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EVステージ・2非レアアース

テスラの誘導モータ 誘導モーターについて
このモーターはかの有名なニコラ・テスラが発明したもので、高回転時、つまりトルクが必要な高速加速時に優れた効率を発揮します。 初代ロードスターのようなスポーツカーやモデルS、Xのような高性能モデルにおいて、この誘導モーターが選択されたことは自然な選択でした。
電気自動車はエンジンではなく、モーターから動力を得ています。
そのモーターにはいくつか種類があり、それぞれ異なる特性があります。
これらのモーターの種類を理解することで、電気自動車の品質やメインターゲット層を考察することが出来ます。
最初に、テスラが初代ロードスター、モデルS、およびモデルXで導入した誘導モーターについてです。このモーターはかの有名なニコラ・テスラが発明したもので、高回転時、つまりトルクが必要な高速加速時に優れた効率を発揮します。初代ロードスターのようなスポーツカーやモデルS、Xのような高性能モデルにおいて、この誘導モーターが選択されたことは自然な選択でした。これまでのハイブリッド車には永久磁石同期モーターが一般的でしたが、テスラの選択は画期的でした。(パラディウム世代は少し違ったモーターです。)
 永久磁石同期モーターについて
このモーターはどの速度域でも比較的高い効率を持ち、航続距離にもいい影響を与えます。多くのEVがこのモーターを採用しており、テスラもモデルYの後輪駆動グレードに導入しました。
モデル3RWD(SR+)は電気自動車として優れた効率性と電池効率を示していますが、このモーターの欠点はコバルトやニッケルなどのレアメタルを含む永久磁石の供給が安定しない事です。
ちなみにテスラモデル3、YのAWDモデルでは前輪に誘導モーターを使用し、効率とパフォーマンスのバランスを取ることを採用しています。
巻線界磁型同期モーターについて
日産アリアに搭載されている巻線界磁型同期モーターですが、このモーターは日産がアリアのために新規開発したモーターです。特性としては低速高トルク領域(べた踏み)では効率が低いですが、高速低トルク領域(高速巡行)では効率が高まります。
また、巻線界磁型同期モーターは永久磁石を必要とせず、レアメタルの供給に関する問題を回避できるという利点もあります。
テスラの場合、車両情報からどこに何のモーターを使っているのかを確認することが出来ます。 担当エコライフ高橋 参考引用

2024.1.29 意外と知られていない!? 電気自動車のモーターについて
2024年1月29日 エコライフホーム


テスラが「レアアースを使わないモーター」を採用? 次世代の磁石を巡る謎と研究開発の現在
(WIRED US/Edit by Daisuke Takimoto) WIRED Mobility2023.05.07
テスラがレアアースを使わない磁石を用いたモーターを次世代のEVに採用する方針を明らかにしたことが、業界に波紋を広げている。実際のところ、そのような判断は現実的なのだろうか?

テスラが2023年3月にライブ配信した投資家向けイベントでは電気自動車(EV)の新モデルに関する情報は少なく、主に壮大なストーリーが語られていた。このとき、ステージでイーロン・マスクが語った計画「マスタープラン パート3」で示された細かな点が、物理学の小さな分野において大きな話題になった。テスラのパワートレイン部門の責任者であるコリン・キャンベルが、EVに搭載するモーターからレアアース磁石をなくすと発表したのである。これはサプライチェーンの懸念と、生産時に有害物質が発生することを考慮した結果だという。

この点を強調するためにキャンベルは、プレゼンテーションで「レアアース1」「2」「3」という3つの“謎の素材”に関する2枚のスライドを紹介した。最初のスライドは現在のテスラを示しており、モーターに使われているレアアースの総量は最大500gから10gまで幅がある。次のスライドは時期は明示されていないものの将来のデータで、すべてが「0」に設定されていた。

磁性体の研究者たちから見れば、この「レアアース1」が何なのかは明白だった。ネオジムである。ネオジムは鉄やホウ素と組み合わせることで強力な常時性の磁場を生み出せる物質で、レアアースの一種だ。

一方で、ほかにこの性質をもつ物質はほとんどない。そして重量が4,500ポンド(約2,040kg)あるテスラ車や工業用ロボット、戦闘機といったさまざまなものを動かすだけの強力な磁場を生み出せる物質となると、さらに少ない。もしテスラがネオジムなどのレアアースをモーターから取り除くとすれば、どんな磁石が代わりに採用されるのだろうか。

物理学者にとって、ひとつ明確なことがあった。テスラは根本的に新しい磁性物質を開発してはいないということだ。「1世紀に数回は新しい商用磁石が開発されるものです」と、こうした取り組みで競っている数少ないスタートアップのひとつであるNiron Magneticsの戦略担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのアンディ・ブラックバーンは言う。
ブラックバーンなどの有識者たちは、テスラがもっと弱い磁石で対応すると決めたのではないかと推測していた。代替となる候補のほとんどが、コバルトのような高価で地政学的な問題を含む元素を含んでいるが、そのうち最も有力な物質はフェライトである。

フェライトは、鉄と酸素を少量のストロンチウムなどの金属と混ぜてつくられるセラミックだ。安くて生産も簡単で、1950年代から冷蔵庫のドアを閉めた状態にするマグネットの材料として採用されるなど、あらゆる場面で使われるようになった。
一方で、フェライトの磁力は同量のネオジムのわずか約10分の1なので、ここで新たな問題が生じる。テスラの最高経営責任者(CEO)であるマスクは妥協を許さないことで有名だが、もしテスラがフェライトを使うことになれば、どこかで妥協が必要になるのだ(同社にコメントを求めたが回答は得られなかった)。

レアアースの使用をやめるべき理由

EVはバッテリーで駆動すると思われがちだが、実際にクルマを動かしているのは電磁気である(社名である「テスラ」と、磁力の単位であるテスラの名称が同じ人物に由来することは偶然ではない)。モーター内のコイルに電子が流れると電磁場が発生し、これによりモーターのシャフトが回転してタイヤが動く。

テスラ車は後輪を永久磁石を使ったモーターで駆動している。モーターの回転子に永久磁石を配置することで、誘導電流を流さなくても軸が回転する仕組みだ。

テスラがバッテリーを高性能なものにすることなくエネルギー効率と出力を高める目的で永久磁石を採用し始めたのは、約5年前である。それ以前は電磁石に誘導電流を流して磁場を発生させる誘導モーターを採用していた(いまも四輪駆動モデルの前輪を駆動するために使われている)。

それを考えると、レアアースの使用をやめて「最高の磁石を使う」という宣言は、少し奇妙に思える。自動車メーカーは一般的に、特にEVの場合には効率性を重視している。航続距離が限られることによる不安をドライバーに乗り越えてもらう必要があるからだ。

ところが、自動車メーカーがEVの生産規模を拡大し始めて以降、これまで非効率とみなされてきた技術が復活しつつある。例えば、テスラを含む自動車メーカーでは、LFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリーを搭載したEVの生産数が増加している。LFPバッテリーを搭載したEVは、特にコバルトやニッケルなどの元素を含むバッテリーを搭載したEVと比べて航続距離が短いものが多い。

実際のところLFPバッテリーは重量があり、エネルギー密度も低い。例えば、LFPバッテリーを搭載したテスラ「モデル3」は航続距離が272マイル(約437km)だが、さらに高性能なバッテリーを搭載した「モデルS」で長距離を走れるロングレンジタイプは約400マイル(約640km)を走れる。とはいえ、高価で政治的な懸念もある素材を使わずに済むという点において、これも賢い判断と言えるだろう。

それでも、テスラが磁石をはるかに性能の劣るフェライトなどに単に置き換え、何の手も加えないとは考えにくい。「巨大な磁石をクルマに搭載しなければなりません」と、ウプサラ大学の物理学者のアレーナ・ヴィシナは指摘する。

幸いなことにモーターは、ほかにもさまざまな部品で構成されるかなり複雑な機械であり、これらを再構築することで磁力が弱い欠点を理論上は補うことが可能だ。例えば素材メーカーのProterialは、フェライト磁石をコンピューターモデル上で配置するなどしてモーターの設計の一部を微調整することで、レアアースを用いたモーターの性能指標の多くを“再現”できることを突き止めている。結果的にモーターは約30%重くなっただけで済んでおり、この差は自動車全体から見れば小さい。

こうした困難があるにもかかわらず、自動車メーカーが可能な限りレアアースの使用をやめるべき理由は多くある。1990年代初頭に中国の最高指導者だった鄧小平が「中国にとっての金属はサウジアラビアにとっての石油と同じようなものだ」と宣言したときから、金属は環太平洋地域の地政学的な懸念をはらむバズワードのようになっている。

この不思議な色の大地は、資源開発による“汚染”を象徴している
レアアース全体の市場規模は米国の鶏卵とほぼ同じであり、理論上は世界中で採掘・加工・磁石化が可能である点で石油とは大きく異なる。しかし、これらの工程すべてをこなせるのは、中国だけなのだ。

中国による独占に近い状態は、経済的な要因と環境への懸念に起因している。90年代に中国産の低価格の
が市場を独占し、米国などでの採掘・加工の終焉を加速させた。また、磁力を高めるネオジムなどの価値が極めて高い物質は、その他のレアアースだけでなくウラニウムやトリウムといった放射性元素との結びつきが強いことから、採掘・加工の過程で有害物質が出ることが広く知られている。そして現時点でレアアースの採掘の3分の2近くと、磁石への加工の90%以上を中国が担っているのだ。

「100億ドル(約1兆3,600億円)規模の産業が、2兆から3兆ドル(約270兆から410兆円)の価値がある製品を生み出しています。これは非常に大きなレバレッジです」と、鉱物アナリストで人気ブログ「Rare Earth Observer」を運営するトーマス・クルーマーは言う。彼によると、これは数キログラムのレアアースしか使っていないとしても、自動車にも当てはまるという。レアアースを取り除いてしまえば、自動車は走れないからだ(モーター全体を設計し直すなら別の話である)。

次世代の磁石に求められる「3つの性質」

米国と欧州は、サプライチェーンの多様化を進めようとしている。2000年代初頭に閉鎖されたカリフォルニアの鉱山は最近になって再開され、現在では世界の15%のレアアースを採掘している。もっとも、これらの鉱石は加工のために中国に輸出されている状況だ。

米国では政府機関、特に航空機や人工衛星などの機器に強力な磁石を必要とする国防総省が、米国内や日本、欧州のような友好的な地域のサプライチェーンへの投資に力を入れている(これに対してエネルギー省は海藻を使って海水からレアアースを分離させる方法を模索している)。だが、コストや必要なノウハウ、環境問題を考慮すると、これには数年から数十年の時間が必要だろう。

一方で、脱炭素に貢献する自動車や風力タービンなどに用いられる磁石への需要は高まっている。Adamas Intelligenceの調査によると、現時点でレアアースの12%はEVに使用されており、市場は軌道に乗りつつある。これと同時に近年のレアアースの価格は、国外の企業から常に予測できるとは限らない中国の国内市場と政治的介入によって急騰している。

代替品をうまく利用できる業界なら、一般的にはそうすることが理にかなっているだろうと、テキサス大学オースティン校で磁気素材を研究する物理学者のジム・チェリコウスキーは指摘する。しかし、フェライトより優れたレアアース磁石の代替品を探すべきさまざまな理由があるという。

課題となるのは、欠かせない3つの性質を備えた素材を見つけることだ。それは素材が磁気をもっていること、ほかの磁場があっても磁気を維持できること、そして高温に耐えられることである。磁石は高温になると磁気を失ってしまう。

どの元素が優れた磁力をもっているのか、研究者たちには検討はついている。だが、その原子配列の候補は無限にあるという。

次なる磁石を探索している人々は数百から数千もの候補となる素材を用意し、レアアースを含むなどの欠点からそれらを厳選し、機械学習を使って残った素材の磁石としての性質を見積もる手法をとっている。テキサス大学のチェリコウスキーはこのシステムを利用し、コバルトを含む新しい強磁性材料を生成した結果を昨年末に発表した。これは地政学的に見れば理想的ではないが、出発点ではあると彼は語っている。

中国産のレアアース磁石はなくならない?

多くの場合、最大の困難は生産が容易な新しい磁石を見つけることだろう。新たに開発された磁石のなかにはマンガンを含む磁石など将来的に利用できそうなものもあるが、それらは安定しないのだと、ウプサラ大学のヴィシナは説明する。

非常に強い磁気を帯びていることがわかっているにもかかわらず、大量には生産できない素材もある。例えば、鉄とニッケルの合金であるテトラテーナイトがそうで、正常な状態に原子が落ち着くまで数千年以上の時間をかけて冷やす必要のある隕石からしか見つかっていない。より短い時間で研究室で生み出そうとする試みはあるものの、実を結ぶのはまだ先になりそうだ。

バッテリー生産における「知られざる環境負荷」が明らかになってきた

磁石スタートアップのNiron Magneticsによると、同社は理論上はネオジムより磁気の強い窒化鉄磁石の開発で一歩先を行っているという。だが、この素材もまた不安定であり、生産したり理想の状態を保ったりすることが難しい。

Niron Magneticsのブラックバーンによると、同社は前に進んでいるものの、テスラの次世代EVに間に合うタイミングでEVに革新を起こすような新しい磁石を生み出すことはできないと考えているという。彼によると最初のステップは、新しい磁石を音響システムなどのより小さなデバイスに使うことだ。

レアアースを使わないというテスラの動きに他の自動車メーカーが追随するかどうかはわからないと、鉱物アナリストのクルーマーは言う。地球への負荷の大きいレアアースを使い続けるメーカーもある一方で、誘導モーターを使ったり新しいことを試みたりするメーカーもあるだろう。

テスラでさえEVの各所に数グラム単位でレアアースを使い続けるだろうと、クルーマーは予想する。パワーウィンドウやパワーステアリング、ワイパーなどのモーターがそうだ(これは数字のトリックかもしれないが、テスラの投資家向けイベントで発表されたレアアース含有量を比べたスライドでは、現世代の全モデルと将来のモーターとを比較していた)。

こうしたテスラの次善策にもかかわらず、脱炭素化が進む世界において特に中国産のレアアース磁石は、マスクを含むわたしたちが使い続けるだろう。すべてを変えることができればいいが、クルーマーが言うように「ただ時間が足りない」のである。

(WIRED US/Edit by Daisuke Takimoto)Mobility2023.05.07


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