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【一次創作】弐拾参。見覚えのないメモ【#ガーデン・ドール】

いつも通りの朝。
外ではPGPと言う名の運動会の期間終了が迫っていることを含めた放送が流れていた。
内容はどうあれ、放送があるのはいつものことだ。

ただ。
聞こえてきた内容に、其のドール・ジオは首を傾げる。

10月22日。

ここ最近は特に日付感覚がズレるようなことはしていなかったはずだが。
それとも己の思い違いだろうか。
昨日と言う日付は、20日だったと思うのだが。

この感覚を念の為メモしておこうとノートを開く。
そこには、見覚えのないメモが、其のドールの文字で書いてあった。

たった一言、走り書きで。

【炎に誘われ森へ】

炎。
ジオがそう表現するドールは1体だけだ。

「……そんな覚えは、ないんだが」

まさかついに嫌がらせが過ぎて森で殺害でもされたのだろうか。

否。

ただ殺されただけであれば記憶がなくなる理由にはならない。
其のドールは知っている、1日分の記憶が抜ける理由を。

人格コアを破壊される。

しかし、通常人格コアを破壊されると異なる人格が付与されるはずだ。
自分で気付くには過去の行動と今の思考の照らし合わせが必要である――。
とある先駆者から其のドールは聞いている。
度々行われる情報交換によって。

それであればとノートを振り返ってみることにする。

今まで書き連ねたドール観察の数々。
感情への考察。
より効率的な魔力運用。
魔法の原理考察。
魔法と魔術との違いについて。
過去存在した、流れ星との日々。

どれもこれも、其のドールから生まれた考察であることに違いないし、
多少のブレはあってもそれは経験による考察変化であって、当時の思考回路も思い出せる。
思い出せる上に、納得もできる。

思考の……人格のズレはないと、思う。
そもそも自分を偽っている其のドールにとって曖昧な部分ではあるのだが。

記憶が消えていて、且つ、人格コアの変更を感じられない。

「……ハッ、まさかな」

浮上した考えを鼻で笑って一蹴する。

それだけは、ありえないだろう。

きっと自分が丸一日寝ていただとか、寝惚けてメモを書いただとか。
その類だ。

とりあえず、興味深い募集が立っていたのでそれでも見学に行こうか。
また面白い感情を観察できるといいのだが。

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