映画「デッドロックⅢ」
みなさんは昨年大ヒットした映画「ジョン・ウィック:コンセクエンス」をご覧になっただろうか。
当時の俺も受験生という身分ながら公開初日だけは勉強を放り投げてシネマシティに直行し、殺し屋フェスに狂喜乱舞したことが思い出に残っている。
本作の感想を人に尋ねると大抵「キアヌのブラジリアン柔術とガンアクションがすごかった」「キアヌ・リーヴス、ドニー・イェン、真田広之の共演が熱かった」と返ってくるわけだが……お前ら大切なことを忘れてないかと言いたくなる。
そう、スコット・アドキンスとマルコ・サロールの2人のことを!!
キャストが発表された際、スコットは衝撃のデブメイクをしてるし、マルコは日本での認知度の低さ故「2人はアクションをこなしてくれるのか?」と我々に疑問を抱かせた。
「コラテラル」の冒頭だけ登場したステイサムばりのチョイ役で終わってしまうのではないかと正直不安だった……が、それは全くの杞憂であった。
映画本編でスコットはサモ・ハン・キンポーを彷彿とさせる動けるデブを演じ、マルコはアクション面でのラスボス的ポジションを担当。
予想を遥かに上回る大活躍に、スコット&マルコ界隈(多分日本に8人くらいしかいない)は皆涙したのだった。
スコットとマルコは作中では関わりのないキャラクターを演じたが、ジョン・ウィック4を見て「あの2人が勝負したらどうなるの?」と気になった人もいるのではなかろうか。
というわけで今回は、数多くの武道・格闘技の心得のある2人が正面衝突する傑作映画「デッドロックⅢ」を紹介します。
「デッドロックⅢ」は2010年のアメリカ映画。
刑務所ファイト映画「デッドロック」シリーズの3作目。
主人公ボイカをスコット・アドキンスが、ライバル役ラウルをマルコ・サロールが演じている。
前作「デッドロックⅡ」でラスボスを務めたロシア人の格闘家ボイカが今作では主人公となり、ドン底から這い上がり自由を求める姿が描かれる。
シリーズ4作の中でなぜか唯一日本で配給されておらず、ネットで海外の円盤を買うかYouTubeの違法アップロード動画を見るかが主な視聴方法である。
俺の所有している円盤も海外版Blu-rayなのでもちろん英語音声・英語字幕しか収録されていないのだが、映画本編は中学英語だけ知っていればだいたい理解できる内容なので、そこは不幸中の幸いと言える(みんなは海外Amazonのアカウントを作って定価で入手しよう。国内Amazonでプレミア価格で購入した俺との約束だ)。
〜以下「デッドロックⅢ」のあらすじ〜
前作「デッドロックⅡ」にて主人公に右脚を折られ敗れたユーリ・ボイカ(演:スコット・アドキンス)。
刑務所ファイトで無敗のチャンプだった過去の栄光は、今や見る影もない。
ビジネスパートナーだった刑務所の支配者ガガにも見放され、監獄でトイレ掃除に勤しむ日々を送っていた。
とはいえ、タフガイのボイカは右脚が折れたくらいでは引退しない。
格闘家としての復帰を目指し、トイレ掃除の傍ら自己流のリハビリにこっそり励んでいた。
そんなある日、ボイカの耳にある噂が舞い込んでくる。
曰く、ある刑務所で世界各国の囚人を集めて格闘技トーナメントが催され、優勝者には自由が与えられるというのだ(1番凶悪な囚人を解き放つという、刑務所の定義を我々に問う側面もある映画だ、この作品は)。
この大会に参加しない手はない!とあまり調子の良くない右脚に目を瞑ってボイカは大会参加を決意。
剃刀1枚でいつものモヒカン&ザビエル髭スタイルに変身するのだった。
大会に送り出す選手の選別をしていたガガの前に現れ、大会参加の意思を表明。
呆れるガガを尻目に、元々大会に出場する予定だった選手を電光石火の速さでしばき倒す。
その戦いっぷりにガガも納得し、ボイカはロシア代表として大会に参加するのことになるのだった。
「トレーニング室を使えるのは1日1時間だけ」という制限を受けても刑務所での肉体労働中に筋トレをするポジティブマインドを発揮したり、黒人ボクサーのターボとは喧嘩しつつも親睦を深め、互いに自分が何のために戦っているのか胸中を明かしたり。
なんやかんや充実したムショ暮らしでトーナメントに備えるボイカは初戦を突破して準決勝に上がるが、このトーナメントは1人だけドーピングしているラウル・キニョネス(演:マルコ・サロール)が勝つこと前提の出来レースがだったことが判明。
ラウルのバックアップをしている刑務所が賭けで儲けようという魂胆である。
さらに、負けた選手は刑務所の体育館裏みたいな謎スペースに集めて雑に射殺されていた。
優勝者は釈放!それ以外は全員死刑!という鬼畜トーナメントに飛び込んだボイカ!
果たしてヤク中ファイターを倒し自由を手にすることはできるのか!?
というのが大まかなあらすじ。
今作の格闘シーンではMMAファイターだけでなくテコンドー使いにカポエラ使い、サンボ使いも参戦。スタントや格闘技経験豊富な俳優たちが、想像の先を行くCGいらずのアクロバティックな動きを見せてくれる。
ボイカvsラウル戦では、お互いが持てる力を出し切り、ストレートにぶつかり合って戦う。
命とプライドを賭けた男の勝負に「手加減」の文字は無いことを感じさせてくれる。
試合前のマルコ・サロールの注射ガンギマリ演技も必見だ。
そしてボイカvsカポエラ使い戦は、瞬きするのも勿体無いアクションなので要チェック!
今作のベストバウトだと言う人もいると思う。
今作が普通の格闘アクション映画と一線を画す要因は、やはりアイザック・フロレンティーン監督のカメラワークと俳優たちの身体能力にある。
本編には格闘シーンが10個ほど存在するわけだが、どれを切っても「カメラが寄りすぎて見づらい」「どんな動きをしているのか分かりづらい」とストレスを感じることが一切ない。
徹底的にカメラを引で撮り、俳優の派手なアクションを最大限に活かした映像を作る。
複雑な動きはスローモーションにして見やすい工夫を施す。
素材の味をそのまま提供してくれる素晴らしいアクション映画だ。
そして迫力満点の格闘シーン以外に、ボイカが神のために戦っていることを告白するシーンも見届けてほしい。
総合格闘技を通じた、ボイカ流の神への祈りの捧げ方は「?」な部分もあるが、信心深くまっすぐな心には誰もが胸を打たれるはずだ。
前述の通り前作で敵キャラとして登場したボイカだが、あくまで悪人としてではなく、強さを追い求める貪欲なファイターとして描かれている(格闘技で世界最強を目指していた途中、偶然主人公とぶつかってしまった、という感じ)。
だから真面目でストイックな性格の彼が人気を博し、今作で主人公に昇格したことも当然と言える。
Netflix、Amazonプライム、U-NEXT等々……配信サービスが普及した昨今。
数ヶ月前劇場で上映されていた話題作からレンタル屋にないマイナー作まで、幅広いジャンルの映画が手軽に自宅で見られるようになった。
先日も「観客の97%が泣いた」という宣伝文句の女子高生の恋愛作品がアマプラに来ていたが……俺としては、「デッドロックⅢ」が日本で配給されていないことに涙を流してほしい。
どこの配給会社でもいいから、日本でもさっさとDVD&Blu-rayセットを出してくれ!
せめてサブスクで配信くらいしてくれ!
日本配給のためのクラファンしてくれたら、俺もバイト代から金出すよ。3000円くらい。
この作品が日本に来るのはいつになるのやら……という感じですが、みなさんも興味があれば円盤を輸入して買って鑑賞してみてください。
鑑賞後に確実に筋トレしたくなる名作ですよ!