鈴を持つ者たちの音色 第五十話”イマジネーション②”
相手がどのぐらいの速さで動き、どのぐらいの剣捌きを持ち、どのぐらいの技を持っているか?
何も知らないままで2人はぶつかる。
そしてぶつかるうちに気づく。
「相手は強い」
「俺は強い」
「俺は弱い」
「俺はまだまだだ」
「この相手と戦えて俺は幸せだ」
など。だ。
そして”今”
闘いはいままでの常識をくつがえす。
考える暇も隙も無い。動けるだけ動け。速く。素速く。息をつく間も惜しい。力は一定か?一打、一撃にしっかり”全力”が乗っているか?
”来世”の大地は重力が弱まっている気がする。
身体は軽く軽快で素早く動くのを感じた。
どんなに速く動いても剣士Gは追いついてくる。
そうか動きが読まれているのか。
ただ、がむしゃらに動いていた。そうだ。自分で自分を操っている感覚はダメだ。
もっと空間を。
弾く空気を意識せよ。。
心に、速さに、余裕が出てきた。
そうこの感じ。いいぞ。
安定してきたら、次は強弱だ。相手との絡みの波を把握し”強”で打つ。
”弱”は防御だ。
どうだ。よし。押してきた。いや。まだだ。押した引いたの意識を持つな。
感覚を”無”に。”無”から出る動きを‥
剣士GE(ゲン)と剣士Gの撃ち合いは続く。
剣士Gは不思議だった。
何だろう。闘っているのに心地よい。
達成感?違う。撃ち出す拳が奏でている。
避けるつもりがなくても避けられる。
当たるはずが当たらないのが分かっている。
誰だこの少年は‥
息がきれない。身体が、技が、昂揚し身体が火照る。回転数がふりきれるほどアクセルを回しているのに上限がない感じ。
不思議な感じをお互い拭いきれず一度静止する。
この何十分間息は吸ったのはどのタイミングだったろう?
「ズハッ!ハッ!ハァー。」
何分間分を、一度に息を吐き吸い上げる。
身体全身で酸素を吸収する。
落ち着いた‥
上空から舞い降りてくる鳥の羽根が静止した?
かと思う程に一瞬の動きが素早く始動した。
お互いはじめて剣を抜き合い太刀を振るった。お互いの剣は弾かない。磁石のSとSのように触れるのは無駄だというようにお互いの身体に吸い付くように一刀を繰り出す。
空気が割れる。ちぎれる。
空気が斬れる音を聞いたことがあるだろうか?
今まさにこの場所で空気の斬れる音を皆知った。
お互い技を出さず、ここまで肉弾戦と一刀斬り合いだけが続いていた。
剣士G:「ああ。久しぶりに楽しいよ。こんな気持ちは、はじめてだ。君もだろう?
しかし、ここは闘技場。決闘には幕切れかある。そろそろその時がきたようだ。全力でゆくよ。君も全力でこい。」
「ジリ」と足のアクセル音がした気がした。
その時、一光が鳴いた。
お互いの空間斬りがぶつかり一瞬でふたりの間合いがゼロになる。
皆の目から入る”画”は一刀が振り終えた静止画だった。
「ガクリ」と膝を落とす。
剣士Gの肩からは斬られた服がはだけてふたりの残風圧で揺れて血が滴るのが見えた。
倒れたのはGE(ゲン)だ。腹部を斬られている。
どんなに大技を持っていても、
勝つためにどんな勝ち方があったとしても、
ふたりは”それ”をやらず、剣刀にこだわった。
ガンマンの早撃ちのように一刀だけに集中し、その全精力をぶつける。
”天晴れ。”
とは、こんな時に使う言葉だった。
剣士GはGE(ゲン)を抱き抱えて医務室へ連れて行った。命に別状はない。
、、、、、医務室で話すふたり
(闘技場では剣士Gの一回戦勝ちのアナウンスが流れている。)
GE(ゲン):「あのさぁ‥戦っているとき‥何考える?」
剣士G:「えっ。それって。真面目に答えるやつ?」
GE(ゲン):「もちろんさ。」
剣士G:「そーだなぁー。
いつか見た荒々しい波。
そこに立っているのが、やっとなぐらい強く吹く風。
ひどく青い空。
メラメラと燃える熱い太陽。
そんなを”同調”する。って感じかなぁ。
あれっ?俺戦いの最中なのに何も相手のこと考えてないや。笑」
GE(ゲン):「そっかぁ。そうだよね。闘いのコントロールはその胸の内にある。僕はまだ目の前のものをちゃんと見てないんだと思います。
勉強になりました。」
同じ剣士でGの付く者は相性がいい。
ふたりは、今ここでそう決めた。
マイクパフォーマー:「疾風の如く第二戦目ー。対戦は‥
武道家BOO(武)VS”士魂の砦”ゴリンジ!
それではハジメッ!!」
ゴリンジの武器は180cmもある薙刀(なぎなた)である。その物干しぐらいもある長刀を楽々と振り上げる。
BOO(武)はそれを見切り避けていく。タイミングを合わせカウンターを狙っているようだ。
ゴリンジの子狡い所は身体を殆ど厚い鎧で覆っているところだ。隙間一つない。よくこれであんなにも力強く薙刀を振れるものだ。力には自信があるのだろう。
何回目かの攻撃を交わしBOO(武)はゴリンジの懐へ潜り込んだ。アッパーカットを喰らわす。
ゴリンジはグラリと揺らいだが効いてなさそうだ。すぐに体勢を整える。
BOO(武):「思ったより鎧が厚いようね。(通常の攻撃力だと効かない。こういう相手と戦う時は‥っとっ。”アレ”でいくか)」
ゴリンジは闇雲に薙刀を振り回すのをやめた。体勢を変える。
BOO(武):「(それにしても‥どこから見ても鎧の塊だなぁ。兜も被っているが視界も悪そう。私みたいに何も持たず、着るのは薄い道着。それが一番動きやすいのに)」
ゴリンジは間合いを詰める。
BOO(武):「(あの体勢は、技を”突き”に転換したな。とすぐに気付く)」
BOO(武)はさり気なく右腕の前腕部から拳までをこの間合いの最中にどんどん大きくさせる。
BOO(武):「(1倍‥2倍‥さん、‥)」
「ドンッ、(ゴリンジが踏み出す)」
ゴリンジが予想通り”突いて”きた。
180㎝もの長い薙刀が一瞬で間合いを詰めてくる。それも矛先は回転して迫る。傘を広げたように避けにくい。
BOO(武)は”突き”をよんでいた為、ひと先躱し(かわし)地を這うように踊動し竹のように真っ直ぐ飛び上がった。
「ズゴン!」
ひと回りもふた回りも巨大化したBOO(武)の右腕がゴリンジのボディを捕らえた。
ゴリンジは宙に浮いた。胴回りの防具が砕け落ちる。
BOO(武):「3倍!」
ゴリンジは受け身を取れずそのまま背中から地面に落ちる。「グハァッ」
今度は効いたようだ。
BOO(武):「もう1発当てれたけどね。もう少し楽しみたいから止めといた。」
ゴリンジ:「‥身体を部分的に巨大化できるのか」
ME(男):「いつから、あんな技を。」
WA(輪):「うーむ‥。」
大男ガイム:「あれは?まさか‥」
大男ガイムが客席を離れ剣士Gのいるフィールド側へ行く。
大男ガイム:「おいっ。G(ジー)!(こっそりとGを呼ぶが、声が大きい)」
剣士G:「おっ、ガイム。何しにきた?」
大男ガイム:「あのさ。今戦ってるちっこいの。ありゃ誰だ?」
剣士G:「誰だ?って?さっきアナウンスしてたろっ。BOO(武)ーとか言ってた。」
大男ガイム:「いや。そういう意味じゃなくて、どこの砦の”者”だ?」
剣士G:「はじめて砦にきた者だとさ。ここへ出入りする許可が必要で戦ってる。」
大男ガイム:「‥なんかなぁ‥他人の様な気がしなくてなぁ‥」
剣士G:「何いってんだお前。どうかしたか?好みな子なら、そうだ。って分かりやすく言えよー。」
大男ガイム:「いや。ほんとにさ。見ろっ、あの左腕の”腕輪”。俺と同じだ。」
剣士G:「‥ほんとだ。」
大男ガイム:「それに、さっきの技。見た?部分的に巨大化できる。」
剣士G:「ああ。あれな。お前もできそうだよな?」
大男ガイム:「ああ。できる。というか‥俺はやらない。」
剣士G:「なんでだよ。いい技じゃないか?」
大男ガイム:「あれは、本当はやっちゃいけない技だ。何故か?”アレ”を繰り返すと歯止めが効かなくなる。”部分的”じゃ、すまなくなるからだ。」
剣士G:「お前‥(!)。。あの子も‥”大獣化”する。というのか?!」
大男ガイム:「そうだ。”大獣化”すると、このコロッセウムは壊され、砦もどうなるか分からないぞ。手がつけられなくなる。」
剣士G:「そうだな。昔のお前がそうだった。けれども、その腕輪をつけている限り”大獣化”はしないんじゃないの?」
大男ガイム:「そうだ‥と、言いたい所だが、今あの子を見て思った。あの子は自分で、その制御している力を上回ろうとしている。その証拠に、実際自分の身体の中の”力”をああして具現化している。アレはどう見ても”大獣”の”はみ出し”だ。」
剣士G:「3パーセント‥とか、言ってたな。」
大男ガイム:「ああ。アレを10パーセントまで、やってみろ。”はみ出し”が度を越して尻尾まで出てきてしまうぞ。」
剣士G:「‥でも、もし、”アレ”を自分で10パーセントまで制御できるとしたら‥」
大男ガイム:「その時は俺もお手上げさ。俺はあの子に勝てない。ってなる。」
剣士G:「お前より‥強い‥。おもしろいなぁー。それ。」
大男ガイム:「興奮してる場合かって、の。」
ゴリンジは目の色を変えた。
それはコロッセウムの剣闘会ではおさまらない感情だ。
薙刀の手持ちの部分の柄をカチッと、外す。
もうひとつの刃が出てきた。
持ち手を中央部に変える。
シュンシュンとそれをプロペラのように回し風を起こす。
ゴリンジ:「これならどうだぁ」
ゴリンジがピョンとひとつ跳ねたと思ったらプロペラの回転で飛行した。
そのままの勢いを増し、一陣の風になって大刃がBOO(武)を襲う。
一瞬だった。
気がつくとゴリンジは空中に砕けた鎧と兜と一瞬に花火のように弾け飛んで散り散りに落ちてゆくのが見えた。
鎧という甲羅に守られた亀は、もはや裸だ。
BOO(武)の”具現化”は下半身を巨大化させていた。
下半身の巨大化でゴリンジより素早く動けたのだ。
ゴリンジの素顔が露出する。
BOO(武):「亀の甲羅はもう着れないわね。今度からは裸で勝負なさい!相手になってやるわ。」
ゴリンジは赤くなった。
ゴリンジ:「参りました」
マイクパフォーマー:「第二戦目の勝者ー。BOO(武)ー。ウィナー」
おお!と闘技場のボルテージはヒートアップ。
満員のギャラリーは3砦の垣根無く、強い者を讃える。
血気盛んな剣士の集まりなのだ。
血を飛ばし合って仲間として分かち合える。
ここはそんな場所だ。
マイクパフォーマー:「ノリに乗ってきた第三戦目の登場ー。
”大願の砦”の客席は静まり返り殆どが手を合わせ勝利の祈りでジェシカを迎えた。
剣士GO(豪)VS”大願の砦”ジェシカーーァ!
それではーー。”はじめ!”」
ヨーイ。ドーン
GO(豪)が飛び出る。最初から剣を抜く。
ジェシカ:「(その剣は‥)」
GO(豪):「”斬斜っ!(相手の左肩から右腕まで斜めに一刀する)」
捕らえた!と思ったが、感触はない。
残像だった。
GO(豪)が一刀したのと同じタイミングで本体は舞台後方から弓でGO(豪)に矢を放っていた。
GO(豪)が剣で弓矢を真っ二つにする。
矢には限りがある。放たれる度に弓矢を再生不能にするつもりだ。
弓矢を斬り上げたタイミングで今度は逆サイドから弓矢が飛んでくる。同じく真っ二つにする。
また逆サイドから弓矢が飛んでくる。
何回か、そのやり取りが続いた。
GO(豪):「(単調さには裏がある)」
そう思った矢先‥頭上を見上げる。頭上を埋め尽くした弓矢の雨が降ってくる。
ジェシカ:「これが私の得意技”おとしいれ”よ。罠にかかりやがれ!」
GO(豪):「やれやれお嬢ちゃん。家におかえんなさい」
GO(豪)は早速”同調”を使った。
頭上に無数にある”弓矢”は瞬時に全ての矢をジェシカの方向に向きを変えた。
GO(豪):「発射」
飛んでゆく。
ジェシカは弓矢が当たりそうになっては残像を繰り返しようやく全てを交わし切った。が、
一本だけジェシカのお気に入りのワンピースの裾に矢が刺さっているのに気づいた。
ジェシカはお洒落さん。お気に入りのワンピースに穴を開けられて憤慨する。
GO(豪):「そんなに怒らなくても。それに元々弓矢を放ったのはそっちじゃないか。」
ジェシカ:「さっきから見てりゃ、お前たちは一体何なんだ?ここ剣闘会レベルの戦い方じゃ、お前たちには通用しないみたいだな。まぁいい。ワンピースも穴開けられたし、”アイツラ”モードで戦わせてもらうわ。」
GO(豪):「”アイツラ”?君たちも”アイツラ”と戦闘しているの?」
ジェシカ:「この3砦の力を合わせて”グッド”率いる”奏組(かなでぐみ)”に入組し、地球を滅ぼそうとしている”アイツラ”との決戦に備えている。お前も”アイツラ”を知っているのか?」
GO(豪):「ああ。知ってるの何も。”アイツラ”の為にここまで剣を極めてきた。僕らの願いも”アイツラ”を倒すこと。」
ジェシカ:「あらー。奇遇ね。そして心強い。私たち”奏組”の規模がどんどん大きくなっていくわ。」
GO(豪):「まだ入組するとは言ってない。グッド?好かん名前だ。」
ジェシカ:「まあー。その前に、このワンピースの恨みの代償を払ってもらいましょーう。」
ジェシカが後ろに大きく跳ねる。
また懲りずに弓を引いている。
GO(豪):「(何か?先ほどと違う感覚‥)」
グワングワン、グワングワン‥フツフツ‥
GO(豪):「(何か嫌な音がする)」
ジェシカの引く弓矢が青白い光を帯びていくが分かった。その青はどんどん強くなり弓矢は青く光る弓矢になった。
静電気だ。
ジェシカは空気中にある溜まった静電気を物質内から弓を引くことで集める事ができた。
ジェシカは元々静電気を体内に溜めやすい体質「帯電体質」だった。
さっきの意味のない逆サイドは常に移動し、
空気中から静電気を集めそれを帯電体質の自分の身体に集め、弓を使って弓矢へと移動させ一本の矢で放出する行為だった。
ジンダラボッチもそうだったが、”士魂の砦”の剣士は帯電質の身体を持つ者が多い。
ジェシカはその帯電した電気を弓を使って弓矢に集めて放出できるのだ。
GO(豪):「弓矢を変えた?(ジェシカは弓矢を金属質のものに変えている
金属質のものなら電気を集めやすいからだろう。
最初の攻撃の仕方を見て思う。
そのまま一本の矢が真っ直ぐ飛んでくるだけとは思えない。)」
ジェシカの矢は放たれた。
弓で引くのは始動でしかない。GO(豪)には見えた。大気中に真っ直ぐマイナス電子のレールが敷かれているのを。
ジェシカはマイナス電子だけを集約し、レールを敷く事で弓矢を加速させようとしたのだ。
GO(豪):「やばい。これは電気の速度だ。そのまま真っ直ぐで当たりだ!避けないと!!」
「ギャギャギン!」
コロッセウムは青白い雷光で眩しくふたりの姿を見えなくした。煙が立ち上がる‥
数秒か過ぎ、煙がはれ
周囲に焦げ臭い匂いがたちこめる。
ジェシカがうずくまっているのが見えた。
髪の毛が逆立っている。
ワンピースの穴が黒く焦げ広がっている。
GO(豪):「危なかったよ。あれは避けられない。レールを敷いたのが間違いだったね。跳ね返されたらそのまま自分に戻ってくるのを考えなかったね。」
ジェシカ:「(プスプス‥)避けも跳ね返しもされないはずだった‥お前の剣。どこからそんな素材を‥」
GO(豪):「ああ。これね。親父が特別な”鉱石”でつくったといっていた。だから跳ね返しができたと思う。」
ジェシカ:「その”鉱石”とは‥おそらく”アイツラ”の惑星の”鉱石”だ。普通の剣とは違う。”アイツラ”を倒すべき為に作られた”剣”だ‥。ちくしょう、こんなに私をボロボロにして。覚えてろ。今回はお前に負けたんじゃない。お前の持つ”剣”に負けたんだ。次もあるからなぁー。」
こうしてGO(豪)はジェシカに勝利した。。
マイクパフォーマー:「第三戦の勝者ぁー。”剣士GO(豪)ーー!(わぁー。ドンドンドン太鼓が鳴る)
ここで30分の休憩をとります。
その後にいよいよ本日の最終戦!
3人の集団同時バトルとなりまーす!」
罠に嵌めようとする悪い子にはお仕置きよ。