家にいた猫たち
ぴっちゃん メス雑種
当時大学生だった姉が拾ってきた。
公園に段ボールに捨て猫が5匹くらい入っていて、1匹ずつもらわれていき
最後にのこった1匹を姉が拾ってきた ということだ。
母に、見せるものがあると言われて工場に行くと、
母の手のひらの中に小さな猫がいた。
それまで、ペット厳禁だった我が家に突然猫がやってきた。
名前はすでに母が決めていて「ぴっこ」だった。
当時母が好きだった映画俳優ブラッド・ピットからとったとのこと。
ぴっちゃんと呼んで可愛がられた。
コーヒーフレッシュを一滴もこぼさずに飲む。
ドアノブを開ける、サッシの鍵を開ける、泣いている人の涙を舐める、
寝転んでいる人のもみあげを毛づくろいするなど。
頭のいい猫であったが、うちの飼い猫が3匹になったある日、
帰ってこなくなった。
母は悲しみのあまり寝込んでしまった。
こてつ オス雑種
母とペットショップの「里親募集」のところで拾った。
柵の中に10数匹の子猫がいる中で1番大きかった。
一度抱き上げて「この猫はもう大人かな」と思って下ろすと
柵をよじ登ってさばりついてきた。
これがこてつが一番頑張った瞬間である。
仕方がないので連れて帰った。
みるみるデカくなり毛むくじゃらになった。
その体格とは逆におとなしくて臆病で、
基本的に押し入れから出てこない猫だった。
くしゃみをしても驚いて逃げた。
チョビとは違って狩りも下手で、好物は母が買ってくるエビと刺身だった。
晩年はあまり食べなくなり、体もやせていった。
そしてある日、ぴっちゃんと同じように帰ってこなくなってしまった。
母は寝込みこそしなかったが、最も可愛がっていた猫だったので
相当にショックを受けていた。
今でも実家の押入れを開けると、こてつがいる気がする。
チョビ オス雑種
中学3年生頃、同級生の女の子が
「1日預かって」
と言って連れてこられた後、15年くらい我が家に預けられていた猫。
小柄だったが目つきが悪く、亡くなった祖母は
町内のノラをチョビが黙らせている姿を見て
「チョキはここら辺のボスじゃ」と言っていた。
祖母はなぜかチョビのことをチョキと呼んでいた。
根っからのハンターで、スズメなどの小鳥をよく狩って庭でバキバキ食べていた。
最後の方はハトを獲っていた。
沖縄に移住して三線の修行をしていた2番目の姉が帰省すると
母が精のつくものを食べさせるようにスズメを狩って姉の枕元に置く猫だった。
ぴっちゃんとは違った知性を持つ猫で、
完全にこっちの言っている事を理解している節があり、
時々人間みたいだと思うことがあった。
逆に、人間観察をしていて(猫みたいだ)と思うようになったのは
このチョビがとても人くさい所を持っていたからかもしれない。
自由気ままなアウトローだったが、この猫は心臓マヒで我が家で息を引き取った。
母と2人、動物病院で死亡を確認し、動物病院の葬儀場で火葬した。
すべてが終わって母と家に帰ると、
庭の塀にムクドリが見たことのない数集まってピーチクパーチク騒いでいた。
これまで散々命を脅かされた鳥たちも、チョビをとむらったのか
それとも喜んでいたのか。
トト メス雑種
一番上の姉がどこからか突然拾ってきた猫。
トトも捨て猫で、ほとんど死にかけていた。
体はやせ細り、目ヤニで目は開かず、鼻も詰まっていて口でゼイゼイ息をし、
耳も耳アカででドロドロだった。
姉は拾っただけで後の世話は全て弟がやった。
(1週間もたないだろう)と思って目ヤニ・鼻クソ・耳アカを取って
耳掃除してキレイにする ということを毎日やっていたら、18年くらい生きた。
性格のキツイ猫で、チョビのこともコテツのことも嫌っていた。
ちなみにチョビもコテツもこの頃には丸くなっていて、
キツくあたるトトに対して「はいはい…」という感じだった。
気に入らないとゲロを吐くというクセがあり、
母はいつもトトのゲロ掃除をしていた。
晩年はさすがに丸くなり、母と一緒に寝たりしていた。
元々体が強くなかったようだが長生きして、
最後は家で母に見守られながら息を引き取った。
マイケル
猫を描い始めた最初の頃に、我が家によく訪問していたと思われる。
マイケルとしか言いようのない猫だった。
他はあんまり覚えていない…。
この手の猫は、その後も何回か来て、
それがマイケルなのか別の猫なのかよく分からなかった。
チョビが狩ったスズメやハトのおこぼれを取りに来る
下っ端猫も確かこんな柄だった気がする。
そういう下っ端が来た時、チョビは鳥の内臓だけ食べて
残りを下っ端に持って帰らせていた。
ちなみにコテツは
「鳥なんか食べない!僕はお刺身」という感じだった。
セーレム オス雑種
短い間、我が家によく来ていた黒猫だった。
毛並みが綺麗だったので飼い猫だったのかもしれない。
庭に出ると、のそのそと近づいてきてスリスリする人懐っこい猫だった。
体つきはガッシリしていて重かった。
腰掛けるとピョンッとひざに乗ってゴロゴロ言い始めたり
母が洗濯物を干すためにかがむと、背中によじ登って首に巻きつき
ゴロゴロ言っている猫だった。
抱っこするといつまでも抱っこされている、とにかく甘えん坊の猫だったが
いつの間にか来なくなった。
チャミ
短い間、我が家の庭に出入りしていたノラ猫。
毛がふさふさで白色で、目の周りとしっぽが黒という
なんとなく高級感のある猫だった。
警戒心が強く、決して懐こうとしなかった。
ある日、下半身を引きずって庭先で泥だらけになっているチャミがいた。
すぐにつかまえて動物病院に連れて行った。
車か何かにぶつかったのか、下半身が動かない状態で
母と2人飼う決心をして、ケージなどを買って家で看病することにした。
ほどなくして回復し、歩き回れるようになったチャミは
恩返しも何もせず、すぐにいなくなってしまった。