あっ
思わず、と声が漏れる。
慣れない街で辺りを見回すのが好きだ。知らない景色、知らない空気、知らない人。
ふっと視線を上げると、シャボン玉がふわふわと下りてきていた。
ひとつ。……ふたつ。
マンションが立ち並ぶ、高速道路の高架下。信号待ちした歩道。
近くを飛行機が飛んでいて、ぬるりとした空気が肌をなめる。曇り空。
海と、近くの公園の緑が遠くに見える。トラックや観光バス、車たちが通りすぎてく。
シャボン玉はたぶん直径10センチくらいの大きさだったと思う。私のはるか2メートルくらい上をふわりふわり、浮いている。
私のところまで落ちてくる気配は、なかった。
みっつめ、みっけ。
同じひとつのシャボン玉を見続けるより、どこからこのシャボン玉が飛んできているのかが気になってしまう。
同じようなベランダが立ち並んだマンション群を見ていると、目が回りそうになる。
いちばん近かったマンションのベランダを下からひとつひとつ目を凝らして見上げるけれど、どうやら違うみたい。もうひとつ先のマンションなのだろうか。
シャボン玉はたくさんではなく、思い出したら吸うみたいな煙草のように、まばらに飛んできた。ぽつり、ぽつり。
結局、どこから降ってきたシャボン玉かわからなかったけれど、なんだかうれしくて、もっともっと見ていたかったなって思った。
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