Mariana Trench

マリアナ海溝よりもっと深い場所で眠っているぼくを起すのは一苦労だ。
深海6500も歯がたたない。
ぼくは与えられた自分の部屋では眠れない。
部屋の空気がとにかくざわついているからだ。
六つの壁は淫らで破滅的な言葉をぶつけてくる。
常識に身を染めよと命じてくる。
常識はぼくの思考を停める。
ぼくを檻の中に閉じ込める。
あとは知らんぷり。
自分で折り合いをつけろと言って背中を見せて去っていく。
友人はぼくが眠らないことを心配する。
大丈夫、ぼくはぼくの内部にある部屋で眠っている。
マリアナ海溝より深い場所にそれはあると伝える。
その部屋にいる時以外、ぼくはけして眠らない。
いいや
目を覚ましたまま眠っているのだ。
ずっと眠ったままなのだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?