2024/9/27(金)の宿題:百閒の世界に
『今日の宿題』(Rethink Books編、NUMABOOKS)に毎日取り組んでみる69日目。少し戻って、本日は長谷川町蔵さんからの出題。
この宿題にあたって、「これは絶対みんな読むべきだよねえ」という本を考えるのが難しかった。一冊の本を私が素晴らしいと思っても、他の誰かはそのように読まないかもしれない。ひどく傷つく人がいるかもしれない。そう考えると、誰にとっても読むべき本というものはないのではないかとすら思った。
本屋でいろいろな棚を見る中で、私が読んだことのある本なんかほんの少しであり、世の中には数えきれない本があるなあと改めて思ったし、この全てを読むことができないことへの悲しさすら感じた。
なんとなくちくま文庫の棚を見ていると、植本一子さんと滝口悠生さんの往復書簡をまとめた『さびしさについて』が目に入った。
本屋で見かけて、何ヶ月か思案した後、購入した本だった。そこにはお二人それぞれの生活、なんとなく感じていることがお互いへの手紙として綴られている。
私が休職してからこの先どうするか悩んでいるときに読んだのだが、お二人それぞれの言葉に嘘とか自分をよく見せたい気持ちとかおざなりな言葉とかがなくて、弱った心にすーっと入ってきた。私は空気になってお二人それぞれの近くにいて、その生活を見守っている、おこがましくもそんな気持ちになってしまった。
この本は、誰かに読んでほしい。弱った誰かに読んでもらえたら、きっと心の保湿になる気がする。
その三冊隣の本は、『小川洋子と読む内田百閒アンソロジー』だった。
内田百閒、読みたい、読まねば……と思っていた。
小川洋子、大好きな作家。彼女の著作はほとんど読んだ。
それに表紙もとても素敵。
運命だ!
と思った。小川さんと読むならば、手が出なかった内田百閒も読めるはず。しかもこの類の本は自分じゃ絶対に手に取らない。導かれちゃっているかもしれない。
ということで購入し、帰りの電車で早速読み始めた。いくつかの短編を読んだが、言葉の手触りというのか、今までに触れたことのない感じがしている。そして描写を緻密に重ねていくことでいつのまにか知らない世界に連れて行かれている感覚がある。
これは今でなければ読めなかったと思うので、このタイミングでもこの出会いをありがたく感じている。引き続き、小川さんと一緒に百閒の世界に足を踏み入れて行こうと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?