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それはなぜなのか?
ロシア懐柔に動くトランプ大統領の狙いと懸念…ウクライナ停戦に向けたトランプ・プーチン会談直後にチョルノービリ原発攻撃
2025/2/17(月) 18:22配信 FNNプライムオンライン
2月24日、ロシアのウクライナ侵攻から4年目に突入する。
トランプ大統領とプーチン大統領が電話会談
そうした中、アメリカのトランプ大統領は12日、ロシアのプーチン大統領に電話を掛けた。ウクライナ戦争の終結についてロシアのプーチン大統領と話し合ったとして、両大統領は「非常に緊密に協力して」直ちに交渉を開始することに合意。その後、米ロ外相電話会談も行われたという。
ロシアの国営メディアである「ロシースカヤ・ガゼータ 紙(2月13日)」は「プーチンとトランプの会話は1時間半続いた。もちろん、ウクライナでの紛争解決という話題も議論された。クレムリンのスポークスマンによれば、ドナルド・トランプは、できるだけ早く敵対行為を止め、平和的手段で問題を解決することに賛成した。『プーチン大統領は、紛争の根本原因に対処する必要性に言及し、平和的な交渉を通じて長期的な解決を達成できるというトランプ大統領に同意した』とペスコフ(=ロシア大統領府のスポークスマン)は述べた」という。
このロシア国営メディアの記事で興味深いのは、「プーチン大統領は、紛争の根本原因に対処する必要性に言及」とあることだ。
ロシア軍が2022年2月24日に「特別軍事作戦」という名の下、ウクライナに突如として侵攻を開始し、その後も「特別軍事作戦」を継続していることは「紛争の根本原因」にはあたらない、「紛争の根本原因」は別にあると言わんばかりだが、それがプーチン大統領の認識なのだとすれば留意すべきことだろう。
英国の公共放送、BBCは「一本の電話でウクライナ戦争が魔法のように終わるわけではない。…しかし、ウラジーミル・プーチン大統領は、この電話会談を行っただけで、すでにある種の外交的勝利を収めている。3年前…プーチン大統領がウクライナへの全面侵攻を開始する決断をしたことで、彼は孤立するようになった。…(しかし)多くの点で、プーチン大統領はすでに望んでいたものを手に入れている。ウクライナ問題で米国と直接交渉する機会、おそらくはキエフとヨーロッパを無視して交渉する機会、そして国際政治のトップに立つ機会だ」(BBC 2月13日)と論評した。
トランプ大統領は、さらに踏み込む。
「ドナルド・トランプ大統領は木曜日(2月13日)、ロシアは2014年のウクライナ侵攻以降、参加資格を剥奪されていた先進民主主義国による経済・政治フォーラム『G7』に再参加すべきだと述べた。『ぜひ戻ってきてもらいたい。追い出したのは間違いだったと思う』と大統領は大統領執務室で記者団に語った」(米政治メディア POLITICO 2月13日)というのである。
トランプ大統領が唐突にロシアのG7再参加にまで言及した真の意図は不明だが、ロシアが再加入して、かつてのようにG7+1またはG8になった場合、そのメンバーであるロシアに新たな制裁をG7の立場から提起するのが難しくなり、現在、課されている「何千もの国際制裁」(BBC 2月13日)についても、緩和の糸口になる可能性も出てきそうだ。
米ロ電話会談の直後にウクライナ原発に攻撃
トランプ大統領が、ロシアのG7サミット復帰を口にした翌日の14日未明、ウクライナのチョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所がドローンによる攻撃を受けた。
1986年の旧ソ連時代に爆発事故を起こし、現在は放射性物質の飛散を防ぐため大型シェルターに覆われているチョルノービリ原発4号機の、まさにそのシェルターで火災が起きたとゼレンスキー・ウクライナ大統領が明らかにし、画像や映像を発表した。
このドローン攻撃による火災は収まり、IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は「放射性物質の放出はない」として、その後、映像でみるかぎり、破損したシェルターの穴の周辺で調査が始まっていた。
ウクライナ保安庁は、この攻撃に使われたとするドローンの残骸の画像を公開していて、その残骸には「ゲラン-2」と思しき文字が書き込まれている。「ゲラン-2」ならば、イランの「シャヘド136」ドローンを原型とするロシアの軍用ドローンを指していることになる。
しかしながら、ロシア外務省は「武器の供与を求めるロビー活動には、パフォーマンスが必要」として「ウクライナによる自作自演」との見解を示し、チョルノービリ原発への攻撃がロシアによるものとの見方を否定した。
こんな複雑な状況になっても、トランプ大統領はプーチン大統領と直接、交渉しようというのだろうか。トランプ大統領には、プーチン大統領と直接、交渉を行い、何が何でもロシアを懐柔したい強い動機でもあるのだろうか。
ロシアは、2023年隣国ベラルーシに核弾頭を搬入した。ベラルーシでは、ロシアから引き渡された、西側のミサイル防衛を避けるよう変則機動で飛べる核・非核両用の9M723短距離弾道ミサイルと、その移動式発射システム、イスカンデルMが配備されていた。物理的には、欧州NATOメンバーであるポーランド、スロバキア、ハンガリー等が9M723ミサイルの射程内となった。
そして、ロシア自身は、アメリカ本国を直接狙える戦略核保有国だ。アメリカや英、仏は、NATO同盟国に核ミサイルが飛んでくるのを感知したら、それが着弾する前に、自らの戦略核兵器を敵国に発射できるよう態勢を整える。
つまり、やられるなら、やりかえすことが出来るというシステムを構築することによって、敵の核攻撃を抑止する態勢をとってきた。そのためには敵の発射を感知し、追尾することが絶対に必要になる。
アメリカは対立する国々の弾道ミサイルや衛星打ち上げロケットを24時間365日監視するために、専用の衛星SBIRS-GEOや、宇宙センサーSBIRS-HIGHを地球の周りに配置している。
これらの宇宙のセンサーが対立する国々のミサイル発射を感知すると、そのデータは、アメリカ宇宙軍基地で受信される。
トランプ大統領が重視するグリーンランドの価値
だが、そのためには敵の核ミサイルの発射を感知し、リアルタイムでその飛翔を追わなければならない。これが物理的な反撃の最大の前提だ。
1月7日、大統領就任前だったトランプ氏は、デンマークの自治領である世界最大の島、グリーンランドを取得したいとの意向を示した。
それはなぜなのか?
世界最大の島、グリーンランドは、鉱物資源や北極海の交通の要衝であることでも注目される場所だが、同時に、西側全体の安全保障上も注目される場所だ。
では、アメリカやNATO、それに日本のようなアメリカの同盟国の安全保障上、グリーンランドは、どのような役割を果たしているのだろうか?
グリーンランドには、アメリカ宇宙軍のピツフィク基地がある。
この基地には、敵の弾道ミサイルの発射を感知した宇宙のセンサーからのシグナルを受信するアンテナを覆う白い巨大なドームが複数、並んでいる。
さらに、敵ミサイルの飛翔を追いかける巨大なレーダーも存在する。その大きさは画面の救急車と比べると分かるだろう。つまり、ピツフィク宇宙軍基地は敵の核攻撃に対する監視・検知・追尾するという抑止の最前提の装備を備えた施設なのだ。
ところが、「デンマークはテキサス州の3倍の面積の(グリーンランド)を監視するために船舶と航空機に加えて、“12の犬ぞりチーム”を擁している」(The War Zone 2025/1/28付)というのが現状であり、デンマークの・ポールセン国防相は、今年に入って「我々(デンマーク)は長年にわたり、我が国の監視に役立つ船舶や航空機への必要な投資を怠ってきた。今、我々はその点について何とかしようとしている」(REUTERS 1月9日)と述べ、グリーンランドの防衛を長らく怠っていたことを認めた。
実際、グリーンランドの周囲を監視するテティス級哨戒艦4隻は、いずれも1990年代初期に就役し、氷雪厳しい北極海の環境で30年以上も運用されてきた。このため「デンマーク海軍のリュイバーク司令官は『老朽化していることはあきらか。頻繁に故障し、運用不能になる』と述べた」(The War Zone 1月28日)
今後、どれくらい運用できるかは不詳だ。
では、デンマーク政府はどうするのか?
地元メディアは「グリーンランドのカンゲルルススアーク空軍基地の拡張を計画している…カンゲルルススアークにデンマークの戦闘機(F-35A)が時折、駐留し、着陸することに対応できなければならない」(Nova News 1月16日)と報じている。
アメリカ宇宙軍基地のあるグリーンランドの防衛に、デンマーク政府が今後力を入れるとしても、それが、どれくらいの期間で成果をあげるのかはわからない。
ただ、この“時間”の問題をトランプ政権が重視したとしても不思議ではないだろう。
では、グリーンランドのアメリカ宇宙軍基地は、日本の安全保障にも関わっているのだろうか?
日本も、反撃能力用のミサイルを開発、または海外から導入しようとしている。国産の「島嶼防衛用高速滑空弾 早期装備型」は2025年度中にも開発が終了し、量産が始まる見込みだ。
だが配備後、その能力を活かし敵の弾道ミサイル発射を抑止するために、その大前提となる敵ミサイルの発射監視・検知・追尾するアメリカの能力と、どのような関係を築くのか、それとも築かないのかも興味深いところだ。
日本は、自らの安全をアメリカの核能力を含む拡大抑止に依存しているとされるが、それでいくとアメリカの拡大抑止にアメリカの核兵器が重要な役割を果たしていることになる。
ところが、「米エネルギー省のより広範な人員削減の一環として、国の核備蓄の管理を任されている国家核安全保障局(NNSA)の職員300人以上を解雇した」(CNN 2月14日)と報じられ、翌日、国家核安全保障局は「解雇撤回を開始した」(同上)という。
解雇の理由は「関係者はCNNに対し、当局者はこの機関がアメリカの核兵器を監督していることを知らなかったようだと語った。」(同上)というのである。
日本は、アメリカの核兵器による拡大抑止に依存するなら、その核兵器政策がどのように運用されているのかにも目が離せないことになりそうだ。
(フジテレビ特別解説委員 能勢伸之)能勢伸之
【画像】ウクライナのチョルノービリ原発を攻撃したドローンの残骸
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カギはロシアへの“強制力”?ウクライナどうなる?
「プーチン氏は自分の本当の意図を隠します。トランプ大統領とプーチン氏の会談は、逆説的ですが、何も悪いことではないと思います」
こう話すのは、ロシアによる侵攻以来、ゼレンスキー大統領の側近を務め続けるポドリャク大統領府顧問です。
なぜ両者の会談は“悪いことではない”のか。侵攻からまもなく3年となる中、ウクライナは戦争終結の道筋をどう描いているのか。NHKの取材班が首都キーウで聞きました。
※以下、ポドリャク大統領府顧問の話(インタビューは1月29日に行いました)
2025年2月14日 19時54分 NHK
これが成功すればノーベル賞級の成果として評価
と願いたいが、99.99パーセント失敗すると、世界がおもっている。なぜかといったら、これまで何度も、同じことをしても成功しなかったという悪い゛実績を払拭することができないからだ。
これが成就しなければ世界は、次の一歩を踏み出せない。アメリカ、トランプ大統領は、そのための談話会談ラブコールを送ったが、(世界戦略軍事絡み)いつものように交したプーチンの真相心理は、用意したシナリオ原稿のプロンプトのように訊けたのはマイク性能の不具合ではなさそうだ。
つたない筆者よりコメント文(※noteアルゴリズム捕食されないように、末尾の感想とした。「それは、なぜなのか?」)