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2024/9/7(土)の宿題:暗くて冷たくて尊い朝

 『今日の宿題』(Rethink Books編、NUMABOOKS)に毎日取り組んでみる49日目。本日は大野舞さんからの出題で「心の中のスクリーンショットされた光景」について書く。

 心の中にスクリーンショットされた光景はいくつもいくつもあって、どれが一番という選び方はできなかったし、数えるのも難しい。
 しかし、そのときの温度や感覚までが蘇ってくる光景が一つある。

 私は高校生のころ弓道部に所属していた。弓道が大好きだった。練習を重ね、調整していくほどに上手になる気がした。
 熱心な部活だったので、平日放課後の練習の他、土日は他の高校と練習試合が組まれることも多かった。試合がある日は試合会場に向かう前に必ず学校に寄って朝練をした。もちろん強制ではなく個人的なものだったが、他にも何人か朝練をする部員はいた。

 冬の朝練に向かう道が、心の中にスクリーンショットされている光景だ。

 九州は冬になると日の出がとても遅い。だから冬の日の朝練のために6時ごろに家を出ると、まだ夜みたいに真っ暗だ。朝が来る気配は遠い。道着に制服のコートを重ねてしっかりマフラーを巻き、手袋をして、自転車にまたがる。今日も弓が弾けるという嬉しさに満ちてペダルを漕ぎだす。
 見上げると星空が広がっている。空の美しさに見惚れながら自転車を漕いでも、人も車もいない道では誰にもぶつかりようがない。
 吸い込む空気が冷たすぎて鼻の奥がツンとする。でもそのおかげで頭の芯がしゃきっとする。寒さは厳しければ厳しいほどいい。少しでも気温が上がると空気が緩み、物足りなかった。

 だから今でも寒い日は好きだ。そんなに朝早く出掛けることもなくなったし、関東は日の出が早いから、もうあの日のように夜明け前に家を出ることもないけれど。


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