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安全にフォークリフトを使用するために

はじめに

フォークリフトは現代の物流を支える非常に重要で、便利な物です。フォークリフトがあることで、大量の重量物の荷役・運搬をスピーディーに、かつそれなりの小スペースで行うことができます。

このように便利なフォークリフトですが、安全に正しく使わなければ様々な危険が潜んでいるものです。実際に、2022年8月にはフォークリフトを遊具の代わりにして遊んでいた親子のうち、お子さんが亡くなるという痛ましい事故が起こっています。

フォークリフトは荷役・運搬の道具です。事故を防ぐためにの大前提は、フォークリフトを本来の用途外の目的では、絶対に使用してはいけません。

またフォークリフトを正しく使い安全な物流現場を作ることが、人不足に悩む物流現場では定着率を安定させるためにも必要なことです。フォークリフトが正しく使われていない現場では、危険や不安感を覚えてしまい、そこで働きたいとは思ってもらえません。

今日はどういった事故が実際に起こっているのか、どうすればそういった事故が防げるかを考えていきたいと思います。

フォークリフトが関係する労働災害死亡事故

2021年の1年間でフォークリフトにかかわる労働災害は2,028件発生しています。そのうち約1パーセントにあたる21件が死亡災害です。

労働災害2,028件のうち、ワースト3の原因は以下のようになっています。
ワースト1 はさまれ・巻き込まれ(701件)
ワースト2 激突され(525件)
ワースト3 墜落・転倒(271件)

死亡災害21件も同じように見てみましょう。
ワースト1  墜落・転倒(6件)
ワースト2 はさまれ・巻き込まれ(4件)
ワースト2 激突され(4件)

以上の2つの切り口から見ると、事故は主にはさまれ・巻き込まれ、激突され、墜落・転倒で起こっている。墜落・転倒は死亡災害につながることが他の事由よりも高いということが分かります。

(参考) 事故事例

厚生労働省のホームページで実際に起こった事故の情報を確認することができます。安全な職場環境を作るためにも、過去に起こった事故を参考にすることは大変に有益です。

事故を防ぐために フォークリフトの整備

安全に使えるフォークリフトを提供することは経営者の義務です。故障したところがあるようなフォークリフトを誤魔かしながら使用していてはいつか事故に繋がります。メンテナンス費用や、買換え費用は絶対に確保する必要があります。

またその使用者は、安全に使用することが出来る状態にあるかを使用前に確認する必要しなければなりません。この点検は自分の命だけでなく、周囲で働く人の命を守るためにも必要です。

使用前の点検については、現状は紙でチェックリストの記入をしている現場が多数だと思います。紙はコストは安いですし現場でも容易に記入ができますが、書いた後の活用には相当の労力がかかりますし、タイムラグがどうしても発生してしまいます。
最近では現場の帳票を簡単にシステム化できるサービスがあります。こういったサービスを活用することで、管理者がリアルタイムでチェックリストの内容を確認することができます。これにより、チェックをしていない人を早期に見つけられたり、何か気になることがあるとチェックリストに書いてあった場合もすぐに対応をとることが出来ます。

またフォークリフトに簡単な機器を追加することで、より安全に運用ができるソリューションもいくつかあります。簡単なものでは、フォークリフトの接近を音や光で知らせるものです。進行方向や旋回エリアを強力な光で照らすことで周囲の人に危険を知らせ、フォークリフトに近づきすぎないよう注意喚起が出来ます。

少し機能は複雑になりますが、カメラやレーザーを活用する方法もあります。フォークリフトの進行方向や周囲に人や障害物をカメラなどを使い認識した場合に、自動的に警報音を鳴らしたり、スピードを落としたり、停車させるものです。ただしこういった機能も完ぺきではないため、安全運転をフォークリフトドライバーには常に意識してもらう必要は残ります。人も完ぺきではないため、システムと人が協働すれば、安全度は間違いなく高まります。

事故を防ぐために フォークリフトエリアの工程整備

フォークリフトドライバーの安全運転意識向上というのは、よく管理者が安全対策をするうえで一番最初に思いつくことです。しかし実際の現場で本当に安全運転をできる状況になっているかを確認しない中で、ドライバーに安全運転をしろというのは横暴です。

例えば、視差確認をしなさいというルールになっているが、物が整理されずにおかれていて死角ばかり生まれているような現場では、作業者は視差確認をしても安全確認がとれません。そのため最初はゆっくり、とても慎重に走行しますが、とても慎重に走行するため視差確認をする余裕もありません。最初は慎重に運転しているので問題ありませんが、ある時に人は最初の恐怖を乗り越えてしまいます。そうなると視差確認をしないで走行し始めてしまいます。この瞬間だけを切りとってしまえば、作業者のルール違反となりますが、本当の問題は別の所にあります(この場合は死角が多すぎた)。作業者に寄り添い、なぜルールを違反した走行になっているか、その真因の追及無くして安全運転だけを強制しようとしても実現はできないのです。

同じようなことをは、フォークリフトが走行するエリア周辺で歩行して働く人たちにも言えます。フォークリフトが走行するエリアに侵入してはいけないルールを設定していても、本当にそれが守ることが出来る環境が整っているのか、あらためて確認が必要です。フォークリフトが走行するエリアは明確にマーキングされていて、誰でも簡単にその見分けがつく状況になっているのは最低限の対策です。
それでもフォークリフトエリアに侵入する作業者がいる場合は、なぜ侵入しているのか、すべてのパターンを書き出しましょう。そしてその洗い出した作業一つずつを検証して、適切な対策をしていきましょう。対策の方法としては①そもそもその作業をやめられないか?②その作業を別の場所でやれないか?③その作業をリフトに乗ったままでできないか?④その作業をするエリアだけを特別な柵などで覆えないか?の4つがあります。①のほうが効果が大きくコストが低い、④に行くほど効果が低くコストが高い対策方法なのでできるだけ①か②のどちらかの対策が望ましいです。

終わりに

フォークリフト無くして日々のオペレーションを行うことは不可能です。一方で大変な危険をはらむことを忘れてはいけません。またその安全対策は現場作業者ではなく管理者・経営者の問題意識無くしては実施できません。

現場で作業者が安全ルールを破っている時は、何か理由があるはずです。走行スピードオーバー時は、何か問題が起こってないでしょうか?(仕事量が多すぎて処理できない、トラックが遅れて到着したため挽回を図っている)。見えている事象の裏にある本当の問題を解決できるのは、管理者・経営者の働きかけ無くして解決できません。

またフォークリフトの用途外使用も絶対に避けるべきですが、現場でその状況を発見した時は、必要な設備や環境を管理者・経営者が揃えられてないという反省をしないといけません。

働く環境もとても大変です。暑すぎる・寒すぎる現場ではフォークリフトドライバーが集中力を保ち何時間もフォークリフトの操作をすることは困難です。働く環境にあわせて適切な休憩時間を確保することも必要です。まだまだ非常に高価でスピードも遅いですが、暑すぎる寒すぎる現場にはAGFの導入を検討する価値もあります。

最後になりますが、便利なフォークリフトですが、本当にその作業はフォークリフトでしかやれないか?という観点で改めて考えることも大切です。フォークリフト以外でも運ぶことが出来るようになれば、安全性は高まりますし、フォークリフト専用エリアもなくすことができるのでスペースも生まれます。メリデメを比較して、フォークリフトレスのオペレーションを検討してみてはいかがでしょうか?

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