愛犬・外飼いトイプードルの思い出35
高齢家族の誕生日会を兼ねて、近しい親戚が集まった時のこと。話題は必然的に愛犬のことになった。談笑しながら思い出に話を咲かていると、数年前に一人暮らしを始めた親戚が「みんな(愛犬の死に対して)ドライじゃない?」と言い出した。その途端、各人の愛犬ロス自慢?が始まった。
お骨の入ったキーホルダーを下げて出かける話、似たような犬を見かけるとジッと見てしまう話、好きだったドックフードが安売りしていて思わず買いそうになった話、フラフラとペットショップに入ってしまう話、犬の写真を持ってネイルサロンに行った話、日に何度も犬小屋を見てしまう話、テレビのペット番組から目が離せなくなった話、今でも愛犬グッズが片付けられない話などなど、みんなムキになって逸話を披露した。
そのうち、話は最後の日のことに。
毎年ゴールデンウィークには、家族と一緒に長野の別荘小屋で過ごした。その日の朝は、仲良しのトイプードルとじゃれ合って、それから近くの湖まで散歩に行き、湖畔でひとしきり遊び、昼は人気のピザ屋のテラス席でビザの端っこなんぞをもらい、大いに喜んでいたのだとか。
それからほんの数時間後の突然の出来事だった。
しんみりした雰囲気を変えようと思ったのか、転職したばかりの親戚が少し強い調子で「私だったらそういう最後がいいな」と言った。そうだね、直前まで幸福だったのだから。
みんなの愛犬ロスはしばらく続くだろうけど、いつしか話題は誕生日会らしい楽しいものに変わり、賑やかな集いになっていた。愛犬がいたら、自分も混ぜろとワンワン吠えていたことだろう。