見出し画像

マルチアーティスト池田満寿夫の跡

没後25年と書きましたが、今思うと明治のような気もするし、江戸の「浮世絵」版木彫師、のような印象も抱きます。

だいたいがその本人とか名詞とか存在とか、社会は知っているかという質問に、ほどんと「知らない~」と語尾上りの返事を返してくるでしょう。

いやね、画家なんですよ、それで長編小説「エーゲ海に捧ぐ」については、『野性時代』1977年1月号に発表。同年に第77回芥川賞を受賞。芥川賞は三田誠広の『僕って何』との同時受賞である。遠藤周作、中村光夫、吉行淳之介が高く評価する一方で、官能的な内容が物議を醸し、永井龍男は本作への授賞に抗議し、芥川賞選考委員を辞任することとなる。

という当時の記事が、印象的で、それは「限りなく透明に近いブルー」(村上龍)の時も、同じ選考委員の反対意見があって、時代差を感じさせるものでした。

まったく江戸と明治と昭和を重ね合わせたような、逸話ばなしで、「ああむかしはよなかった」よな、なんて優雅な時が流れていたんですね。

そんな池田の話でも、「豆本」作家池田、というのは、知っている人も少ないでしょう。
サンプル画を載せますが、硬貨と比較するとその大きさが判ります。


じえすちーぬ

もともと作家ではなく、゛画家゛でしたが、当時、画家で喰うのも大変でしたから、画家で学んだエッチング技法を駆使して、「豆本」を作ったと、その当時のエッセイで書いてました。

昔の話ですから詳しくは覚えておりませんが、画家仲間に、その作家がいて、勧められたのが最初だったといいます。

「豆本」についてはヨーロッパの古い時代に流行った作品の一つで、熱狂的なマニアもいたということです。(残念なことに日本にその市場はない)

オンナ遍歴も多妻で、私が知っている範囲では4人の相手がいた。確か南米にいた頃の相手が最初で、同じ絵のアーティストでした。
本人も、そのころようやく生活が安定し、余裕が出来たのはいいが、その妻がまったく料理が嫌いで、金があるのに食うものがなかった、と愚痴ってました。
最後の妻がバイオリニストの「佐藤陽子」で、オシドリ夫婦であることは有名な話しです。その「佐藤陽子」さんも2020年7月19日に鬼籍の人となりました。

また受賞作「エーゲ海に捧ぐ」は、本人も監督となって映画をつくり話題になりました。
本人はもともと饒舌タイプで 、喋る、書くことが好きなようで絵画「論文」も一流の論説も出していました。
だから、その長編小説「エーゲ海に捧ぐ」を書くのに、アッという間の数日で書き上げた、というのも頷けます。

■総じて性的なモチーフに覆われた3作ではある。が、そうかといっていわゆるエロ小説なのかというと少し違うようにも思う。時にひたすら饒舌になる台詞を読んでいると、性というモチーフはあくまで飾りで、あとがきで述べられている「言葉、言葉、言葉。日本語で何か書かずにおられなくなったのはたぶんこのためだったのだ」という作者の言が、正直なところなのかもしれないと感じる。 部分引用

と評されるように、書くことには苦にはならないようでした。

数日前に記事にしたバイオリニスト「渡辺茂夫」とは天才ぶりが異なりますが、おそらく国内日本ではなく、アメリカで活動していたら、もっと評価されたアーティストではなかったか、そう思いました。

そうした隠れた逸材の日本人が多数いることが判ります。それでも「種」というものは水と肥しがないと、胎生しなのも事実で、それが一度「ギフテッド」と呼ばれると、たちまち変人扱いする日本社会というのは、「いかがなものか」とついつい思ってしまうので、その理由は何かと「聖徳太子」像を研究する必要があるのです。

2022年12月01日記事

死没25年池田満寿夫

芸術家・池田満寿夫さん急死、早過ぎる63歳/復刻

[2017年3月9日15時3分]日刊スポーツ  1997年3月9日付日刊スポーツ紙面<日刊スポーツ:1997年3月9日付>1997年の芸能面(東京版)は芸術家・池田満寿夫さん死去のニュース。

 国際的な版画家で芥川賞作家、映画監督として多彩な活動で知られる池田満寿夫(いけだ・ますお)さんが8日午前0時29分、急性心不全のため静岡県熱海市内の病院で死去した。

63歳。池田さんは同日午前0時すぎ、長年同居するバイオリニスト佐藤陽子さん(47)の目前で倒れ、意識が戻らぬまま息を引き取った。昨年12月に脳梗塞(こうそく)で入院したが回復に向かい、来年故郷で開かれる長野五輪の成功に尽力していた。一部引用

池田満寿夫 豆本コレクション
1.かぐやひめ : 「竹取物語」による杉山正樹詞 ; 池田満寿夫 [画]信濃毎日新聞社 2002.5 [復刻版] 池田満寿夫全豆本版画集 / 池田満寿夫著所蔵館4館
2.楊貴妃 : 白居易「長恨歌」による池田満寿夫詩・[画]信濃毎日新聞社 2002.5 [復刻版] 池田満寿夫全豆本版画集 / 池田満寿夫著所蔵館4館
3.じえすちーぬ : サド「ジュスチイヌ」による富岡多恵子詩 ; 池田満寿夫 [画]信濃毎日新聞社 2002.5 [復刻版] 池田満寿夫全豆本版画集 / 池田満寿夫著所蔵館4館
4.たまる : 旧約聖書「創世紀」第38章による富岡多恵子詩 ; 池田満寿夫 [画]信濃毎日新聞社 2002.5 [復刻版] 池田満寿夫全豆本版画集 / 池田満寿夫著所蔵館4館
5.まのん : プレヴォー「マノン・レスコー」による池田満寿夫詩・[画]信濃毎日新聞社 2002.5 [復刻版] 池田満寿夫全豆本版画集 / 池田満寿夫著所蔵館4館
6.おふいりあ : シェイクスピア劇「ハムレット」による池田満寿夫詩信濃毎日新聞社 2002.5 [復刻版] 池田満寿夫全豆本版画集 / 池田満寿夫著所蔵館4館7.かるめん : メリメ「カルメン」による池田満寿夫詩・[画]信濃毎日新聞社 2002.5 [復刻版] 池田満寿夫全豆本版画集 / 池田満寿夫著所蔵館4館
8.さろめ : ワイルド「サロメ」による池田満寿夫詩・[画]信濃毎日新聞社 2002.5 [復刻版] 池田満寿夫全豆本版画集 / 池田満寿夫著所蔵館4館
9.屋根裏の散歩者
江戸川乱歩原作 ; 池田満寿夫 [画]信濃毎日新聞社 2002.5 [復刻版] 池田満寿夫全豆本版画集 / 池田満寿夫著所蔵館4館

ART GALLERY MUSE ホームhttps://www.agmuse.co.jp/item/c45/c212/i3415/作品名 No.4 じえすちーぬ(豆本)作家名 池田 満寿夫


池田満寿夫の死因。遺産は熱海市に寄贈され記念館に。
美術館の閉鎖理由とは
2022.10.14 アスネタ 幅広い分野で才能を発揮したマルチアーティストであり、その官能的な作風から「エロスの芸術家」と呼ばれた池田満寿夫(いけだますお)さん。クイズ番組をはじめとするテレビ出演も多かったことから、お茶の間でもおなじみの芸術家でした。
池田満寿夫の死因世界的な版画家として、また画家や陶芸家、芥川賞作家、映画監督として多彩な制作活動を行った池田満寿夫さん。1934年2月23日に満州の奉天で生まれ、戦後は長野県長野市で育ちました。画家を志して東京芸術大学を三度受験するも失敗し、似顔絵描きのアルバイトをしながら版画を学んだそうです。

日本人として初めてニューヨーク近代美術館で個展を開いたのは31歳の時でした。翌年、版画家にとっては最高権威であるヴェネツイア・ビエンナーレ展版画部門で国際大賞を受賞。国際的な芸術家として一躍脚光を浴びます。

ベストセラーになった『エーゲ海に捧ぐ』は42歳の時にホテルに缶詰になって5日間で書き上げた小説。画家による芥川賞受賞作の第一号です。
自ら脚本と初監督を務めた映画『エーゲ海に捧ぐ』は話題を呼び、興行収入は16億円に。主演女優はのちにイタリアの国会議員になった「チッチョリーナ」ことシュターッレル・イロナさんでした。
「イロナ・スターラ」と表記されることもありますが、ハンガリー人は日本人と同じく姓が先にくるそうで、正しくは「シュターッレル・イロナ」なのだそうです。

妻「佐藤陽子」、肝臓がんで死去1982年から熱海市で生活をされていた佐藤陽子さん。2020年の7月19日に熱海市内の病院で、お亡くなりになられました。原因は、肝臓がんとされています。72歳というご年齢でした。
葬儀は近親者のみで行われたそうですが、おそらく亡くなれる瞬間も、近親者の方々に見守られながら他界されたのではないでしょうか。

佐藤陽子の経歴
テレビ番組やCMなどでみせた池田満寿夫さんとのおしどりぶりが懐かしい佐藤陽子さん。バイオリニストとして広く知られていますが、あのマリア・カラスさんの薫陶を受けた声楽家でもあります。
1949年10月14日に福島県福島市で生まれた佐藤陽子さんは3歳からバイオリンをはじめ、来日したレオニード・コーガンさんに才能を見いだされて、ソ連邦文化省の招きでソ連に渡りました。
モスクワ音楽院を首席で卒業後はフランスに留学。1976年に帰国したあとの音楽活動やエッセイの執筆、タレント活動などはおなじみですね。

池田満寿夫さんの芥川賞受賞作『エーゲ海に捧ぐ』を原作とした同名映画にも音楽家として参加していました。エーゲ海のまばゆい空と青い海、エンディングの美しい音楽が心に残る作品です。リアルタイムで観た世代には懐かしい映画ではないでしょうか。音楽を担当したのは筆者が大好きなエンニオ・モリコーネさん。
2020年7月6日の逝去が心から惜しまれます。巨匠のメロディと佐藤陽子さんの官能的なバイオリンにノックアウトされる神曲です。池田満寿夫さんの死去と前後して一時的に演奏活動が停滞していた佐藤陽子さん。

ここ数年は定期的に開催する演奏会やワークショップでの指導に力を注いできました。2019年には、これまでCDで発売されていた名盤がLP用のリマスタリングを施されて新たにリリース。
1974年2月18日に東京文化会館で行われた凱旋帰国公演の音源で、名演奏と話題を呼んだチャイコフスキーを収録しています。終生連れ添った池田満寿夫さんの他界後、再婚したという情報はありませんでした。
佐藤陽子さんが所有するバイオリンはストラディバリウスとグァルネリ・デル・ジェズ。
アントニオ・ストラディバリとバルトロメオ・ジュゼッペ・アントーニオ・グァルネリという二人の製作者が特に有名ですね。
佐藤さんはこの二大名器の弾き比べを試みる演奏会も開いていますが、ご本人はストラドよりグァルネリを愛用することが多いそう。弾き比べを聴いたことのある方の感想では、やはり印象は異なるそうで、グァルネリのほうが音色に深みを感じたとのこと。
ふだん使いこまれているからでしょうか。グァルネリは1742年に製作されたもので、お値段は4億円だったそうです。バイオリニスト羨望の的であるストラディバリウスのお値段は不明でした。どちらも過去の所有者たちの人生を見つめてきたバイオリンということで、佐藤さんの手に渡るまでの歴史を感じますね。 部分引用

構成編集//#つしま昇


ウエブメタ図



画像 切り剣 福田理代【初作品集発売中】


いいなと思ったら応援しよう!