愛犬・外飼いトイプードルの思い出15
雨の日は散歩に行かなかった。
雨が降っても散歩に行きたい犬はいるし、レインウエアを着せて散歩している愛犬家もいる。でも、うちはそこまでしなかった。雨が降ったら散歩は休み。犬も人間も、ちょっとのんびりさせてもらった。
愛犬はというと、雨の日は日がな一日、犬小屋で寝ていた。特にシニア犬になってからは、ひたすら寝ていた。寝そべっているだけでなく、目を瞑っているだけでもなく、グーグー寝ていた。呆れるくらい、よく寝ていた。
犬小屋は、居間の吐き出し窓を開けた先の、庭に面した三和土に置いてある。だから居間から犬小屋の様子がよく見えた。あまりにもよく寝るので、息をしているか観察したぐらいだ。
長雨の季節、よく降るねぇと、よく寝るねぇはセットだった。そんな時は、束の間の曇天に高齢家族が散歩に連れ出していたようだ。
前の晩から降り続いていた雨がようやく上がったかな?という時、カーテンを開けて外の様子を見ていると、つられたように愛犬も犬小屋からのっそり出てきて、大きく伸びをした。「おまえも退屈だったよねぇ。じゃ、散歩でもいくか」。そんな風に何気なく声をかけるのが日常だった。
夏になると、「今日も暑いね」と言いながらタープを張って日陰をつくり、冬には「ほら暖かくしてあげるよ」と犬小屋に毛布を敷いた。天気の話、庭に咲いた花、鳥の鳴き声、チョウチョの姿、たわいもないことを誰かがいつも愛犬に話しかけていた。
窓の外を見て、そこに犬がいないことが、こんなに寂しいなんて……。