世界共通語日本の「ウオシュレット」
世界のトイレはどうなのその疑問?
なんで、どこもかしこも自動トイレになってしまったのか。温水洗浄便座ではないトイレを使う権利は、この国では消滅してしまったのでしょうか。和式トイレはどこいった?
日本に来て初めて、親子の心が一ミリも乱れないトイレを経験できました。和式トイレ、バンザイ。
それから、アメリカに戻り、しまじろうの本を読んでいたら、娘が和式トイレが描かれたページを見つけました。
「ワタシの好きなやつ!」 まつむらさんnote 部分抜粋
まつむらnote(アメリカ人と国際結婚し、アメリカ在住8年。7歳と5歳の二児の母。家族と一緒に暮らすことを優先し、2020年に国家公務員を辞め、フリーランス(ライター)へ転向。)
■私がそこによせたトイレ顛末コメント文
文化の違い、というには逆文化ですが、よそから日本に来る若い娘(イギリス)さんは、ことのほか、それが大好きで、家に持って帰りたい、とYouTubeで騒ぎます。
こうなるともう、排せつトイレの話しでなく、宗教的な思想に思えますが、その回答はないようです。~
連休が始まって3日経ちました。天気も上々で、どこもかしこも連休ムード一色、超円安の風なんてメディアが騒いでいるだけで、まるで馬耳東風です。(馬の耳には東のイーストコーストの風はなんら影響しない、と解釈)
私も、コロナ陽性明けで、やっと普段に戻ったという感じです。だれでもそうですが、「普通の生活」がいかに大切か、身に染みた3週間でした。
そもそも「ウオシュレット」とは何者か、という初期解説が必要な話しなんですね。
その前に、インバウンド動画を観ていて思うのは、世界から日本観光にやってきた客が口々にいうことは、ゴミが落ちていない、それが大都市ばかりでなく、全国的にゴミがない。マナーがよくて見知らぬ相手に挨拶する。サイフ、時計とか忘れる落とした、しても数日で戻ってくる。若くて日本語ペラペラの年頃娘さんが日本で暮らしたい、という。(内心、そんな簡単な日本人じゃないと、想うが口にはしない私)
勿論食材が豊富で、何でも旨いと絶賛している。特に寿司など、嫌いだ、という外人を見たことがない。
■寿司ネタ高級マグロが絶滅危惧種になっており、その人工孵化技術に成功した研究者の話は、別の項目で記事を書く。
そして、喰ったものは必ず出すのでトイレが必要となって、その日本の全国のトイレが温水式トイレとなっていて、それに感動したという話しです。
今回のウオシュレット話は、少し違っていて、まつむらさんの
娘7歳5歳が日本で経験した、トイレ室内紀行でした。
何が違うのかといったら、トイレが勝手に温水したり、引っ込んだりしてロボットのような仕草に、恐怖を感じた、という母親の観察記でした。
ということは自宅(アメリカ)には「ウオシュレット」が設置してなくて、音もしない、ということなんでしょう。
それが、生まれて初めて経験した個室トイレがウイイーンとなって、そこから温水が出たり、それが肝心なところにシャワーするのですからね、多分石器人が、パソコンをやるくらいの時間差はあったでしょう。
また、母親が、それを説明しなかったことも一因で、子供にとっては外国文化の体験が、あまりにも衝撃だった、そんなことでしょう。
では、そのウオシュレットについて、肝心かなめの日本人は、どの位しっているかといったら、多分若い人はしらないでしょう。私にしたって、当初、出初めのころは、珍しいので見聞しましたが、トイレですから、一度設置してしまえば、既成事実の室内インフラとして、当然だと思って30年経ちました。
変な話し、失われた30年というのは、その世界の一室で30年間、ひたすら働いていた、という二宮金次郎のような模範生だったのです。
ですから、今回開発者の「TOTO」社の開発伝記を読んでみると、昔の日本の姿が投影されていて、現代日本人が置き忘れたスピリットが、そこに描かれていた、そんなことを思いました。
云ってみれば西洋式デジタルトレンドに翻弄され、右往左往を30回もして何も出せなかったものが、その足元を見れば、30年前の自分がいて、エッセンステキストは、そこにあった、という回顧録であったのです。
TOTO 開発秘話 ~世界中の需要に応え、きれいで快適な暮らしの実現のために~
2022年11月19日 15時09分 TOTO
温水洗浄便座の代表格として親しまれているTOTOの「ウォシュレットR」(以下、ウォシュレット)。
ウォシュレットはTOTOが1980年6月に販売を開始し、2022年に発売42年目を迎えている。ウォシュレットを含む温水洗浄便座の、日本での一般世帯普及率は80.3%(2022年3月、内閣府調べ)となり、生活に欠かせない住宅設備の一つとなっている。
ウォシュレットの国内外での累計出荷台数は2022年に6,000万台を突破(※)。国内では一般家庭へのウォシュレット普及が着実に進み、今後はパブリックトイレへの設置を加速させ、訪日外国人などへのウォシュレット体験促進を図っている。一方、海外においても着実に出荷台数が増加しており、出荷1,000万台ごとの所要期間は短くなっている。今日・11月19日は、国際連合が定めた「世界トイレの日」。”きれいで快適なトイレへ”、ウォシュレットの歩みを振り返る。
※2022年10月27日、TOTO発表: ウォシュレット累計出荷台数6000万台突破
ウォシュレットの開発とマーケティングの歴史は、書籍『世界一のトイレ ウォシュレット開発物語』(朝日新書、2011年)に詳しい。主に昭和から平成の中頃にかけてのウォシュレットの開発史をカバーしている。
今回のストーリーでは主に2010年代以降の開発を振り返りながら、最新式のウォシュレットの性能や開発思想について、TOTO株式会社ウォシュレット生産本部長を務める堀本幹夫(ほりもと・みきお)に話を聞いた。(ウォシュレット生産本部長の堀本幹夫)
ウォシュレット開発の歴史
ウォシュレットの原型となったのは、アメリカン・ビデ社が医療用に製造していた「ウォッシュエアシート」である。1963年に商社を通じてTOTOに持ち込まれ、「痔を患っている人に喜ばれそうだ」との判断から、翌1964年12月に国内販売を開始した。しかし、ほとんど売れなかった。ウォッシュエアシートは、便座の座面が小さい、温水になるまで時間がかかる、湯温が不安定、お湯の吐水角度も一定ではない等の問題を抱えていた。輸入品であるため、修理部品がすぐに入手できず、購入者からの修理依頼に即応できないなど不都合なことも多かった。
日本のトイレが和式から洋式に大きく変わったのは、1970年に開催された大阪万博からといわれる。1977年には、TOTOから出荷する和式便器と洋式便器の数が逆転した。
古代ローマ時代から石のトイレを使ってきた西洋人には当たり前のことだが、洋式トイレの便座は冷たい。日本人は、それを嫌い便座に靴下を履かせた。これが日本独特の「便座カバー」になり、暖房便座が生まれた。
1978年秋、TOTOは「納得できる製品を自社で作るしかない」という信念から、自社開発の取り組みを始める。ほとんどが20代だった開発チームでは、連日夜遅くまでミーティングが重ねられた。どのような商品を目指すのか。ヒントとなったのは、ウォッシュエアシートに寄せられていたクレームだった。
社員が実験台となって、さまざまな問題点を一つ一つ確認し、データを集めていった。安全性はもちろん、快適な洗浄感や使いやすさを高めた商品の仕様が決められていった。温水は38℃、便座の温度は36℃、乾燥用の温風は50℃、ノズルから吐水するシャワーの角度は後方43度が最も効果的であることなど、貴重なデータが得られた。この標準数値は、発売から40年以上経った現在のウォシュレットにも受け継がれている。
そして、1980年6月、満を持して「ウォシュレット」が発売される。「Gシリーズ(貯湯式)」と「Sシリーズ(瞬間式)」の2タイプが展開された。
ちなみにウォシュレットは「これからは洗う時代です。洗いましょう。」=「レッツ・ウォッシュ」という意味を込めて名付けられた。
(1980年発売の初代「ウォシュレットG」)
国内外に広がる「ウォシュレット」
ウォシュレットは1980年代後半からアメリカでの販売を開始。現在では、18の国や地域に拠点を設置し、それぞれの生活文化やデザインの嗜好を反映しながら販売を拡大している。出荷台数を見ると、中国などアジアでは堅調に伸び、近年では北米や欧州では伸び率が著しい。(世界の各地域での販売状況)
堀本によると、ウォシュレットは地域によって売れ筋のデザインや、価値提案の仕方が異なるという。例えば欧州ではコンテンポラリーなデザインが好まれる一方、アメリカではよりクラシックなデザインも好まれる。この傾向は、TOTOが手がける浴室や洗面用の水栓などでも同じだというから興味深い。
(米国で人気の高いデザイン。「古き良きーー」といったクラシックなデザインだ)
(欧州では床から浮き上がった「壁掛け便器」が主流で、コードや配管が見えないシンプルなデザインが求められる)
それぞれの地域について、売れ筋の仕様やデザインが異なることに加えて、ウォシュレットとしての価値の提案が違うと、堀本は言う。
「海外の中でも台湾のようにある程度ウォシュレットの認知がある地域では、付加価値の提案で製品を買っていただける。一方、アメリカでは温水洗浄便座の認知がまだまだ低い。需要そのものを作っている段階で、基本的な価値の提案を続けている」(堀本)。
ウォシュレットの「付加価値」とは
堀本の言うウォシュレットの「付加価値」部分とは何か。例えば、2011年以降の機種に搭載された「きれい除菌水」による「ノズルきれい」という機能だ。「きれい除菌水」は、塩化物イオンを含む水道水を電気分解して作られる、除菌成分(次亜塩素酸)を含む水のことを指し、薬品や洗剤を使わず、時間がたつともとの水に戻るので、環境に良いのが特長だ。
水まわりの汚れや臭いは菌が関係して発生するものが多く、TOTOは「きれい除菌水」を搭載する商品を増やしてきた。TOTOの研究所は1970年代からさまざまな研究を行い、とりわけ近年では微生物の繁殖を抑制する研究に力を入れている(※)。
(きれい除菌水の仕組み)
※「TOTO商品の「きれいと快適」を支える研究開発の裏側 ~汚れの現場を再現し、原因を徹底分析。「菌」の抑制に挑む研究者~」
「きれい除菌水」を使った付加価値の機能は「便器きれい」(2012年~)、「においきれい」(2015年~)や「便座きれい」(2022年~)へと、次々に拡張・追加された(※)。ウォシュレットは今やトイレ空間の清浄さを保つために重要な役割を果たす製品機能となっている。
(便座きれいの仕組み)
※便器きれい:「きれい除菌水」を便器ボウル表面に吹きかけ、きれいな状態を長持ちさせる機能
※においきれい:トイレのニオイを自動で捕集し脱臭。捕集したニオイ成分を「きれい除菌水」で洗浄・除菌する機能
※便座きれい:トイレ使用後に「きれい除菌水」を便座裏の先端部分に吹きかけ、汚れに気づきにくく便座裏のきれいな状態を長持ちさせる機能
ウォシュレットの4つの開発軸
堀本に近年の開発テーマについて話を聞いた。「ここ十数年は、クリーン、グリーン、ユニバーサルデザイン、デザイン(形状としてのデザイン)、という4つの軸を立て、製品開発に取り組んできました」(堀本)。
上述の「きれい除菌水」の技術に加え、さらなる省エネ技術、使いやすいリモコンや操作部の設計と、美しいデザインを追求してきたという。
近年の製品は、衛生陶器というローテクだが高度な職人技が求められる製品と、ウォシュレットという精密かつ多機能の電子機器が高度に融合したパッケージとして、完成度が高い。裏を返せば、プロダクトの今後の非連続な進化が可能であるのか、気になるところだ。堀本に聞いた。
「この4つの軸でずっと開発してきたのですが、たしかにそろそろ打ち止めかもしれない、新しい軸を持つ必要があるかもしれない、そういう視点は大事だ。ウォシュレットのIoT化、ネットワーク化など、新しい軸として考えている」。
あくまでもアイディアレベルの話だと前置きしつつ、スマートフォン連携による個人認証やカスタマイズ、ウォシュレットが「知らないうちに、個人に合わせてくれる」ような機能があってもいいのではないか、と堀本は考えている。
「感性工学の視点も重要です。従来、感覚や感性で捉えられてきた使用感や心地よさを、数式化して、プロダクトデザインに落とし込む。今はいろんなメーカーがやっているかもしれないが、TOTOはずっとこの活動をしている。ウォシュレットで言うと、水の量感や洗浄感などを大事にしていて、競合製品との差別化ができていると思う」。
「ただ、われわれが数値化するのが得意と言っても、ヨーロッパのメーカーは数値化しなくてもいいものを作れたりするんだけどね」。堀本は今後の世界展開の課題の一つとして楽しげに語った。
技術者としての成功体験と、事業としての課題
堀本の技術者としての成功体験の一つは、入社後5、6年目から携わったアルカリイオン整水器の開発が、20年近く経ってウォシュレットの「除菌水」として花開き、製品への全面的な導入に繋がったことだという。「技術者の人生として、昔携わった技術がじわじわ成長してきて、製品化されるということが嬉しかった」(堀本)。
一方で、事業面では困難の連続だった。一言でいうとそれは「多様な顧客に求められている製品を、タイムリーに届けることの苦しさ」(堀本)だった。「工場のみんなが頑張って作るものの、僕らの頑張り以上に、進出する国や地域のニーズが多様化したり、競合製品が現れたりして、とにかく変化のスピードが速い」。変化に対してタイムリーに応えてゆくことが難しく、悔しい思いをした。もちろん、コロナや災害の影響もあった。
望まれているのに届けられない。それが事業面の最大の課題なのだと、堀本は真剣な表情で語った。
限られたリソースで多様なニーズに応える、というジレンマの解消を目指して
ウォシュレット生産本部は、グローバル市場への更なる展開と多様化するニーズへの即応体制を整えるため、独自の開発思想に基づき、新たな生産方式にチャレンジしている。
「僕らが抱える開発、生産リソースは有限であり、しかも国内と海外で求められる製品が異なる。さらに、海外といってもウォシュレットの認知度が高い台湾などの市場と、アメリカのように認知拡大が必要な市場では、提供すべき商品は異なるんです。求められるのは、限られたリソースで、あらゆる商品を開発、生産をするということです」と堀本は語る。
中略
(材料の成形から、乾燥と焼成の過程で約13%も収縮する衛生陶器。これをプラスチック製品であるウォシュレットと組み上げる)
(世界の需要に応えるべく、部品から製品への組み立て方式を進化させてきた)
TOTOで受け継がれる理念:「良品の供給、需要家の満足が、掴むべき実態」
堀本へのインタビューを通じて、私たちはあらためてTOTOの歴史とミッションに想いを馳せた。初代社長の大倉和親(おおくら・かずちか)は2代目の社長へこう書き残した。
「良品の供給、需要家の満足がつかむべき実体です。この実像を握り得れば、利益・報酬として影が映ります」。約100年前の経営理念は、現在のTOTOへ連綿と受け継がれているように思われる。
TOTOは、1917年5月15日、日本陶器合名会社から「東洋陶器株式会社」として独立、同年1月1日に、小倉工場(現TOTO株式会社 本社・小倉第一工場)の定礎式が行われた。大倉は、自らの事業にかける決意を「定礎の辞」として示している。
(小倉工場、定礎の辞)
そこには、「欧州斯界之製品ヲ凌駕シ世界ノ需要ニ応ジ益々貿易ヲ隆盛ナラシメン事ヲ期ス」とある。すなわち、グローバルの競合製品を凌駕する製品を開発し、世界のニーズに応えてゆくことを期待する、ということだ。
世界基準での品質とデザインを追求し、多様なニーズに応えながら良品を供給すべしという創業以来のミッションを、堀本らの生産本部は受け継いでいる。ウォシュレットのグローバル展開は、まだ道半ばである。
(「あらためて、トイレの開発ってやっぱり難しいと思う」と語る堀本)
堀本 幹夫(ほりもと みきお)
TOTO株式会社 上席執行役員 ウォシュレット生産本部長 兼 TOTOウォシュレットテクノ株式会社 代表取締役社長
1988年東陶機器株式会社(現TOTO株式会社)入社。水栓金具・生活用品等の事業部、総合研究所・商品研究部、ウォシュレット開発第二部長を経て、2015年4月より現職。
全文