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【競馬】出られた者の想い、出られなかった者の想い(1)【みどりのマキバオー】

私はダイワスカーレットが大好きです。その自省も半分込めています。

※私は2000年代後半の競馬シーンを全く現役で観戦していないため当時の空気感やなんやについては完全エアプです。以下は完全怪文書です。さすがにハルウララやディープインパクト、ウオッカであれば知っていましたが…ご了承いただきたく。

 さて皆さん、「最強牝馬世代」といったときに思い浮かぶのはどの世代でしょうか。
G1・9勝アーモンドアイを筆頭にラッキーライラック・ノームコア・モズスーパーフレアが混合G1を制した2018クラシック世代でしょうか?
牝馬三冠を分け合ったグランアレグリア・ラヴズオンリーユー・クロノジェネシスがそれぞれ短距離マイル・海外・グランプリで手がつけられないほど大暴れした上マルシュロレーヌがBCディスタフまで制した2019クラシック世代でしょうか?

 昨今、特に数年前は牝馬が強い時代と言われましたが、中距離混合G1を牝馬が当たり前のように勝ち負けするようになったのはそう昔のことではありません。
エアグルーヴという特異点こそあれど、私は本格的に牝馬の時代が幕を開けたのは2005年だと思っています。(とはいえ20年近く前ですが…)この年はスイープトウショウが宝塚記念を39年ぶりに、ヘヴンリーロマンスがエアグルーヴ以来8年ぶりに秋天を制するなど混合G1を牝馬が2頭も制しました。通用は厳しいもののダンスインザムードやアドマイヤグルーヴも重賞戦線を賑わせています。とはいえ宝塚記念スイープトウショウは11番人気、秋天ヘヴンリーロマンスは14番人気と所詮はフロックとみる向きも多かったでしょう。
 翌年はハーツクライ海外遠征で不在の中ディープインパクトが古馬戦線を文字通り衝撃的に制圧してしまったので牝馬どころかディープ以外の出る幕はありません。

 そして舞台は2007年…いや、2006年の暮れから語った方がいいでしょう。この年の阪神ジュベナイルフィリーズを制したのは大きなストライドで外から差し切ったウオッカ。2着に入ったのは内でピッチ走法でウオッカに追いすがる重賞2勝、1番人気アストンマーチャン。以下逃げ粘ったルミナスハーバー、追い込んできたローブデコルテと続きます。
雄大な馬体に豪快な末脚を見せたウオッカ、これは只者ではないと恐らく当時の競馬ファンも感じたことでしょう。谷水オーナーでなくとも予感してしまったのではないか、「これはダービー取れるぞ」と。

 春の始動戦、ウオッカはエルフィンステークスから始動し快勝。これマジで何でなんですか?JF勝ち馬がエルフィンS始動????次いで桜花賞の前哨戦、チューリップ賞へ向かったウオッカはフィリーズレビューへ向かったアストンマーチャン不在の中当然1番人気に推され…
 勝ちました。間違いなく勝ったのはウオッカです。クビ差ながら2着馬を突き放すようにゴール前キッチリ抜け出し快勝しました。

 これでウオッカは前哨戦2連勝、JFで2着に下したアストンマーチャンもフィリーズレビュー単勝1.1倍の圧倒的人気に応えここを快勝。まさに桜花賞に向けて視界良好、三冠を遮るものは何もなしといった様相です。
桜花賞の単勝オッズもウオッカが1.4倍と圧倒的1番人気、続いてアストンマーチャンが5.2倍、3番人気はここまで4戦2勝、敗れた2戦も重賞2着2回、チューリップ賞でウオッカに敗れたダイワスカーレットの5.9倍。4番人気は34.7倍と圧倒的ウオッカ1強、そして3強ムードの中桜花賞がスタートします。

 そして結果は見ての通り。ダイワスカーレットの完勝です。終始ウオッカの前で先行競馬に徹し、先頭に立った残り100m、他馬にとっては絶望的ともいえる二の足を繰り出しウオッカ以下の追撃を許すことなく後続馬を完全粉砕します。2着はウオッカ、以下カタマチボタン・ローブデコルテと続き2番人気アストンマーチャンは7着に沈みました。

 あのウオッカにこれほどまでの勝ち方ができる馬が、それも牝馬で存在するのか。桜花賞後、ウオッカ陣営は改めてダービーを目指すのか、オークスに向かうのかの決断を迫られたそうですが、最終的にダービーへ向かうこととなります。
 その結果が64年ぶり、牝馬による日本ダービー制覇という大偉業です。

 ここまで読んでいただいた方へ、「ああこれはウオッカとダイワスカーレットの物語なんだな、タイトルからしてエリザベス女王杯の話かな?」と思われた方がほとんどだと思います。
これ以降ウオッカの名前は一言も出しませんしダイワスカーレットのレース画像も全く出しません。





 続けます。じゃあオークスは当然ダイワスカーレットが勝ったんだよな?ダービー馬に勝てる牝馬に勝てる同世代の牝馬なんているはずがない。しかし現実はそうはなりませんでした。

 オークスを制した馬の名はローブデコルテ。
ジュベナイルフィリーズ・桜花賞ともに4着と実は先ほどから意図的に名前を出してきていました。とは言えこのオークス、ローブデコルテはダイワスカーレットに直接勝利したわけではありません。ダイワスカーレットが感冒でオークスを回避してしまったからです。

 世代の圧倒的二強馬がともに不在、本命不在のオークス。そんな中で上位人気に推されたのはフローラステークス組のベッラレイア・ミンティエアー、忘れな草賞勝ち馬のザレマ、そして桜花賞でローブデコルテに先着したカタマチボタン。ローブデコルテは5番人気に推されます。

 そんな中で見事樫の女王に輝いたローブデコルテ、しかし現在ローブデコルテの名は果たしてどれだけ語り継がれているか。勝ち時計は当時のレースレコード2.25.3、優秀な時計でしょう。2着に下したベッラレイアもこの後勝利こそできなかったものの重賞戦線で好走を続けた名牝です。しかしこの年のオークスを語る際、ローブデコルテの名前より先に口を揃えてこう言ってしまうのではないでしょうか。

「ああ2007年のオークスね、もしもダイワスカーレットがいれば…」

 結局このオークス後、ローブデコルテは勝利することなくターフを後にします。一方その後の二頭の最強牝馬についてはいまさら語るまでもないでしょう。機会があれば幻の最強マイラー、エイジアンウインズについても語りたく思います。

 さて前置きが長くなりましたがこのローブデコルテ、実は日本競馬史上初の記録を有しています。それは史上初の葦毛のオークス馬…もそうなのですが、史上初・そして今なお唯一の記録、
「外国産馬によるクラシック競争制覇」
を成し遂げた馬であるということです。(持込馬でよければキングカメハメハやエイシンフラッシュがダービー等、牝馬三冠という意味ではヒシアマゾンやファビラスラフイン、ファインモーションが元々外国産馬出走制限のないエリザベス女王杯なり秋華賞等を勝利しています)

 外国産馬(マル外)について少し語ります。昭和~平成初期まで日本競馬はお世辞にも世界的にレベルが高いとは言えず、外国産馬を無条件に受け入れてしまうと日本の馬産が荒らされてしまうという危機感があったため、牡馬三冠・桜花賞・オークス・春秋天皇賞・カブトヤマ記念は外国産馬を出禁にしていました。
しかし80年末以降に輸入されたトニービン・ブライアンズタイム・サンデーサイレンスといった名種牡馬の産駒が活躍し日本内国産馬のレベルが向上してきたこと、また日本競馬の国際化を推進する機運が高まってきたことから徐々に上記レースも外国産馬への開放が進むこととなりました。日本ダービーが外国産馬に開放された2001年のダービーを勝つべく名付けられた外国産馬がクロフネというのはあまりにも有名な話でしょう。
その辺については劇場版「ウマ娘プリティーダービー 新時代の扉」でも描かれている…はずです、さすがにこのタイトルで実名出せないとはいえクロフネ触れないなんてことありえないですよね?競馬もウマ娘も何もかもエアプかよ…

以下が外国産馬開放の経緯です。
2000年 天皇賞春秋ともに2頭まで出走可能に。
2001年 ダービー、菊花賞が各2頭まで出走可能に。
2002年 皐月賞が2頭まで出走可能に。
2003年 オークスが2頭まで出走可能に。
2004年 桜花賞が2頭まで出走可能に。
現在は上記競争は国際競争となり、一切の出走制限はありません。

 2001年の秋天では頭数制限のおかげでクロフネがアグネスデジタルに出走枠を奪われた結果二つの伝説が生まれましたがそれはまた別の話。白井最強
2002世代のシンボリクリスエスはダービー出走も2着、同世代のファインモーションはちょうどオークス開放前年であったことから出走叶いませんでした。
 こうして日本競馬が外国産馬に開放されたはいいものの、結局2000年代以降の競馬はサンデーサイレンス産駒を始めとする内国産馬が大暴れ、サンデー後継種牡馬産駒らのいわゆる父内国産馬までも大暴れ、2000年代前半こそシンボリクリスエスやタップダンスシチーといったG1を何勝もする大物もいましたし、ダートでは一定の存在感を見せ続けますが徐々に外国産馬の存在感は低下する一方。最近ではシュネルマイスターやマッドクールなど再興の兆しが見えますが…

 で、ローブデコルテです。
ローブデコルテはオークスを制しました。確かにダイワスカーレットが不在だったとしてもそれは出られなかった側の勝手な問題でありローブデコルテに一切の非はありません。
しかし現実として最強牝馬不在の中で樫の女王となるもその後秋華賞・エリザべス女王杯とダイワスカーレットを遥か先に見る事しかできなかったローブデコルテの気持ちはいかほどのものだったでしょう。

オークス、確かに「負け」はしなかった。
しかしその先に納得はあったのか?

これが私が考える「出られた者の想い」です。

ニトロニクスを題材に「出られなかった者の想い」について語りたいのは山々なのですがまさかマル外の説明とローブデコルテに関する怪文書だけでこれだけの量になるとは思っていなかったので後編へ。


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