甘い宝石と濁った飴
クッキーをもらった。
「昨日作ったの」と、かわいい包みに入った、いくつかの甘い宝石を手のひらにのせてくれる。
ちょっと恥ずかしそうに、どうかな?なんて小さく呟きながら、いつものはにかみ屋が顔を覗かせる。
そうしてまた、別の子にも、おはようと一緒に、そっと差し出す。あ、私だけのものじゃなかったのね。
当たり前のことなのに、妙な期待をしてしまった。
そういうところよね。と自嘲気味に目を伏せる。
視線の先に、クッキー。
まるが4つと四角が5つ。紅茶と、チョコチップと、抹茶と、それから__。
これは?
「何だと思う?食べてみて。」
いたずらな目でそう言われて、ひとつ舌にのせる。
うーん、なんだろう。バターの甘い香りが鼻に抜ける。それと、あと…。あぁ、やっぱりわからない。
隣りで同じように考え込んでいるので、その子にも聞いてみる。「わかった?」
首を横にふって答える。
ナッツ?と一人が聞くと、「近い」の一言。
ピーナッツ、カシューナッツ、アーモンド、くるみ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ……
いろいろ当てずっぽうで言ってみるけれど、みんなハズレ。
「これくらい」と、手で顔くらいのまるを作る。
あれ?大きい?
あ…!
「ヤシの実?」
「あ!もうちょっと!」
「ココナッツ!」
そんなやりとりをしているうちに、もう口の中のココナッツはなくなっていた。
もうひとつある。
サクッ
なるほど、これが「ココナッツ」。
おいしい。でも多分、私ココナッツなんて洒落たもの食べたことないな。それじゃ、わかんないよね。
まぁ、そんなこと、いいか。
今度、私も作ってみようか。いや、私にはこんな器用なことは難しい。やっぱり、女の子は違うわね。
かばんの奥の、数ヶ月前の何色かもわからない、濁った飴を見つけてしまう私とは、きっと違う生き物。
[END]