未来型新素材カーボンナノチューブ
2023年10月08日記事
新たな時代をけん引する新素材カーボンナノチューブ 籾殻活性炭
新たな時代をけん引する新素材カーボンナノチューブ
名城大学
「ナノ材料」に関する研究は、1991年の飯島澄男終身教授によるカーボンナノチューブの発見により大きく躍進。現在、青色LED等の窒化物半導体と並び、本学が世界をリードする2大材料となっています。
今回は、カーボンナノチューブをはじめとする本学のナノ材料研究についてご紹介します。
人類の未来を大きく変える夢の素材、カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブは、一見すると黒いすすのように見えます。しかし高精度の電子顕微鏡で観測すると、炭素原子が網目状になった薄いシートが丸まって筒状になっていることが分かります。
筒の直径は数ナノメートル(1ナノは1ミリの100万分の1)で、長さも数ミクロン(1ミクロンは1ミリの1000分の1)しかありません。しかし、カーボンナノチューブはアルミニウムの約半分の重さでありながら、強度は鋼鉄の約100倍。
また製法によっては金属になったり、半導体になったりします。熱伝導性が高く、薬品や熱、摩擦にも強い。人類がこれまで見たことのない夢の材料といっても過言ではありません。
そのため今日、カーボンナノチューブはあらゆる産業界で応用研究が進められています。エレクトロニクス分野では、より軽くて小さなパソコン。
医薬品分野なら、薬品を患部に直送する治療薬。
自動車分野では、より高効率なバッテリーへの応用など。いわゆる「未来の技術」を実用化するには、カーボンナノチューブは不可欠なのです。
カーボンナノチューブの形状
グラフェン(炭素原子がハニカム状に結合したシート)が直径1ナノメートル程度の筒状構造になった物がカーボンナノチューブです。
カーボンナノチューブの使用例
構造によって多彩な性質となるカーボンナノチューブは、さまざまな産業界で応用が期待されています。
カーボンナノチューブが発見されたのは1991年の名城大学のとある研究室
このカーボンナノチューブ、実は名城大学で発見されました。1991年、本学の非常勤講師だった飯島終身教授が、理工学部の研究室の実験設備に付着していたすすを電子顕微鏡で調べたところ、炭素のシートが筒状になっている不思議な構造を発見。
この発見に関する論文が世界で最も権威のあるイギリスの学術雑誌「Nature」に発表されると、世界中の科学者がこの不思議な構造を持つ材料の可能性に注目しました。
そして発見から30年以上経過した今も、この論文のサイテーション(後の科学者が新たな論文を書くときの引用元として紹介されること)は右肩上がりで増え続けています。
現在、カーボンナノチューブはエレクトロニクス分野の一部で実用化されてはいるものの、残念ながらいまだ本格的に普及しているとは言えません。しかし、世界中で着々と研究開発が進んでおり、カーボンナノチューブが私たちの生活を大きく変えるのも時間の問題。そして、カーボンナノチューブを発見した飯島終身教授がノーベル賞の栄誉に輝く日も、遠い未来ではなさそうです。
電子顕微鏡を駆使した材料研究
大学院時代に出会った電子顕微鏡の研究で、物質構造を原子レベルで解明する高分解能技術を世界に先駆けて開発。以来、「原子の姿を見る」ことに魅了され、いくつもの発見を携え、ナノサイエンスの領域を先導してきた飯島終身教授。カーボンナノチューブの発見から31年たった現在も、毎日のように研究室に通い、新たな研究に情熱を注いでいます。
飯島 澄男 終身教授
大学院理工学研究科
ナノマテリアル研究センター 名誉センター長 飯島 澄男 終身教授 Sumio Iijima
東北大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了。1991年にカーボンナノチューブを発見。1999年から名城大学理工学部教授。2010年から名城大学終身教授。NEC特別主席研究員、産業技術総合研究所名誉フェロー。
2009年に文化勲章、2015年に欧州発明家賞、2016年に21世紀発明奨励賞など数多くの賞を受賞。
高性能走査型透過電子顕微鏡を用いて金属化合物の原子配列を可視化する
今日、多くの企業や大学が車載用リチウム電池の開発に取り組んでいますが、私が研究しているのは、その電極材料として使えそうなチタン・ニオブ・タングステン酸化物。従来、シリコン酸化物などの二元化合物の結晶構造は理解されており、リチウムイオンの動きも分かりますが、三元系以上になると従来の測定方法が使えません。そこで日本電子(株)の高性能走査型透過電子顕微鏡(STEM)を使い、電子線を絞って個々の原子に照射し、原子から出る特性X線(EDS)を読み取るという方法で計測。これによってニオブ・タングステンの酸化物(2Nb2O57WO3)の結晶を観察し、原子が規則正しく並んでいる姿を可視化することに成功しました。
この研究成果は、2021年の3月と9月に雑誌「Nature」姉妹誌で論文発表しました。通常、こういう論文は実際に研究を行った科学者が筆頭著者として記名され、私のようなベテランは最後に名前を載せるのが普通ですが、この論文はどちらも私が筆頭著者。つまり私が実際に手を動かして研究したということ。まだまだ若い研究者に負けないよう、さまざまなテーマに挑戦していこうと思っています。
31年前に私がカーボンナノチューブを発見できたのは、私の専門分野である電子顕微鏡の観測技術と経験に加え、金属表面に金属の単結晶が自然成長するウイスカの知識など、さまざまな経験があったからだと自負しています。セレンディピティ(偶然の発見)とは、積み重ねてきた経験や知識の上に訪れるもの。だから今の研究は、すべてこの先の研究につながっていくのだと思います。
日本は資源に乏しいため、今後は科学技術立国になるしか生き残る道はありません。これから本学でさまざまな研究者が誕生し、互いに刺激を与えながら成長してくれることを期待しています。
「夢の素材」の生成過程の解明に挑む
ナノ材料研究は、物理・化学・工学・情報科学と多岐の領域に渡っており、本学においてもさまざまな分野の研究者が、多様な研究テーマに取り組んでいます。その研究力の活用を目指し、2017年に創設されたのがナノマテリアル研究センターです。センター長を務める丸山隆浩教授は、飯島終身教授の研究に協力者として関わり、カーボンナノチューブの合成を中心に研究を進めています。
丸山 隆浩 教授 理工学部 応用化学科 ナノマテリアル研究センター センター長
丸山 隆浩 教授 Takahiro Maruyama
京都大学大学院理学研究科化学専攻博士課程修了。理学博士。筑波大学物質工学系講師、立命館大学総合理工学研究機構ポストドクトラルフェロー、名城大学講師、助教授を経て2010年教授。2013年4月開設の応用化学科では初代学科長。応用物理学会会員。著書に「Carbon Nanotubes」(INTECH社)
カーボンナノチューブの生成過程をリアルタイムに観測する手法の確立
私の専門分野は表面科学でしたが、2002年に名城大学に来たとき、カーボンナノチューブの発見者である飯島終身教授と研究できるならと、この分野に挑戦しようと決めました。
一般に、単層カーボンナノチューブの作製には、金属の触媒と高温の有機ガスを反応させる「化学気相成長(CVD)法」が用いられます。実験室では触媒やガスの種類、圧力・温度・時間といったさまざまなパラメーターを細かく変えながらカーボンナノチューブを作製しますが、これでは触媒と有機ガスの反応プロセスが見えません。そこで私は、X線吸収微細構造(XAFS)スペクトル測定によって生成過程をリアルタイムで観察する手法を開発し、生成過程の解明に向けた研究を行っています。
測定には病院のレントゲンよりはるかに強いX線が必要なため、日本に10カ所程度しかない放射光施設で実験を行います。
そのため、私の研究室ではカーボンナノチューブ作製装置を自作し、愛知県内の放射光施設に持ち込んで実験・分析を繰り返します。実験の前に関連する論文を読みあさり、研究室で予備実験を行って予測を立てますが、実際の実験では予想を裏切られる結果となることが少なくありません。特にカーボンナノチューブの成長をリアルタイムで観測するという研究は、世界でもほとんど手付かずの分野。それだけに、世界最先端の技術に挑戦しているという自負はあります。
今日、XAFSスペクトルによるリアルタイム計測技術はかなり確立されてきたと感じています。それとともに、これまでブラックボックスだった生成過程も解明に近づいてきました。しかし、もしそれが解明できたとしても、広い視野で見ればナノ材料の物性の一部が分かったという程度で、すぐに実用化が進むことはありません。カーボンナノチューブはまだ分からないことばかり。ですから、今後も本学でもっと面白いテーマに挑戦していきたいと思っています。
高性能もみ殻活性炭 株式会社レイホー製作所
もみ殻は飼料や敷材に使われていて、大半は野焼きで処分されていました。もみを焼却するには大量の酸素を必要とします。
その為、二酸化炭素による温室効果ガスの排出が問題になっていました。炭になったもみ殻には二酸化ケイ素が含まれており、広い用途での産業的リサイクルが難しいという悩みがありました。
長岡技術科学大学の研究グループは、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムを用いて熱処理をする事により、もみ殻から二酸化ケイ素を取り除くことに成功されました。
従来の活性炭は1g当たり1000平方メートルなのですが、高性能もみ殻活性炭では2.5倍ほどの表面積があり、高い吸着力を持つことが発見されております。
その為、大量の水素を吸着させる燃料電池の材料にしたり、色んな応用が検討されています。
二酸化ケイ素(にさんかけいそ、英:Silicon dioxide)は、化学式SiO2で表されるケイ素の酸化物で、地殻を形成する物質の一つとして重要である。組成式はSiO2。シリカ(英: silica)、無水ケイ酸とも呼ばれる。圧力、温度の条件により、石英(英: quartz、水晶)以外にもシリカ鉱物(SiO2)の多様な結晶相(結晶多形)が存在する。 マグマの粘性を左右する物質でもある。
性質
結晶は共有結合結晶であり、ケイ素原子を中心とする正四面体構造が酸素原子を介して無数に連なる構造をしている。
結晶多形
二酸化ケイ素は温度や圧力をかけると結晶構造が変化する(相変態を起こす)。結晶構造などは次の一覧項で説明する。
温度を上昇させた時の相変化
常温常圧下ではα石英が安定だが、二酸化ケイ素は温度変化によって相変化を起こす。
以下に示す温度は常圧での温度であり、溶剤や圧力等により変化する。
α-石英― 573℃→β-石英― 870℃→ β‐トリディマイト― 1470℃→ β‐クリストバライト― 1705℃→ 溶解
しかし、β‐トリディマイトは不純物の無いβ-石英からは転移せず、この形態を経由するには添加物を加える必要がある。そうしない場合、1050℃でβ-石英からβ‐クリストバライトに直接相変化する。
上記の様に説明したが、大抵はβ-石英から1550℃で直接溶融する。これはそれぞれの結晶を構成するSiO4正四面体が、頂点の酸素を共有して結合して3次元的なネットワークを形成しているが、その結合の仕方が各結晶構造で異なるため簡単に相変化が起きない為である。
温度を下げた時の相変化
β-トリディマイトを急速に冷却すると、114℃でα-トリディマイトとなる。
β-クリストバライトを急速に冷却すると、270℃でα-クリストバライトとなる。
圧力による相変化
500 ℃から800 ℃、2~3 GPa以上になるとコーサイトに、1200 ℃10 GPa以上でスティショバイトに転移する。
ともに常温・常圧下では準安定状態で、隕石のクレーターから発見されている。
コーサイトの生成条件は地球の深度70 km以下に相当し深部まで潜った岩石が上昇してきた超高圧変成岩で見つかっている。
マントル遷移層から下部マントル程度の高圧条件下ではスティショバイト構造をとると考えられている。
ザイフェルト石は、既知の多形の中で最も高い圧力40 GPaで発見されている。
実験室以外では、月隕石か火星隕石でのみ見つかっている(地球への隕石では大気による減速で、ほとんど40 GPaに至らない)。
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