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愛犬・外飼いトイプードルの思い出02
昭和の時代、犬は外飼いが当たり前だった。
なんなら、放し飼いの飼い犬だって決して珍しくなかった。戦前の話でも、戦後すぐの話でもない。「ALWAYS 三丁目の夕日」よりも後の話だ。
近所の酒屋さんの犬のチロ(雑種)は私がよく見る放し飼いの犬の一匹で、時々、行方不明になっていた。酒屋の大塚のおばさんが「うちのチロ見なかった?」と家族に聞いていたのを覚えている。どこかに遊びにいっているだけで何事もなかったかのように帰ってくる時もあったようだけど、保健所に連れていかれていたのを引き取って帰ってくる時もあったようで、「ここ2〜3日帰ってこないのよ、保健所を見に行かないといけないわね」なんてことを大塚のおばさんから直接聞いたのか、家族から聞いたのか……とにかく、そんな記憶がある。
平成も中頃になると、外飼いの犬はめっきり減った。
“犬小屋”という言葉さえもあまり聞かなくなったか? “ハウス”と言ってしつけている飼い主は増えたけれど……。それでもうちの家(正確には実家)はペットに関してずっと昭和のままで、犬は外で飼い、猫は放し飼いだった。だから通算6匹目の犬、それが拾ってきた子犬ではなく、ペットショップで買ったトイプードルでも外飼いだった。
トイプードルを外飼いしていると話すと、ほぼ100%の人に驚かれたけれど、本人もとい本犬はいたって健康。今年、15歳になった。
何が幸せかは分からない。室内犬には室内犬の楽しみや幸せがあるだろう。
外飼いトイプードルの愛犬の小さな幸せのひとつは、朝ご飯を食べた後に自分で小屋の中から毛布を引っ張り出し、日向に敷き、そこで食休みをすることだったんじゃないだろうか。風に吹かれながら庭に目を向け、物思いにふけっているような姿はちょっと哲学的でもあった。何を見ていたのか。何を考えていたのか。
今となっては、もう問うこともできない。