メダカ
小学生以来だ。
今日からメダカを飼っている。
なんだか癒される。
メダカの泳いでいる姿を見ているだけで。
2年前に彼はドライバーとして会社に入社した。
綺麗好きで専用となる担当ダンプ車は座席を取り除いて掃除するほどだった。
ダンプ車の仕事終わりの手仕舞いは必ずダンプ車周りを二周して確認後かえってくる。
なぜ二周なのかは分からない。
彼の仕事はじめ、仕事終わりの点呼をとるのが僕の役目だ。
彼は給料を奥さんへ全て渡すと言う。
奥さんは無職だ。
子供はいなく、彼と奥さんは2人暮らし。その家計を彼は背負っている。
1ヶ月の給料を彼は全て奥さんに渡すので彼はいつも一文無しだった。
唯一の趣味は「メダカ」。
卵から育てて孵化させ増やし際限なく増えたメダカの水槽を眺めたり水を入れ替えて綺麗にするのが彼の至福の時間となる。
そんな楽しみを彼は機嫌が良い時に話す。そしてそんなの話に相槌をしていたら何日か後に彼はメダカを僕にくれた。
まだ生後2ヶ月ぐらいの小さな幼魚。
急に持ってきたので僕は唖然とした。
お酒焼酎用の大五郎の2リットルの容器に彼は入れて持ってきてくれた。
持ってきたものを「要らない」とは僕は言えなかった。そして僕の部屋には今メダカがいる。
とりあえず何を買えばいいのか。
まず、餌だよな。
あとは水槽、底に敷く砂、掃除用のスポンジと網。そんなものかな。
しばらくメダカの泳ぐ姿を見ていた。
うむ、まんざらでもない。
なかなか癒されるじゃないか。
2人の子供にメダカを見せて自慢した。
中学生の長男は「いらないだろ。それ。」と言い、小学生の娘は「かわいいー」と2人真逆のリアクション。。そして妻、妻には流石に言えなかった。答えは分かっている。餌代の心配や水槽の掃除でシンクを汚されたくないのだ。妻にはこっそり内緒で育てよう。
凝り性の僕はこうなると色々揃えたくなる。
水槽に灯りを灯らせて夜でも綺麗な水槽を照らしたい。綺麗な水草にも癒されたい。などきりがない。
こうして飼ってみると大変なのは水の調達だった。
メダカは水道水はNG。
水の取り替えは雨水か綺麗な河の水だ。
雨水というが、なかなか量の確保は難しかった。
バケツを外に置いただけだと溜まってもせいぜい300ml。そうとうな豪雨が降らないとそれ以上は確保出来そうにもなかった。結局家から離れた河の水を汲みに行かなくてはならない。
それもできるだけ綺麗な水を。
餌は1日に一回。出来るだけ明るいうちに与える。暗い中で餌やると食いつきが良くないらしい。おそらくメダカは目で見て餌を食べる。それには明るさが必要なのかもしれない。
水槽の水の取り替えは4日に一回の頻度がベスト。それ以上水を取り替えないと水槽が臭くって不愉快だ。
人から思いがけずもらったメダカ。
果たして来年まで生命を維持できるかどうかだ。
冬季の水汲みが課題である。
小さいメダカが泳ぐ姿はなぜか癒されずっと見ていられる。