青い車

 最近車に乗る夢をよく見る。免許は持ってるけど、卒業旅行で四国まで運転して行ってからもう20年くらい運転してない。だから、夢の中でもアクセルとブレーキがどっちか分からなくて焦る。でも、結局はうまくいくし、何かに追われてるとか、そういった怖い夢ではない。

 車は何かを暗示しているのかもしれないけど、単純に車に乗りたい、車が欲しいだけなのかもしれないとも思う。家庭を築いて、マイホームを購入し、休日は大きな車で出掛ける、みたいな生活は俗っぽくて嫌だと思い込んでた。今もそれが最優先事項ではないけど、おしゃれな家とか、かっこいい車とか見るといいな~って思う。その気持ちは無理に押し殺さなくていいと思えるようになった。欲しいものは欲しいと言えるようになってきた。

 親の影響なのか、読んだ本とか、感動した映画とかの啓示なのかは分からないけど、多分みんなそういった抑圧ってあると思う。それが、こだわっててかっこいいとか、筋が通ってる、とか最近よく聞く言葉でいえば「ブレない」みたいな肯定的な面はあるんだろうけど。ただ、この年になって思うのは、大人になるってそういう今まで自分を形作ってきたもの、自分を支えてくれたものを静かに、感謝をもって、スッと天にお返しして、自由になることなんじゃないかと思う。

 それはまた新しい枠組みにとらわれることなんだろうし、それが以前のものより素晴らしいという保証はないんだけど、変わっていかなきゃいけないもんね。ただ、枠にはまって形を持たないとこの世に存在できない。まったくそういうものから自由になってしまったら自分というものは全体に溶けてしまうでしょう。それが死ぬってことなんでしょう。それはそれで魅力的なんだけど、まだその時じゃない。

 だから、最近以前の枠組みを捨てられたというのは、新しい枠組みを構築できたってことなんだろう。今はそれで安定している。その上で、車が欲しいなら買えばいい。それが俗っぽいとか、そんなものより価値のあるものにお金を使った方が、とか関係ない。どうせまた不安定になる時が来る。その枠組みが揺さぶられる時が来る。そして、もうあと数回目のその揺れでまったくその枠組みはなくなって世界に溶けちゃうんだから、自分が自分でいられる間に好きなことをすればいいよ。その時その時の気持ちに正直に。

 でも、やっぱり車自体が欲しいわけじゃないんです。怖いもん。運転。頬杖ついて外を眺めてる方がいいに決まってるもんね。だから、ちょっとかっこいい車と隣で運転してくれる人がいればいいと思う。うん、何かまとまりがなくなってきたので、この辺で。おやすみなさい。

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