外の人の話しも、訊いてみると
解放運動と手を結ぶという興奮のあまり、Facebookの幹部たちは、同じやり方がのちにミャンマーや米国会議事堂で致命的な結果をもたらす偽情報を助長することになるとは、考えもしなかったのだ。こうしたルールは政治の趨勢に関係なく適用することを目的としていた。当時は「Facebook」という社名だったメタのサーヴィスが「アラブの春」を支えたときの社内の高揚感が、ふと頭をよぎる。
Facebookがロシア国内でどのように運営されているかという問題を考えてみよう。メタはプーチンからのファクトチェックに対する異議を拒否し、国としてロシアが支援する広告を禁止した。これに対してロシアは、Facebookへのアクセスを制限している。もしメタがロシアからFacebookを完全撤退させることを決定した場合、それはプーチンに対するアメとなるのか、ムチとなるのか?
記事の一部を抜粋した。
国内ニュースでは、こうした分析はしていない。一方では例の「アノニマス」が、サイバー攻撃をロシアに仕掛けたというニュースもある。
ハッカー集団「アノニマス」ロシア国営放送などハッキング、戦地映像を放送 「最高の偉業」「味方につくと強い」世界中から称賛の声
中日スポーツ 3/8(火) 14:35配信 ハッカー集団「アノニマス」が日本時間7日、ロシアの国営テレビなどをハッキングし、ウクライナの戦争映像を放送したとツイッターで声明を出した。ロシア国営テレビ「Russia24」「Moscow 24」、テレビ局「Channel One」と5つのメディアの名前を併記し、これらを「ハッキングして #Ukraine からの戦争映像を放送した」と発信した。放送を乗っ取った瞬間と見られるテレビ放映の様子も動画として添付。映像の途中には「ウクライナ領土での戦争に声を上げよう」「ロシア人よ、ウクライナでの大量虐殺に声をあげよう」といったロシア語のメッセージも挟んだ。 一部掲載
その政治的意図を知る由もないが、その相手が困る、という使命は果たしているのだろう。しかし現在進行形のこの戦争状態では、一つの情報が、場面と場所と時間がたつと、まったく逆の効果をもたらすこともある。
冒頭引用記事では、「アラブの春」を引用して、そこに使われたネットインフラ「Facebook」だとして言及しているが、今思えば、そればかりではなかったように考えられた。(NHK番組参考)
その比較を国内の反体制組織「連合赤軍」にしてみるのは、いささか躊躇したが、本質的には、同じパターンを示していたように思えた。
記憶に新しい、「米国会議事堂で致命的な結果をもたらす偽情報を助長」など、その典型だが、使い方によって、剣になったり箸になったりする。また、それを予想して、スパイのような既成偽事実を流布して、相手をかく乱するというのは、過去の戦争歴史から多くを学んでいる。
それを探っていくと、敵は、利害を共有しない相手ではなく、みずからの足元、身内から綻びをだしているという一つのセオリーがある。その結果が壁に耳あり、筒抜け情報を抑えるために側近を粛清するという典型を、はからずもプーチンがしていたというニュースもある。
といっても、それらのネタは、既存メディア既成ニュースに拠ったものであり、それを担保する承認は、だれがするかといったら、多分だれもだできないと思う。
なぜなら歴史はすべて過去の出来事であって、そこに未来予想というセクションを挟む余地がない。まさに物理的摂理、占いでも呪術でもない「不可逆」物理現象であり、直進する光の性質、そのものである。
付け加えるなら「エントロピー」、格差(カオス)が無秩序に広がっている状態であり、いま進行しているウクライナ戦争、そのものである。
2022年03月11日記事『WIRED』
テック業界の厳しい措置のアメリカ
ロシアに対するテック業界の厳しい措置に見る“矛盾”と、動かしがたい事実
『WIRED』US版エディター・アット・ラージ(編集主幹)のスティーヴン・レヴィ。BUSINESS 2022.03.09 『WIRED』
米国のテック企業がロシアに対する厳しい姿勢を打ち出している。だが、それは実際のところ、プーチンに対する“アメ”となるのか、それとも“ムチ”となるのか──。
1942年のことだ。ある有名ブランドのタバコの愛煙家たちが、そのパッケージの変化に気づいた。「ラッキー・ストライク」の緑地の箱が白地に変わっていたのだ。
当時のアメリカン・タバコ・カンパニーはパッケージの変更の理由について、戦時中は緑色の顔料をつくるために使われる銅が貴重だからだと説明した。つまり、同社は緑の染料を断念することで、連合軍を支援すべく「犠牲を払った」のである。そして、20世紀半ばの美徳シグナリング(偽善的なアピール)とも呼べるようなかたちで、「ラッキー・ストライクのグリーンは戦争に行った」というキャッチコピーとともに大々的な広告キャンペーンを展開した。
現在のロシアによるウクライナ侵攻は、ときにタバコ業界の独占的な企業たちと比較されることもある現代の産業にとって、同様の機会となっている。それは巨大テック企業だ。数兆ドル規模の巨大企業から新興企業にいたるまで、さまざまなテック企業が戦時の責任を優先してロシアに対するサーヴィス提供を拒否したり、ウクライナを支援したりしていることが繰り返し報道されている。
戦争の舞台をサイバー空間や人心掌握のためのグローバルな戦いにまで広げるとすれば、こうした動きには戦場に直接的な影響を及ぼしているものもある。例えば、Facebook運営元のメタ・プラットフォームズやツイッター、グーグル、マイクロソフトが、ロシアの通信社であるスプートニクや「RT」をブロックしたり規制したりする決定を下したことからは、先制して偽情報を減らしていこうとしていることがわかる。
ほかにも、挑発を受けてもいないのに一方的に他国を残忍に攻撃している国に対する全般的なボイコットや、権利を奪われた人々への援助に該当する措置が展開されている。例えば、アップルはロシアでの販売を停止し、Airbnbは難民に無料で宿泊先を提供している。またスペースXは、衛星インターネット「スターリンク」用のインターネット接続端末をウクライナに提供している。
そして1942年にアメリカン・タバコ・カンパニーがそうだったように、こうした取り組みを始めた企業は世間にそのことを周知しようとしている。
「アラブの春」の先に起きたこと
保守派コメンテーターのタッカー・カールソンと前大統領のドナルド・トランプを除いて、西側諸国のほぼ全体がプーチンによるウクライナ侵攻を非難することで一致している。そして、ほとんどの企業もそれを支援する動きを見せているのは心強いことだ。
しかし、そのような決定のなかには、誰の利益になるのか、どのような前例をつくることになるのかいう点がそれほど明確でないものもある。米国や欧州連合(EU)、あるいはウクライナ自身による国家的要請に応えたものである場合もある。そうしたものは拒むことが難しい。
しかし、メタやツイッター、グーグルなどの企業は、自分たちの行動指針を何年もかけて考え出してきた。そして、こうしたルールは政治の趨勢に関係なく適用することを目的としていた。
当時は「フェイスブック」という社名だったメタのサーヴィスが「アラブの春」を支えたときの社内の高揚感が、ふと頭をよぎる。解放運動と手を結ぶという興奮のあまりフェイスブックの幹部たちは、同じやり方がのちにミャンマーや米国会議事堂で致命的な結果をもたらす偽情報を助長することになるとは、考えもしなかったのだ。
Facebookにとっての災い
米国の大手テック企業たちは影響力が非常に強いので、道徳的に間違いないと思われる行動でさえも災いとなって戻ってくる可能性がある。
例えば、Facebookがロシア国内でどのように運営されているかという問題を考えてみよう。メタはプーチンからのファクトチェックに対する異議を拒否し、国としてロシアが支援する広告を禁止した。これに対してロシアは、Facebookへのアクセスを制限している。もしメタがロシアからFacebookを完全撤退させることを決定した場合、それはプーチンに対するアメとなるのか、ムチとなるのか?
撤退は、急速に広がる企業によるボイコットとザッカーバーグが連帯するということかもしれない。もしくは、キリル文字による「ニュースフィード」(Facebookでの新名称は「フィード」だ)で拡散している偽情報を、完全に遮断する手段を提供することにもなるかもしれない。だが、プーチンの行動に不満をもつロシア人が抗議行動を組織したり、危険に晒された若い兵士の話を共有したり、少なくとも制裁の影響について不満を言ったりする可能性を排除することにもなるだろう。
メタが3月初めに開いた記者会見でわたしが尋ねた質問に答えて、同社の政策責任者であるニック・クレッグは、そうした矛盾に関する同社の見解について説明している。「メタはアプリやサーヴィスを運営している民間企業です。そのアプリやサーヴィスが、大きな苦難と軍事衝突が起きているこのときにロシアやウクライナの何百万人もの人々に図らずも頼りにされています」と、クレッグは語っている。「また同時に、さまざまな管轄区域の各政府から要求が寄せられています。メタにとって、バランスをとるのが非常に難しい状況なのです」
中略
一方では、各銀行がロシアのクレプトクラート(泥棒政治家)のオフショア口座に対して実施しているように、政治家たちの財布を凍結することは素晴らしいアイデアに思える。しかし、この場合に「正しいこと」をするのは、微妙なバランスを保っている暗号通貨アーキテクチャーというジェンガから、重さがかかっているブロックをひとつ引き抜くようなものだろう。暗号資産が道徳と無関係な存在でないなら、それは本当に暗号資産なのだろうか?(いまのところ、一部の暗号資産取引所は踏みとどまっている)
このような問題の多くに正しい答えはないかもしれないが、はっきりしている事実がひとつある。このようなプラットフォームは、国家やグローバルな経済機構と恐ろしいほど密接に絡み合っているということだ。
そして、今回講じる措置は、それがどんなに善意のものであったとしても繰り返されることになり、わたしたち個人に不利益が生じる恐れがある。確立した企業方針に反する国家的な要求に協力することが、厄介な前例となるかもしれないのだ。
一般的に消費者は、正義を装った企業行動に警戒すべきである。「ラッキー・ストライク」がその例だ。戦後、アメリカン・タバコ・カンパニーが誇示していた銅顔料の使用停止は、実は真珠湾攻撃のずっと以前から計画されていたことが判明した。同社の女性顧客が緑色を好まないという調査結果が出ていたのだ。
戦争は、アメリカン・タバコ・カンパニーがいずれにせよ実行しようとしていたことの口実になった。だから、プーチンに対抗して実行に移されたテック企業各社のプレスリリースに目を通すとき、最初の問いは「火はあるかい?」なのである。
(WIRED US/Edit by Daisuke Takimoto)※『WIRED』によるウクライナ侵攻の関連記事はこちら。
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■テック企業 テック企業の由来 言葉の手帳「テック企業」とは、テクノロジーを用いたり、特にIT(情報技術)分野を専門として、開発または運営している企業のことを指します。「Apple(アップル)」「Cisco Systems(シスコシステムズ)」「Microsoft(マイクロソフト)」「Salesforce(セールスフォース)」「Google(グーグル)」「Facebook(フェイスブック)」「LinkedIn(リンクトイン)などは代表的テック企業と言えるでしょう。英語の「technical」は、「技術上の、専門的な」という意味なのですが、この文字が由来になり「テック(tech)」という言葉ができました。「テック」とは「技術」、 テクノロジー、特にIT(情報技術)分野。を指した言葉です。1990年代からインターネットや情報産業が台頭してきた時代から、それを扱う企業が急激に増え、「テック企業」という新しい言葉が馴染みのあるものになりました。
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