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十一日坊主回避・くろりさん 独占インタビュー!(前編)
十一日坊主回避くろりです。なんか十一日坊主回避くろりって「十一日坊主回避ってバンドのメンバーくろり」みたいな感じがしますね。このバンド絶対に尖ってますね。おそらくメンバーはリーダーで作詞・作曲兼キーボードのくろり、ボーカル兼ギターとたまに作詞のヒロシマ、ドラムのKeN、ギターのふぁいぽん、ベースの勘解由小路広路の五人。前衛的かつお洒落なサウンドに、独特でメッセージ性の強い歌詞を乗せるという音楽性が人気の理由でしょう。バンド名の由来はたしか結成時のエピソードですね。なんでもそのエピソードというのがこのバンドの命運に大きくかかわっているのだとか。」
くろり「ええ、その通りです。もともと僕とヒロシマ、KeNは同じ高校で軽音をやっていました。で、『卒業しても一緒にやろう!』という僕の提案で三人とも同じ大学を受けたんですよ。しかし、なんとです、言い出しっぺの僕が落ちてしまったんですよ(笑)」
田中「それはなかなかの大事件ですねえ。」
くろり「はい…忘れもしません、2031年2月11日のことでした。僕たち3人は一緒に大学へ合否を確認しに行きました。僕は自信があったので、不安そうにしているヒロシマやKeNを励ましながら待機していました。」
田中「結末を知っていると、フラグのようにも思えてしまいますね。」
くろり「本当です。実はそれについてヒロシマとKeNに今だにいじられたりしています。」
田中「仲がよろしいんですね。素敵です。」
くろり「ええ、まあぼちぼち。それでいよいよ発表の時を迎えたのですが、まぁそのそばから歓声や落胆の声が上がり始めて、俺らもぼちぼち見に行くかあって。受験番号が離れていたんで、各自確認しにいきました。その時はちょっとそわそわしていましたね。『これでサヨナラになったらどうしよう』と。」
田中「ちょっとは心配したんですね。」
くろり「もっとも、ヒロシマかKeNが落ちるパターンの『サヨナラ』しか考えていませんでしたが。」
田中「なんと、さらにフラグ建てちゃいますか(笑)」
くろり「建てちゃいます。そして、二人を見送って、僕はゆっくりと掲示板に向かって歩いていきました。交互に沸き起こる喜と哀の声に『残酷な世界だな…』と達観しながら。」
田中「もう耐えれませんって!もはやイタいじゃないですか!(笑)」
くろり「もう自分でもさすがに擁護できないです、これは。で、掲示板にたどりついて、相変わらず二人のことをぼんやり心配しながら何気なく目をやったんです。そしたらなんと、ないんですよ自分の番号が!(笑)」
田中「傑作ですね!もう、なんなんでしょう、心境としてはどうなってしまうんですか、この状況だと」
くろり「あの瞬間は、本当に最悪でした。ただ恥ずかしさというよりはもう俺たち一緒にできないのかっていう悲しみと、それの何倍かの二人への申し訳なさが胸を占めていました。」
田中「なるほど、この状況でも自分のメンツより仲間だったのですね。愛が深い…」
くろり「まあ、いい話っぽい雰囲気で黒歴史が帳消しになりそうなので訂正はしませんが」
田中「いやまたまた、素直になってください、仲が良いって有名なバンドじゃないですか」
くろり「はい、メンバーみんな大好きです。」
田中「いただきました……ってすみません、続きをお願いします」
くろり「はい、もうとにかく僕は悲嘆に暮れながら、トボトボとさっきいた場所へ戻りました。そこには二人がいました。その時僕がどんな様子だったか、僕を見た二人がどんな反応をしたのかはもう自分では覚えていません。二人曰く、『とにかくお前はヤバかったし、俺たちはぎょっとした』だそうです。僕は二人の前に立って、何を言ったらいいもかわかんなくて。しばらく黙りこくった後、土下座しました。」
田中「ど、土下座ですか!?周りに人がいる中で!?」
くろり「はい…。僕、感情で胸がいっぱいになると暴走するっていう悪い癖を持っていて、衝動的に。『すまない』って、気づいたら手と頭を地面につけてました。号泣しながら」
田中「なるほど、なかなかパワフルというか、エキセントリックというか。こういう一面がこのバンドの世界観をつくりだしているのでしょうか。」
くろり「そうかもしれないですね。」
田中「あ、すみません、少し話がそれてしまいました。それで、その後は?」
くろり「その後の話はまた後日二人から聞いたものになってしまうのですが、とにかく周りの目を集めてしまうんで二人は慌てて僕を地面から剥がして、逃げるように引きずって帰ったようです(笑)」
田中「なるほど。そういう結末だったのですね。ところでこれはバンド名の由来に関するエピソードでしたね。実は初めのほうに直感したのですが、もしやその事件の起こった2月11日の日付がバンド名の由来で?」
くろり「いや違いますけど。」
田中「あ、すみません…」
くろり「いやあのさあ、おかしいよねえ。常識的に考えてそんなわけねえだろ、なあ!」
くろりは突然声を荒らげた。スタジオの時が止まった。
田中「え、、でもそんな」
くろり「うるせえ、黙れよ!」
くろりは目の前の椅子を蹴り飛ばした。時はさらに硬直した。現場の人員は全員顔面蒼白になって、田中は先ほどまで緩やかに上がっていた広角を戻せないままひきつってしまって、ぴく、ぴくとさせている。