【一次創作】つよくなりたくて【#ガーデン・ドール】
机に備え付けられた照明の下で、俺は今まで書き溜めてきた手帳のとあるページをカリカリしていた。
カリカリ……ペリペリ……
「よしっ!全部剥がせた!」
剥がせた、というのは今まで手帳に貼っていたマギアビーストのステッカーたちだ。
ちょっと勿体ない気もするけれど、これらと引き換えに強くなれるドリンクがとある場所でもらえる……らしい。
原理は分からない。
でもそういうシステムが導入されたというのだ。
踊らされている気もするけれど、使えるものは使っておくものだ。
そのドリンクを飲みすぎて万が一いつかドールではないものになったとしても……ま、そんなことはそうなってしまってから考えよう。
いつか何かに対抗出来得る力を、わざわざあちらがくれようというのだ。
ありがたくもらってやろうじゃないか。
ステッカーを中心として書き溜めてきたマギアビーストの情報ページが少し寂しくなる。
ついさきほどまでステッカーが貼られていた場所を、軽く指で撫でる。
これは、今までのシャロンが積み重ねてきたものだ。
どれだけ俺はシャロンでシャロンは俺だと言ってみても、そうだという確信があっても、過去の自分へ思うことがないといえば嘘になる。
洒落っ気よりも、娯楽よりも、誰かを頼るよりも、まっすぐまっすぐ自分のために突き進んできた俺だ。
その頑張りをこんなに簡単に剥がしてしまっても……――
――ま、いいだろう。
自分の強さへ確実に変えられるのなら、過去だろうが今だろうが、きっとそうするのがシャロンだ。
ここの空白のスペースは俺自身の絵でカバーすることにしよう。
仮想体と呼ばれる存在の情報はすでにそうしていたし、みんなと共有しているノートも……そういえば俺になってからすっかり書いていないような気がするな?
それでもみんなが情報共有に活用してくれているから助かっている。
今日はもう遅い、例のドリンクとやらを飲むのは明日にしようか。
そう考えながらふと窓の外を見る。
「あ、もしかして今日は……」
夜空に、一筋の光が走る。
とある日を境にして起こるようになった月に1回の事象。
流れ星というのだそうだ。
この事象が起きるようになって、今日8月15日で2ヶ月。
この事象のきっかけとなったであろう存在を想って、今どれほどのドールがこの空を見ているのだろうか。
それとももう、見ているドールの方が少ないのだろうか。
しばらくそのまま星が流れるのを眺めていたが、本で読んだことを思い出し、空に向かって手を組んだ。
祈りをささげるかのような、そのポーズのまま俺は呟く。
「できる限り、」
流れ星には、願い事を。
「……強い力が、手に入りますように」
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