週報20230625_0701:2023年上半期良かったモノ
・全人類がやるらしいヤツですが、ノンジャンルでやっていこうと思います。
アルバム編:ポップしなないで『戦略的生存』
・ここ数年「最近聞いてる音楽は?」とか「オススメのバンドは?」と聞かれたら、大体は”ポップしなないで”を挙げるようにしている。
・ピアノとドラムだけというシンプルなバンド構成。ドラムのかわむら氏が作詞作曲を担当、ピアノのかめがい氏が歌唱と編曲を担当している、「セカイ系おしゃべりJ-POP」を自称するバンドである。
・セカイ系。もちろん定義があいまいなバズワードであることは承知ですが、どの定義だろうと包括的に正しいのは「要するにサブカルっぽい」というところなんじゃないだろうか。
・僕は児童の時に池田晶子に影響を大いに受けた捻くれキッズなので、正直セカイ系が揶揄されるいわれがわかっていない。私が感じているこの私の世界が、私の感情や行動によって大きく変わったり終わってしまうことって、全然ありえることだと思ってます。別に全然大袈裟じゃない、私が終わったら私が見てるこの世界だって終わるんだから当然でしょう?
・とにかくそんな感じで頭でっかちで、色んな生きづらさを感じている人々に”ポップしなないで”はしっかり刺さる。少しだけ日々をやりすごすための勇気を歌ってくれるだろう。
・特筆すべきはかめがい氏の歌唱。軽快に諳んじられる可愛らしいラップパートも耳に残るが、やはり肝はそれを一瞬で覆すハスキーでパワフルなサビパートでの歌唱だろう。初めて聞いたときはボーカルが二人いると思ったくらいだ。
・個人的には『UFOを呼ぶダンス』が大好きである。たぶん周りから見たらちょっとイタいんだろうけど、刹那的で衝動的でエゴイスティックな二人の変な一夜の様子だと思ってるんですが、サビが全く同じようにリフレインすることでまるでずっと続くような気持ちにさせてくれる。ずっと続いて欲しいな、こういう夜が。
・ずっと続けていてほしいバンドの一つです。
短編漫画編:にゃこと博士
・空次郎先生による1巻完結の短編漫画。寡黙だけど優しい天才博士と、博士が作った猫耳メイドのにゃこを織りなす、あまりにも優しくて柔らかい物語。これがねぇ、もう本当に愛おしい。
・猫好きあるいは猫飼いからすると「猫あるある」のカワイイ部分をぎゅぎゅっと濃縮して猫耳メイドが再現しているわけで、その様子があまりにもまず破壊的に可愛らしい。一周回ってデジコかもしれないけども……!
・個人的に推したいのは博士だ。博士はにゃこを”制作”してしまう程度にはマッドな技術力を持っているのだが、にゃこに対してはめっぽい甘い。その上でにゃこ側に寄り添うために様々な便利アイテムをえんやこらさと制作してしまうジト目のクールな天然ボケなのだ。そんなんみんな好きでしょうが。いい加減にしろよ。
・ていうか、そもそも絵がめちゃくちゃ上手すぎるし好き過ぎる。こんなの言うとむしろ失礼かもしれないのですが、キャラクターとかストーリーとか全部をまったく無視したとしても、絵が好き過ぎて絶対に衝動買いするレベル。
・コチャコチャして書き込まれた背景をちゃんと見るとむちゃくちゃ細かく小ネタが詰まってるのが大好きである。でも、そのコチャコチャ感を保ちながら画面の見やすさを担保する技術って、どういう境地なのかは検討付かない。こんな大量に線を引いてるのに、何でこんなに見やすいんです? 全部のコマがイラストとして見ごたえがある。短編漫画というよりももはや画集と言ってもいい気すらする。
・あとがきを拝見する限り、2話とかで終わる予定だったと記載があって、「なんでだよなんなら連載してくれよ!」と思っている過激派ですが、いやマジで作画カロリーが凄そうなのでこの一巻を大事に大事に読んでいきたいと思います。
・あと池袋晶葉ちゃんが好きな人、もっと言えばロボフレンズが好きな人はたぶん刺さる。絶対買ってください(ダイレクト・マーケティング)。
漫画編:ハイパーインフレーション
・「もしも完璧な贋札を作ることができたら」という設定を元にした経済バトル漫画。
・も~~~爆裂に面白かった。最高。昭和の『寄生獣』、平成の『デスノート』、そして令和の『ハイパーインフレーション』としてまったく問題が無いと思う。
・ハイパーインフレーションを読んだ読者は必ず偽札のWikipediaを見に行くことが知られていますが、ハイパーインフレーションの読者なのでどの内容も既視感があり進研ゼミ状態になってしまうのも有名。
・まず大きな題材として「経済」の描き方が面白過ぎる。個人的な規模でのハッタリやブラフから、社会全体を巻き込んだ政策まで話は大きくなっていくんですが、「経済バトル」って基本は交渉と話し合いなんですよね。
・揃えるべきカードを準備し、相手がどんなカードを切ってくるかを予測し、切る順番を間違えずに出し、そして最後はお互いに損にならないように自分の通したい条件を飲んでもらう。もちろん時には理不尽な「暴」カードも奥の手として切っているけど……バトル開始の掛け声が「さぁ、商談だ」なの素敵よね。
・そしてテーマがバチクソ面白いだけじゃなく、純粋な漫画要素として魅力的なキャラクターと歌舞伎まくった台詞回しが好き過ぎ。個人的にはグレシャムの以下の台詞が好きです。
「? 人生を賭けた計画が失敗するなんて別に普通のことではないか」
「失敗など構わない!まるで構わない!何度でも立ち上がればいいのだ!!」
・不屈の精神……! まるで少年漫画の主人公で正義の味方にふさわしい台詞に見えますが、残念ながらヒロインを売り飛ばした奴隷商人だしカネの味方の台詞です。でも超カッコいい。
・またサブテーマ的ではあるけど贋札を取り扱っている以上、印刷技術についてもやたら詳細に記載がある。ここだけ図書館の学習マンガみたいなノリでめちゃくちゃ詳細な技術的な解説があって超面白い。偽札の作り方を一番わかりやすく面白く解説している印刷物だと思う。
・そして最終的には、お金の本質たる「価値」までテーマが広がる。「もっと読みたい!」「もっともっと!」という気持ちがめちゃくちゃにあるにはあるのだが、贋札というマイナスの価値から始まった物語の結末として、ここまで綺麗な終わり方も無いだろう。
・主人公のイキ顔が無ければとっくにアニメ化している話題作。逆にアニメ化したら英雄になれる気がするが、とにかく異常な量のインプットを元にとてつもない圧縮率で構成された希代の名作が、なんとたったの全6巻。今すぐ買って、作者の住吉九先生を応援しよう。
YouTube編:現実チャンネル
・もう、説明の必要は、無ぇよな。
・現実チャンネルは、天竜川ナコンさんが運営しているYouTubeチャンネルで、頑なにオタク構文を踏襲し、癖になる声質とワードセンスとが合わさった独特なスタイルで「現実実況プレイ」や「縛り旅」「架空の説明シリーズ」などが人気を博している、新進気鋭のチャンネルだよなぁ。
・ラッパーとしても活動しており徹底してリアルにこだわっていることから、時折見せるアツ過ぎるワードが、今どん底を生きているキッズ達を救っていることはあまりにも有名。
・みなさんも是非、現実チャンネル、視聴してみてください。
・以上です。また来週もよろしくお願いいたします。