背面バックツーザドアー
高校生時代山岳部で北アルプス縦走してる時の事です
何日も山で過ごせばソリャ出るもんも出る
早朝にも関わらずこんな標高2千メートル近くの高原ですら朝のトイレラッシュはある
当時の山の簡易トイレは昨今の完成度高いものと違い、ただロッカーを大きくしたようなスチール製でした
もちろん水洗ですらない
もう限界近い頃にようやく巡ってきた私の番に喜びと安堵と共にその空間に蹲踞し見下げるとそこにはミニ槍ヶ岳があった
一瞬怯んだもののすかさず用を足す
槍がくっついちゃうんじゃなかろうかの不安をよそにしばしの解放感
この上ない幸福感が私を包む
先程までの焦燥感などもはや過去の産物
と、そこへ傍若無人なノックが!
入ったばっかやんか、入ってるって、分からん?
私は反射的にノック仕返した
力んでいた、それがアカンかった
ノックは2回
一発目でガキっとロックが外れ2発目で押しあけてしもうた
背面姿勢で咄嗟にドアを掴めず無情にもギギィーとゆっくりドアが開いてゆく様はスローモーション
カモンバックドアーー!
そう心で叫べど虚しく解き放たれた扉の奥に驚きと憐みに満ちた、或いは見たくもない、みてはいけないものを見てしまった罪悪感でいっぱいの最前列のファーストコンタクト取ってきた張本人がドアを閉めてくれるまで私は固まっていたと思う
どんな顔をして出てゆけばいいんだ
16歳の紅顔の少年はコレを機に厚顔となっていったのは必然であった