猫を棄てる 何について考えるべきか

#猫を棄てる感想文

「時が忘れさせるものがあり、そして時が呼び起こすものがある。」本書中には出てこないが、本の帯に書かれた文章である。誰しも鮮明に思い出す幼い頃(半世紀以上も前になるだろうか)の記憶の断片を一つや二つは持っているだろう。

この本に出てくる猫に関する二つの記憶 1)香櫨園の浜に父と一緒に棄てにいった猫 2)庭の松の木に登って父も手出しができず、行方のわからなくなった白い子猫 いずれも不可解な話であり、結論もなしにただそれだけの記憶である。 事実であったかも、後年の自分の中での作り話かもしれない。

私にも、70年近く前の動物園の引っ越しで、「動物たちがパレードをして引っ越した。」という記憶がある。 村上春樹の幼い頃過ごした場所に近い神戸の動物園の話である。 しかし、事実は檻にいれることもできず、また当時のトラックに載せることもできない象2頭だけが、飼育員に引かれて歩いたのだと近年知った。

猫を棄てた記憶は、村上春樹の父を語るきっかけとなった。 私にとって、動物たちの引っ越しの記憶は、何について考えるべきか、答えをまだ見いだせないでいる。          


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