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UdonSharp最適化の基礎と制限の緩和状況について

UdonSharp の概要

UdonSharp は、VRChat におけるプログラミング言語 Udon を C# 風のコードで記述できるようにする拡張ツールです。Udon は本来ノードベースのビジュアルスクリプティングであるため、テキストベースでの開発ができる UdonSharp は開発効率を大幅に向上させます。

UdonGraph との違い

標準の UdonGraph はノードをつなぐ形でスクリプトを書くのに対し、UdonSharp では C# ライクな構文でロジックを記述できる ため、可読性と保守性が向上します。しかし、最終的には Udon Assembly(Udon のバイトコード) に変換されるため、C# とは異なる制約が存在します。


基本的な書き方

コードの構造と最適な書き方

UdonSharp では UdonSharpBehaviour を継承してスクリプトを作成し、オブジェクトにアタッチして利用します。

  • Awake() はサポートされていないため、Start() を使用する

  • Update の乱用を避ける(パフォーマンスへの影響が大きい)

  • 共通処理はクラス間の継承ではなく、ユーティリティクラスで管理

  • メンバ変数は可能な限り private にし、公開する場合は [SerializeField] を使用

  • 可能な限り Unity の組み込み機能(アニメーション、シェーダーなど)を活用

シンプルなコードサンプル(基本的な UdonSharp の使い方)

using UdonSharp;
using UnityEngine;

public class LightToggle : UdonSharpBehaviour
{
    public GameObject targetLight;

    public override void Interact()
    {
        bool currentState = targetLight.activeSelf;
        targetLight.SetActive(!currentState);
    }
}

このスクリプトは、プレイヤーがオブジェクトを「使用」すると、targetLight のオン/オフを切り替えるものです。


よくある最適化テクニック

  1. Update の使用を最小限にする

    • Update 内での計算を減らし、必要なら SendCustomEventDelayedSeconds() で代替

  2. 処理をフレームごとに分散

    • 例えば、1000件のデータを処理する場合、100件ずつ10フレームに分ける

  3. GetComponent<T>() の使用を減らし、キャッシュする

    • Start() で一度取得し、変数に保存する

  4. ネットワーク同期の無駄を減らす

    • UdonSynced の変数は頻繁に更新しない

パフォーマンス最適化サンプル

using UdonSharp;
using UnityEngine;

public class SequentialActivator : UdonSharpBehaviour
{
    public GameObject[] targets;
    private int index = 0;

    public void StartSequence()
    {
        index = 0;
        ActivateNext();
    }

    public void ActivateNext()
    {
        if (index < targets.Length)
        {
            targets[index].SetActive(true);
            index++;
            SendCustomEventDelayedSeconds(nameof(ActivateNext), 0.5f);
        }
    }
}

このコードでは、ボタンを押すと 0.5 秒間隔でオブジェクトを順番に有効化する処理を実装しています。


UdonSharp の制限(2025年2月8日現在)

下記は、C# では使える機能の一部が UdonSharp では制限される例です。ただし、UdonSharp は継続的にアップデートされており、一部制限はすでに解消されつつあります。

1. ジェネリクス (List など)

  • 以前: 非対応

  • 現状: UdonSharp 1.2 ベータ以降で一部サポートが追加され、List<T> や Dictionary<TKey, TValue> などが“擬似実装”として利用可能になりました。ただし完全なサポートではなく、複雑なジェネリック機能は制限される場合があります。

2. クラスの継承

  • UdonSharpBehaviour を継承したクラス同士であれば、基本的な継承 (BaseClass -> DerivedClass) が可能

  • 非 UdonSharpBehaviour のクラス継承は依然として不可

  • 対処: 共通処理はユーティリティクラスや ScriptableObject 代替策などで管理

3. コルーチン (yield return)

  • 依然として不可

  • StartCoroutine は使用できません

  • 対処: SendCustomEventDelayedSeconds() やフレーム分割による擬似コルーチンで実装

4. 例外処理 (try-catch)

  • 例外処理は 未サポート

  • 対処: TryXXX パターン(戻り値で成功可否を返す)で代替

その他の制限

  • デリゲート・イベント: 未サポート

  • メソッドのオーバーロード: 未サポート

  • インターフェース実装: 未サポート

  • マルチスレッド: 不可

プロパティ構文 (get/set)

  • UdonSharp 0.20.0 以降で サポート済み

  • public float MyValue { get; set; } といった定義が可能


まとめ

UdonSharp はバージョンが上がるにつれ機能が拡張され、かつて不可能だった要素が段階的にサポートされつつあります。しかし、標準の C# と完全に同じ振る舞いではないため、パフォーマンス上の注意制限機能への対処が必要です。

  • 可能な限り Update を使わず、イベントや遅延呼び出しを活用する

  • ネイティブ C# ほど高速ではないので、大きな処理はフレーム分割

  • デリゲートやインターフェースは依然として非対応

  • ジェネリクスは一部サポートされ始めている

  • プロパティ (get/set) は対応済み

最新の UdonSharp ドキュメントやコミュニティでの情報をチェックしながら、最適な方法でワールド開発を進めてください。今後もアップデートで制限が減っていく可能性があるため、定期的にバージョン情報を追いかけるのが大切です。

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