負けたけど幸せ
2024年5月18日 ジャパンラグビーリーグワンプレーオフ 準決勝 埼玉ワイルドナイツvs横浜キヤノンイーグルス戦が行われました。
決勝に進出することを目標としたイーグルスが、決勝戦の舞台である国立競技場まで辿り着く過程を見届けたいと昨年の8月から練習見学やイベントなど何度も足を運んだ今シーズン。
今回は運命の準決勝の思い出の話です。
目標は決勝進出、そして優勝へ
昨年9月、横浜キヤノンイーグルスのシーズンテーマが「The Next」であることが発表されました。
「決勝進出」という目標を掲げたイーグルス。
そもそも、イーグルスが上位4チームのみが出場できるプレーオフに進出できたのは昨シーズンが初めてのこと。決勝進出は決して簡単な目標ではありません。
開幕戦は負けで終わって、一時7位にもなったり、最後の最後で逆転されたり、最後の最後で逆転したり。
それでもなんとかイーグルスは4位という成績でシーズンを終えて、2年連続のプレーオフ進出を掴み取りました。
1%でも可能性があれば
準決勝前、田村優選手のインタビューがファンの間で話題になりました。
対戦相手のワイルドナイツは昨シーズンの準決勝でも相手でしたが51-20で負け、さらに今シーズンの開幕戦では53-12で負けるというかなりの強豪。田村選手が「99%はワイルドナイツが勝つかもしれない」と言うのもおかしくありません。
また、ちょうどこの時期、ラグビーのアプリ内で勝敗予想ゲームが行われていたのですが、結果がこちら。
なんとラグビーファンの間でも81%はワイルドナイツが勝利すると予想されていました。しかもそのうち73%は10点差以上の勝利と予想。
でもイーグルスが勝てば8割以上の人が予想しなかった展開になるということです。私は当然イーグルスの勝利を予想していましたし、なんならほとんどが予想していなかったイーグルスの勝利に試合後は選手へたくさんの拍手が送られて感動的な日になることを楽しみにしました。
イーグルスの勝利を予想していた理由は私がイーグルスファンだからだけではなく、開幕戦からイーグルスの成長をこの目で見てきたこと、そして昨シーズンのプレーオフ前とは明らかに違う雰囲気をチームに感じたからです。
前述した田村選手のインタビューや、テレビ神奈川で放送された梶村祐介選手と中村駿太選手のインタビューなどから
「ワイルドナイツは強いチーム。だけどイーグルスのほうが強いところもあるし、何よりも今シーズンはピンチの時もあったけど、乗り越えてここまで辿り着くことができた自信があるから絶対にプレーオフは勝とう」という気持ちが伝わり、これは勝てるのではという気持ちになりました。
昨シーズンはプレーオフに行ったことがとにかく嬉しくて「試合当日はイーグルスの初めてのプレーオフを楽しもう」という気持ちが大きかった(正直に言うと昨年はワイルドナイツが勝つと思っていましたごめんなさい)のですが、
今シーズンは選手たちの言葉を聞いて「自分たちの頑張りを自信にしているチームが負けるはずがない。」という強い気持ちでプレーオフを迎えました。
あの日私が見た選手の姿をたくさんの人に伝えたい
準決勝当日。プレーオフということで主催はリーグでしたが、試合前のうちわとMDPをイーグルスの選手が配布し、グッズ売り場にも選手、車椅子ラグビー体験ブースにも選手…と選手だらけでいつもの、ホストゲームかのようなアットホームな雰囲気でとても楽しかったです。
そしていよいよキックオフ。
開始早々にワイルドナイツがトライを決めて、その後イーグルスが3点返すもまたワイルドナイツのトライとペナルティーゴールが成功し3-13で前半終了。
それでも、イーグルスの選手たちは誰も焦らずにむしろ怖いくらい落ち着いていた印象でした。チームの雰囲気がとてもよく「これは後半おもしろくなる。応援頑張ろう。」と決めて後半を迎えました。
そして後半4分。イーグルスのトライとキック成功で試合は10-13。さらにその後またトライを重ねて17-13とイーグルスは逆転しました。
このときの秩父宮ラグビー場の盛り上がりと両チームのファンの応援の一体感が本当に凄かったことが忘れられません。私も選手に届くように声を出しましたが、自分の声が聞こえなくなるくらいの声援が選手たちにずっと送られていました。
絶対に負けられない戦いだからこそ、両チームの選手から「勝つ」という強い気持ちが伝わってきて、その強い気持ちがその場にいた観客の心も動かしていたように感じました。
試合はその後、17-20と再度逆転します。
試合時間は残り21分。時間はまだある。大丈夫。私は全力で応援するだけだ。
このときのイーグルスは、特定の誰がすごかったというよりかは、選手全員が本当にかっこよくて、今シーズン掲げた「The NEXT」を体現するかのような姿に「イーグルスは次のステージへたどり着いたんだ」なんて思いながら応援していました。
ワールドカップ2019でラグビーを好きになってから様々な試合を観戦しましたが、きっとこの試合がどの試合よりも1番応援をしましたし、1番勝ってほしいと願った時間になりました。
ただそれはワイルドナイツも同じで、お互いチャンスが来て攻撃しても守る展開が続き、点数は動かずに時間が過ぎていきました。
負けたけど幸せ
そして17-20でノーサイド。ワイルドナイツが決勝へのチケットを掴みました。おめでとう、ワイルドナイツ。
試合後グラウンドに倒れ込み動けないイーグルスの選手たちや、悔しそうな沢木監督、ウォーターボーイだったファフさんが選手たちのもとへ駆け寄った姿…
試合が終わったばかりの気持ちはあまり覚えてませんが、選手にめいっぱいの拍手を送ったあと、近くのイーグルスファンと抜け殻のように動けなくなったり、泣きながらハグしたり、試合中に泣き始めたタイミングが全く一緒だったりと、文字通り心が一つになって応援していたのだと思います。
後からロッカールームで泣いている選手もいたと知り、選手も同じか近い気持ちだったんだろうななんて切なくなったり。
泣くのは決勝戦後のつもりだったんだけどな。悔しいな。
前回のnoteで私はイーグルスが決勝に行ける可能性を「一見遠いかもしれないけど思ったよりは近く、決して遠くはない距離」と例えました。そして「嬉しい内容のエピローグが追記されますように。」と書きました。
81%の人が負けると予想しましたが、実際は国立まであと4点でした。全然遠くなかった。むしろ近いところまで連れて行ってくれた。だからこそ悔しい。すごく悔しい。
でも、つらいという感情ではなくしあわせな気持ちでいっぱいです。ほとんどの人が勝つと思っていなかった強豪チームが相手の試合で、大好きなイーグルスの選手たちが、すべてを出し切って戦ったことがすごく嬉しかったのです。こんなに嬉しいエピローグが書けるなんて。
また、そう感じたのはイーグルスファンだけではなかったようで、イーグルスファン以外の方からも「感動した」「素晴らしかった」「強かった」と聞くことができました。
結果は負けましたが、これだけ多くの人の心を動かした選手たちのことを本当に尊敬しますし、横浜キヤノンイーグルスのファンであることを誇りに思うきっかけとなる試合になりました。
「The NEXT」という言葉を掲げて始まった今シーズン。
また準決勝で同じ気持ちを味わいたくはないと思ったこともありました。結果は予想していたものとは異なりましたが、予想していた以上に「横浜キヤノンイーグルスのファンになって幸せ」という気持ちでいっぱいです。
楽しかった今シーズンがもうすぐ終わってしまうのが寂しくて仕方ないですが、後悔のないように3位決定戦も全力で応援させてください!
ありがとう、横浜キヤノンイーグルス。次のステージも楽しみです!