20230416_0422週報:人生のウェザリング、無印良品の三条大橋

・オモコロチャンネルの『最高の一日を考えよう』の回が良かった。

・永田さんがジム行って即パチンコ行きかけたり、加藤さんがゆっくり寝る堕落を最高としかけてたり、原宿さんだけマジの実現不可能な案を出してたり、結果として落選した選択肢にめちゃくちゃ興味が湧いた。動画みたいに投票形式で作っていくのもいいけど、オモコロメンバーそれぞれの最高の一日を見せてほしくなっちゃったな。個人的にはみくのしんさんと電気バチさんの最高の一日が気になる。

・中でも一番良かったのは加藤さんの「なんかサッパリしてるし油で汚ねぇ町中華でかた焼きそばとギョーザと生飲むか」があまりに最高だった。そして続く”人生のウェザリング”という概念に思わず膝を打った。

・良過ぎる日って、良過ぎるからなんかダメなんだよな。

・そもそもウェザリングというのは模型に関する用語らしく、敢えて経年劣化による色の変化や汚れなどを再現する技法で、「汚れ塗装」とか訳される。なんでそんなことすんの?っていうと、模型って普通の塗りたてのペカペカ塗装だと綺麗すぎて本物っぽく見えないからだ。

・僕はガンプラをブンドド目的で作ったことがある程度で、ほとんど素組しかしたことないニワカなんですが、特にジオラマとかを本気で作る方はウェザリングの重要性が段違いなのでしょう。

・ディズニーとかのテーマパークで、古い時代がテーマになってるアトラクションだと敢えて長年使い古したかのような塗装をされてることは有名で、こっちは「エイジング」なんて言われるらしいが概念的にはほぼ同じだろう。

・この記事も思い出した。エイジング塗装師さんが「ランタンの日々」を想像して塗装の意図を語るシーンがグッと来る。掲載されてる作品群で十分に凄いだろ!って思うんだけど、仕事上は色を速く見抜いて再現できる人間に敵わないってエピソードも漫画めいていて面白い。ジッと錆を見つめる師匠が良過ぎる。

・そして、さらりと言ってるけど「錆って一個も同じものが無い」はかなりの名言だと思っている。ともすれば「白って200色あんねん」みたいになっちゃうけど。

・世の中には様々なウェザリング―――敢えての汚し、があるのだ。めちゃくちゃ雑に考えると「適度に汚れてるほうが本物に思える」ということで、「綺麗すぎると本物に思えない」ということでもある。

・この「本物に思う」と言うときの「本物」。本来のウェザリングやエイジングでいう「模型」に対する「本物」っていう軸だけに収まらないと思っていて、ロックスターがMC言う「本当の声を聞かせてくれよ」の「本当」だとかヒップホップスターが「俺だけが本当のリアル」っていうときの「リアル」に近いのではないか。

・野暮に言うなら「本当に今を必死に生きてる人間かどうか」っていう基準だろうか。

・有名な偉い人や凄い人のちょっと抜けたエピソードを聞いて親近感が湧くとか。買ってきた新品の食器をなんとなく一回洗って乾かすことでウチの食器の仲間入りさせるとか。仕事で詳細内容は決まって無いけどとりあえずメンバーで飲み会にいって無礼講しておくとか。

・どれもしょうもない。しょうもないし全部が良いとも限らないけど、必死で今を生きようとしている人間の、人生のウェザリングに思える。

・その点で行くと最近話題なChatGPTはあまりに倫理的で綺麗な回答ばかりする傾向があるので、人間によるウェザリングが必要である。ウェザリングというのは、言うなれば文体の調整や編集に似ていて、恐らく「綺麗ではない理想形に近づける」という点で「抜け感」とかの概念と関連がある。

・「身から出た錆」という諺がある。一般的には自業自得という意味で反省を促すためのことわざなんですが、ここに先述の「錆って一個も同じものが無い」が続くとどうだろう。身から出た錆が、あなた独自の人生経験によってのみ描き出され定着した、面白くて味わい深いウェザリングに思えてこないだろうか。まぁ、実際のウェザリングもエイジングだと綺麗に見えなくなったり意図した汚れじゃなかったら「汚し直す」らしいですが……。

・「理想的に完璧に綺麗」ということを追い求めてるととても疲れてしまう。「自分的にはこれが理想だなぁ」と思える適度なところをしっかり把握しておいて、ランダムな汚れを楽しめるぐらいの余裕、なんならちょっと自分でウェザリングするぐらいの余裕を常に持っていたいものである。



・上のウェザリングの話とも繋がる話題なのだが、三条大橋の改修作業が進んでいる。

・池田屋事件が近くであって当時の切り傷とされる擬宝珠があったりで観光名所でもあるんですが、この改修後の新しい三条大橋があまりにツルツルでピカピカ過ぎるのである。いやまぁ、別に良いと言えば良いんだけど。

・てっきり「このままだと雨風とかでヤバい!」みたいな、安全面で必要な仕方ない工事なのかぁと思ってたら、上述の公式情報によると完全に美観目的の工事らしい。「腐食した高欄に苔が発生」「木目に沿った大きなひび割れ」なんて書かれてるけど、こっちのが格好いいのでは……?

・ていうか、ちょっと改修後がツルピカ過ぎる。恐らくめちゃくちゃ由緒正しい木材なんだろうけど、サラサラなマット仕様だから見た目は無印良品である。ちょっとぐらいエイジングしてあげた方が観光客的も嬉しいんじゃないか。



・味噌汁が塩分によるデメリットを味噌の大豆たんぱくメリットで打ち消してるらしい話を見てさすがにびっくりした。

・じゃあ、土井先生の言う一汁一菜で全部良くない?

・いやまぁハレの日のごちそうは別かもしれないけど、じゃあケの日は全部とりあえず味噌汁とごはんでいいじゃん、となる。実際そういう主張が書いてあるんだとしたら申し訳ないです。『一汁一菜』、文庫本出てるし読まないとな……。



・ありがたいことに在宅勤務を許可してもらってるので普段は家に篭って仕事するのだが、今週は何かと出社する機会があり頻繁に移動した週であった。歩くし話すし気を使うので普段以上に疲れるわけだけど、これがコロナ禍以前は当然だったんだと思うと信じられない。

・雑談の席でも会話の瞬発力というか、いわゆるコミュニケーション能力の衰えを感じる……というかやっぱり人と直に会って話すのって難しいですよ。文章やリモート会議とは情報量が違い過ぎる。表情や声のトーン、服装やら場所まで考えてさまざまな意図を汲み取るの、普通にめちゃくちゃ難しく感じた。

・家の中でひとりパソコンをカタカタすることだけに特化してきており、明確に人間として退化してきている。でもたぶんだけど、言語化したことだけが解釈されるっていう前提のもとに丁寧に言語化しあいましょうね!みたいな傾向はもはや古いんだろうな。少なくとも意識的にリモートワークにしましょうっていう風潮は終わってしまったことだし。

・特に今はもう丁寧にやろうと思うならいったんAIに投げて編集するっていう段取りを何回かやってから投げればマシになるだろうし、そのマシになっていく過程を一緒に楽しみましょうよっていう前向きな姿勢こそがコミュニケーション能力の根底な気がしてきた。



・そんなわけで、連休があることに向けてちょっとだけ忙しかったりする一週間でした。来週はついに4月が終わりGWが始まり、重度の5月病を患い、祝日の無い6月へと突入する。どうかご安全に。

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