裏航空券について
近所の商店街に、間口2メートルぐらいの小さな旅行代理店がある。
通勤で朝夜にしか通りかからないので営業しているところを見たことがないが、お年寄りの手書きと思われる北陸応援割のポスターを貼っているので稼働しているようだ。
大手代理店が数あるなか、この業態で経営が成り立っているのはすごい。
店のお婆ちゃんが、実は旅行業界の裏の裏にまで精通したこの道50年の手練れで、一部の顧客から絶大な信頼を得ているのではないか。
売り切れてしまった航空券をどうしても入手したいときに相談したら、
「ちょいとお待ち、やるだけやってみるかえ」
☎︎婆『もしもし、源坊かい?この間はルフトハンザのフランクフルト便でずいぶん骨を折ってやっただろ?たまにはアタシの役にも立ったらどうだい。エールフランスのパリ直行、融通しなよ。あんたをこの業界で食えるようにしてやったのはアタシだよ?』
☎︎源『ちっ、しょうがねえな。婆さんにはかなわねえや』
「ふー。さ、お行き。手数料はいつもどおり1割5分でいいよ」
こんなやりとりを妄想している。