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ほう、ほう、ほうたるこい

ほたる、というとセーラームーンで育った私からすると、一番にほたるちゃんが出てきます。いえ、誇張がすぎました。
ほたる。
暗がりを舞い飛ぶと聞くほたるが真っ先に思い浮かびます。とはいえ、残念なことに、光っている状態で飛んでいるのを直接この目で見たことはないのですが。

小学生の頃でしょうか。
引っ越したばかりのいとこの家に初めて泊まりに行ったときのことです。
テレビの下の棚にビデオテープがずらりと並んでいました。
部屋をきょときょとと見回している私を見かねた伯母が、「見たいのあったら見ていいよ~」と言いました。
いくつか知っているタイトルがあったものの、私の興味をひいたのは火垂るの墓でした。

「火垂るの墓がある! 見たことないから見たい!」

夏になると地上波で流れると聞く、映画「火垂るの墓」。
そういえば、私は、見たことがなかったのです。

その頃の私は本屋さんへよくぶらついていたのですが、そこに、ジブリ映画のアニメーションの映像の一部と文章で、少し大きめの本が出ていました。A4サイズよりもずいぶん大きく、分厚かった気がします。
火垂るの墓の映画は見たことがなかったものの、その本で内容を読んでいたので物語の大筋や、戦争のお話を扱っていること。それは知っていました。読んだときに、きっとむねの辺りがざわつくことも。
当時の私は学校の教科書で習ったちいちゃんのかげおくりやひとつの花、そういった戦争に関するお話から学校の図書室にあるかわいそうなぞう、ひろしまのピカといったものをいくつか読んでいたので、火垂るの墓へ行き着くのは不思議でもなんでもなかったのです。

ところが。

「えっ……泣いちゃうからダメ」

そう、伯母に返されました。今でも覚えています。
火垂るの墓はかわいそうなお話で、それを姪に見せると泣いてしまうから、ではなく。
伯母が見て泣いてしまうからダメなのだ、という意味で返されたことを。

結局、ビデオは見ずに、私はいとこの漫画を読みふけった気がします。
怪盗アマリリス。わくわくしながら、最終巻まで読み切りました。
そして、そのお泊まりが終わって帰るとき、いとこからカードキャプターさくらの漫画を譲ってもらったことも書き添えておこうと思います。


もうあれから何十年と経ちますが、私はつまるところ火垂るの墓を映像で見たことはありません。
今年こそ、地上波でやるのであれば見ようと思うのですが、「見たい!」と強く思っていたあの頃ほどの熱意はなく。
半ば義務的に見たいと思っているのではないかと、そんな気がしてしまっています。



余談ではありますが。
上を書くにあたって、少し検索をしてみたら。
怪盗アマリリス、確か金色の帯のような色があるので朝日ソノラマ版で読んでいたと思うのですが、まさか絶版になっていたとは……えぇ……ショックです。
読むのだとしたら、中古で探すしかないようですね。

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にわたつみ
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