思い出がコントになっているのか』ということが見ている内に分かってくるのです。

この「今→過去の追想→今→過去の追想」を繰り返し最後に帰結するラストのコント
【なんでもいいよ】

身を寄せ合って二人で小さな食卓を囲むシーンを見ていると、
それまで1時間のライブの中で見て来た彼らのそれぞれの思春期からこれまでの人生が走馬灯のように溢れ出てくるのです。

この各々の過去と今と、そして二人になってからその先までをじんわり思い描かせてくれるようなコントの順番の妙がまず素晴らしいと思いました。

〜演技の妙〜

スクールゾーンの演技は、上手を超えていわば『自然』の域に達しています。
クレームつける変なおじさんも、ちょっとキモめな男子中学生もギリギリ本当にいそうなんですよね。
今回はその中でもやはり核となる中年男女の演技が本当に素晴らしかったです。

ラストのラスト、食べかけの煮物のタッパーの蓋を閉めて『これ明日の昼だ』と言うおじさんに『いいよ、昼出したらいい。また』と蓋を一緒に閉めながらそれに答えるおばさん。
一度はどこの家庭で見たことあるやり取りですよね。
何より最後の最後、暗転ギリギリでマイクが遠ざかる中でも
『あんた自分で片付けたらどうだい?』と言うおばさんに『悪りぃ、悪りぃ』とでも言うように手をあげるおじさんの演技をしていて
どこまでが脚本でどこまでがアドリブなんだろうと?と本当に胸打たれてしまいました。


〜来場して感じたこと〜

鳴り止まない拍手に先までおじさんおばさんだったスクールゾーンのお二人は恐縮しきりに『こんな拍手は初めて』と照れ笑いしてました。
写真撮影の時間を設けてライブは終了したのですが、何より驚いたのは退場がはじまってもお客さんが席を立たなかったのです。
皆んな席でアンケートを記入するのに集中していました。お笑いライブでこんな光景を見たのは初めてでした。
なんだか私もあまりにも色々胸に来すぎて、
その後も白昼の渋谷をぼやーっと歩いてしまいました。


〜さりげない、ささやかなそれぞれの人生〜

ライブが終わった後、それぞれのコントを思い出して主人公じゃない方の登場人物にもつい思いを馳せてしまいました。

先輩と帰れたあの男子高校生はどんな大人になったんだろう、とか
電気屋で言い争っていたおじさんたちは意外と仲良くなってるかもな、とか
バイクの彼氏は事故ったりしてないだろうか、とか
書くな!とつっこんでくれたあの子の子供はもう大学生くらいになってるのかもなとか

どこにでもさりげなく居る、目立ちもしない彼らのささやかな人生。

たかがコントの登場人物の、しかも脇役にそこまで思いを馳せてしまうのは
何よりスクールゾーンの二人が全部演じてるからんですよね。
彼らがどんな役にもちゃんと命を吹き込んでるから、こんな事を思い浮かべちゃうんだろうと思います。



〜その他のこと〜

衣装、小道具、毎回どこから見つけてくるの?と聞きたくなる程本当に絶妙でそこもオススメチェックポイントです。


素人が長々書きましたが、
とにかくほんの一時間ですから、見てみてください!

チケットの購入期限は7/13のお昼12時まで、
動画の配信可能日は7/13の午後13時までです。


少しでもコントの中の彼らのささやかな人生に出会う人が増えますように。

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