【1】核色のアダシュリアウン
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かつて光射す場所には存在と影が共存した。
今、敵も味方も死も無いこの世界では
アダシュリアウンが核であった。
・・・
人間達がアダシュリアウンについて話をしている。
まず、娘の方がたずねる。
「アダシュリアウンて何?」
それに男が答える。
「ビシェ。それはね、あなた自身のことだよ。」
「へえ。」
相槌は坊やの方が打ち、女が坊やへ伝える。
「ジェント。それはね、あなたの外の全てのことでもあるのよ。」
「わかったよ!」
「ありがとう。」
今度はビシェの方が相槌を打ち、ジェントは礼を伝えた。
ありがとうの瞬間、ジェントを残した3つの身体は縦横無尽の伸縮を繰り返しながらそれぞれの時間へと向かって行った。
地に1人で立つジェントの傍の低木の固まりの中には息を潜めてしゃがみ込む深紅のカラス。
空の高い所では、紺色の角を軸にして大きな巨体をぐるんぐるん回っているサイが風下へと流されていっている。
それを眺めている毛の長い蟻が、土石流ではなくマグマ流の破壊力で、音も無く進路の跡にキノコを生やしながら獣の息のする方を目指して行軍を進めている。
白い白い海は今でも広く、時間の経過の中で虹が差す場所となった。そして波は消えた。