現代アート真鍋大度
真鍋大度に聞く、時代の再先端を切り開くアーティストたちのつながり - supported by JOHNNIE WALKER BLUE LABEL -Forbes BrandVoice!!
Forbes 2024.01.31
2023年12月に東京・渋谷で開催された「MUTEK.JP」。2000年にカナダ・モントリオールで始まった電子音楽とデジタルアートの祭典で、世界8カ国で開催されている「MUTEK」の日本版だ。出演者のほぼ半数が海外からの招聘という国際色豊かな「MUTEK.JP」では“アーティスト コレクティブ”をキーワードに、コラボレーションによるパフォーマンスを積極的にキュレーションしていたことが特徴的だった。時代の再先端を切り開くアーティストたちを駆り立てるものはなにか。「MUTEK.JP」でも多くの来場者がベストアクトと称賛したパフォーマンスを披露した、真鍋大度に聞いた。
2016年に初めて開催された「MUTEK.JP」は今回で8回目。「テクノロジーによって進化した音楽の突然変異を最前線で追い続けながら、音楽とテクノロジーと対話する世界を探し続ける」という考え方のもと、VJと音楽アーティストが融合したステージや、最新のVR/XR体験、メディアアート制作ツールのワークショップ、最新のクリエイティブにまつわるカンファレンスなど、多様なコンテンツを展開。
電子音楽とデジタルアートの祭典と掲げる「MUTEK.JP」において主軸となる、Spotify O-EASTでのライブパフォーマンスでは、AIニューラルネットワークを使ったAudio/VisualライブセットやジェネラティブなCGと太鼓パフォーマンスが融合するステージ、身体性と知覚の境界を探る没入型のA/V体験など、刺激的なショーが繰り広げられた。
グローバルに活躍するアーティストたちのステージの多くで見られたのは生成AIによるグラフィック表現と音楽の融合。音楽表現に長けたアーティストと、再先端のテクノロジーに挑み続けるアーティストが出会い、コラボレートすることで互いにインスピレーションを受け、さらに彼らの挑戦的なステージにオーディエンスが刺激を受ける。「MUTEK.JP」は参加する全員が対話するようにデジタル・クリエイティビティの輪に連なっていく、そんなイベントだ。
「MUTEK.JP」のフィロソフィに共感し、イベントをサポートするのが「共に前進する(Collective Progress)」をブランドミッションとするラグジュアリー・スコッチウイスキー「ジョニーウォーカー ブルーラベル」だ。
一万樽にひとつしか存在しない希少な原酒でブレンドされた最高峰のグレード「Johnnie Walker Blue Label」は、新しい時代を切り開くクリエイターとともに未来へ前進していく挑戦心を全面に押し出し、音楽やアートといったカルチャーの生まれる場所をサポートする、モダンなラグジュアリーブランドだ。
そんな「ジョニーウォーカー ブルーラベル」がサポートした「MUTEK.JP 2023」で、映像と音楽がシンクロする、極めて没入感の高いライブパフォーマンスでオーディエンスを魅了したアーティストの一人が真鍋大度だ。まずは、披露した作品のダイジェストを動画でご覧いただきたい。
「ダンスと映像のコラボレーションの歴史は多様です。最初は彫刻、絵画、写真といった静的な芸術形式でダンスが表現されていました。映画の時代、特にフィルムを使った時代には、ダンスの動的な側面がよりリアルに捉えられるようになりました。1960年代から70年代には、コンピューター技術の発展により新たな映像作品が生まれ、ダンスの表現方法に革新をもたらしました。現代では、ダンサーの動きをリアルタイムで映像に同期させたり、特殊なスーツでダンサーの動きをデジタル化し、CGを動かす技術が登場しています。このように、ダンスと映像は技術の進歩とともに絶えず新しい表現を生み出していますが、じゃあ今の技術で何ができるのかを考えてみようと、こういう作品を作りました」
使用した技術のひとつが映像と音楽のペアデータをAIに入力すると、ダンス、振り付けが生成されるというもの。一般的にはヒップホップやソウルといったダンス向けの楽曲が入力されることが多いが、そこに真鍋が制作したジャンル分けが難しいようなインダストリアルなトラックを読ませるとどうなるのか試してみたのだという。
「音楽を映像に変換するという作業は歴史が長いですが、AIが音楽から動きを作り出し、その動きを元に映像を作り、そこからさらに生成AIを用いて映像を変換するという作業が単純に音を視覚化することとは違っていて、面白かったのではないかなと思っています。」
後者の生成AIでは様々な手法が使われたというが、理想はリアルタイムでスクリーンに映し出される映像を変化させることだった。しかし、これができるようになったのは2023年11月だったため12月の「MUTEK.JP」までには実装する時間がなく、事前に大量の動画を生成しそれらをリアルタイムで合成するにとどまった。しかし、12月下旬に真鍋が違う場所で披露した際には、リアルタイムでの画風変換を実装したパフォーマンスを行ったという。再先端の技術を即座に自身のパフォーマンスに取り入れる実装力もまた、真鍋のエンジニアとしての高い能力を示している。
ちなみに今回の作品において、音楽は全て自分自身で作成し、映像も真鍋が撮影したものを使用している。
「AIの表現は、子供が公園の砂場で作った山のことを、本人には本物の城のように感じているような、そんな感覚を思い出します。そしてAIが生成したものを見てもらうとわかりますが、まだ不完全なものも多いんですよね。特にテキストから動画を生成する技術はまだ実用で使えるレベルには達していない。そんな未成熟のものが表現として受け入れられるのはアートしかなくて、それがアートのいいところなんですが。そして1年も経たずに精度が高い新しいモデルがリリースされれば、現在のモデルが生成するクオリティーの低いものは使われなくなる。だから今作品になっているものは、今だけのものなのです」
真鍋は1年という表現をしたが、先述の通り11月にリリースされた技術はわずか1ヶ月でアーティストにより実装されアウトプットされるということがテクノロジーの再先端では起こっている。このスピード感もまた、デジタルアートの面白みのひとつだ。そして、同じスピードで未来に向けて走り続けるアーティストたちの協業が、テクノロジーの進化をさらに加速させる。
「SNSによってアーティストたちの横のつながりが生まれやすくなってきたなと感じます。気になるアーティストがいたら“あなたのファンです”とカジュアルにダイレクトメッセージを飛ばして、そこで気が合えば、じゃあ何か一緒にやってみようよとコラボレーションする、そんなことが当たり前に出来る様になりました。特に海外のアーティストと簡単につながれる様になったことは、僕が若い頃では考えられないことなので本当に楽しいですね」
真鍋自身も「SNSきっかけでよくコラボしていますよ」という。自分が持っていない才能と一緒に制作を行うことは刺激になり、自分を高める。アーティストというと個人主義で孤高の存在というイメージがあるが、真鍋が感じている現状は、アーティストたちが積極的にコラボレーションを行い連名で作品を作っていくことをよしとする文化があるという。それは、コミュニティーへの相互貢献がテクノロジーを進化させてきたオープンソースという文化のなかで育ってきた、デジタルアートのアーティストたちに共通する哲学なのかもしれない。
「MUTEKもまた、才能がつながるいろいろなきっかけが生まれる場でした。最初はお互いの才能を見せ合うところからスタートしますけど、その次は相手がまだ知らなかった才能を引き出してあげるようなことができたらいいんじゃないかと思います。長いコラボレーションが続けば共通言語ができて、お互いの遠慮がなくなっていき自由な発言ができるようになる。さらに、時間の積み重ねとともに信頼関係が強くなれば、大きなリスクをとった表現にも挑戦できるでしょう。たとえば、僕がPerfumeとやっているプロジェクトは2010年からはじまっていますが、いまでもコラボレーションという形で、お互いを尊重しながらやり続けていますよ」
異なる才能が、自ら共感する才能を求め、コラボレーションにより作品を作り、そしてさらなる進化のために、また新しい才能と結びつく。その連続が結果的にメディアアート全体を前進させていく。そんな広義のコレクティブこそ、「Collective Progress」を掲げる「ジョニーウォーカー ブルーラベル」が共感する世界観だ。
そんな才能のひとつでもある真鍋自身は、いまなにに興味を持っているのか。インタビューの最後に尋ねた。
「大学の頃から始めて、もう30年近くアルゴリズムを使って絵を描くことに取り組んでいます。しかし、GAN(生成敵対ネットワーク)やDiffusion Modelのような生成AIを用いた映像表現に出会ってからは、長い間にわたって培ってきたモチベーションが一新され、本当に久しぶりに技術に対する興奮を感じています。現在、これらの技術に取り組んでいて、非常に楽しんでいますよ」
レコードを手で動かしてスクラッチするという新しい音楽表現が生まれたことを例に挙げながら、テクノロジーによって新しいジャンルが生まれることに期待していると真鍋はいう。
「画像や動画の生成における解像度の向上やフレームレートの高速化など、技術的な進化は確実な方向性を持っています。これらの進歩は将来的に実現されると思いますし、ビジネスの観点から見れば、非常に便利であり、多くの新しい機会が生まれるでしょう。しかし、アーティストとして私が最も興味を持っているのは、AIが生み出す「間違い」や予期せぬ表現の中に新たな芸術性を見出すことです。AIならではの、人間では思いつかないようなユニークな表現が、新しいアートジャンルの形成と定着に寄与する可能性があります。僕はAIによるこの種のエラーに最も期待を寄せており、その流れに積極的に参加したいと考えています」
Johnnie Walker Blue Label
1820年にその歴史が始まった「ジョニーウォーカー」は世界で最も飲まれているスコッチウイスキーブランド。7世代にわたるマスターブレンダーたちが、ブレンドによって得られる味わいを守り続けている。なかでも、神秘性、希少性、高貴さを意味する「青」を冠した、ジョニーウォーカーの最上位グレードである「Blue Label」は、一万樽にひとつしか生まれない、熟成の頂点に達した希少な原酒だけを用いたブレンド。ほんのりとスモーキーななかに、ハチミツやドライフルーツ、フレッシュなリンゴが色鮮やかに香り、やがてウッディーな余韻が力強く、そしてゆったりと長く続く。
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