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Plug-in XXX 制作話

先月4連続リリースが完了したCandy Collection plug-in XXXシリーズについてダラダラと制作話をしていきたいと思います。


今回の楽曲はLTCのアルバムとVRミュージカルの制作が落ち着いた去年の3〜4月頃からちまちまとスケッチ的に作っていた素材を発展させて形にしたものです。
最初のスケッチでは8小節のパターンが確か6個位あったんですが発展見込みの無いものはボツにしていきました。

とはいえ、どのスケッチもコードをなぞる適当なパッド音とシーケンスフレーズ1、2個だけで、それを暇な時に2〜3時間ループさせて聴いて、1、2音足すか消すか、音色のパラメータをいじるかを繰り返していただけでした。
締め切りがなくて縛りのない制作だとこの作業を繰り返して「おっ?」となったフレーズや音だけを厳選し「よし!組み立てみるか!」となった時にそのパターンをもとにして展開を作っていきます。


それとパターン作成時に最後まで打ち込まないのはドラムの音です。
理由はカッコいいドラムパターンや音を先に作ってしまうと、どうしてもドラムに頼ったり引っ張られた上モノだけを打ち込んでしまって、いざドラムをミュートすると全然面白味のないフレーズや音だけが残ってしまう事が僕の場合多いからなんです。

また、制作を始めた頃は音が毎回同じピッチ、同じタイミング、同じ響きで鳴っている事に飽きていて自己満足の範囲で、聴いてる人に言っても分からないくらいのズレや揺れを出したいなと思っていたんで、例えばドラムのスネアやパーカッションの音程やタイミング、シーケンスの音程やフィルターの動き等を毎音違う結果になる様にプログラムしています。

音質に関しても各フレーズをオーディオ化したものをタイムストレッチでグニュっと1/2に縮めて再度書き出し、それをまたタイムストレッチでビヨーンと2倍にして戻すという事をしてました。(以下この作業はグニュビヨーンと記します。)

これはソフトシンセから出るクリアで抜けの良い音が生理的にダメになっていたので、どうにかならないかなと思っていた時にサンレコで藤井麻輝さんがSoft Ballet時代サンプラーへシーケンスフレーズをサンプリングする時にテンポを倍にしてサンプリングした後、ピッチを-12にして再生していたという話を読んでDAWでもやってみようと思ったのがきっかけです。

音にもよりますが、エフェクトも込みで行うとなんとも良い感じのヨレ具合になって個人的に好きです、グニュビヨーン。

使った音源ソフト等はウワモノのフレーズ系はほぼCypher2、Strobe2兄弟、時々Predator、生音系はSampleTank3、Xpand、Ample Guitarのテレキャス、ドラムはGroove agentにサンプルを並べて組んでました。

エフェクトではFRACTUREをシーケンスやパーカッション、ボーカルなんかにも掛けたりしてランダマイズされたグリッジ感を出すのに多用していました。設定間違えると大暴れするんで気を付けないとなんですがフリーなのでオススメです。

前置きが長くなりましたが各曲について書いていこうと思います。

1.クローバー plug-in RABiN×LOViN

沖縄で活動されているアーティストRABiN×LOViNさんをゲストにお迎えした楽曲。


エレクトロニカだけどソウルフルなボーカルを乗せた曲をやりたいなーと制作途中でイメージが湧きました。

最初は確かエレピのコードとフワワンとしたシーケンスだけだった気がします。
で、たまたまこんな音いつ使うんだ?なんて思ったCypher2のグュニュラー的なパッドをエレピのコードと差し替えたら想像以上に良い感じだったのでそこから一気にベースやドラムが思いついていきました。

Bメロに出てくるシーケンスやサビに出てくる金属っぽいパーカッション、確かタブラもグニュビヨーンしてます。

後半サビから急に暴れ出すTBっぽい音も気に入っててあれはガッツリリバーブを掛けてあるけどプレタイムを遅くしてオートメーションで追加していき、そこをコンプで上げました。

RABiN×LOViNさんとのやり取りについてはとにかく仕事が早くクオリティも高い、一言で言うと天才だなと思いました。
最初にもらった仮ボーカルでイメージしていたままの感じだったのでビックリしました。

メロ入りのデモをお渡しして作詞と仮歌もらうまで確か半日〜1日ぐらいでした 笑
作詞に関しての要望は他のコラボでも僕からは一切リクエストはして無いのですが、曲のイメージ等を聞かれた場合はお伝えしていました。
この曲は確か「Answer」というキーワードだけだったと思います。
そこからイメージを広げて作詞されたRABiN×LOViNさんは凄いです。

2.ラティエルのボイスレコード plug-in yuri
これも元のパターンはドローン的なものとメインフレーズだけだった気がします。
ちょうどTychoを聴いていてギターを使ったアンビエントやエレクトロニカが良いなと思っていたので買ったばかりのAmple guitarのテレキャスで鳴らしたところ偶然キースイッチがミュートの所になっていて凄く馴染んだのでそのまま採用しました。

タイトルの示す通り異空間を彷徨うボイスレコードを受信したってイメージだったので、マスタートラックにカセットテープのヘタり具合を再現するソフトを挿して大きい周期で音程を不安定にしています。

ウワモノのシンセはほぼグニュビヨーンです。
歌に関しては前々からポエトリーリーディングを取り入れてやってみたいという構想がありました。
そんな時、yuriさんが所属する甘い檸檬の曲を聴きぜひにもお願いしたいと思いオファーさせて戴きました。


yuriさんは歌も唄われるのでポエトリーリーディング+サビ的なものにしようか迷っていたのですが、中途半端な感じになる予感がしたのでいっそ曲の最初から最後までyuriさんの好きなタイミングでポエトリーリーディングをして下さいとオーダーしました。
僕からのイメージは「海」「宇宙」「冥界」とお伝えしたと思います。

見事に全てのイメージを含んだ壮大な世界観の歌詞が乗ったデモを聴いた時に一人ガッツポーズしたのを覚えています。


3.ユメカマコトカヒカリニナル plug-in サトウトモミ

今回リリースの中でいちばんポップに仕上った曲だと思います。
しかしこれも元のパターンではもっとデジタルでノンビートなアンビエントを作ろうと思っていました。

しかし完成品に痕跡が残っているのはBメロに出てくるサイン波のシーケンスぐらいです…。
途中アンビエントを諦めた時に適当に弾いたフレーズがサビのメロディとなりそこから発展していきました。
最後に何か一つ音を入れたいと思いMONKEY MAJIKのAround The Worldみたいになるかもと思ってカッティングギターを入れてみました。
このカッティングギターを入れた事でラスサビ前のブレイクが思いつきました。
因みにラスサビ前から「ヒカリニナル」とボーカルがフェードインしてくるアイデアはサトウさんによるものです。

今回のコラボはサトウさんのミニアルバム「Tokyo」に収録の「サマータイム」という曲のリミックスを担当させて頂いた事がご縁もあり、サビのメロディを歌いこなせるのはサトウさんしか居ない!と思いオファーさせて戴きました。

お伝えしたイメージは確か「日本的な言葉をお願いします」だった気がします。

結果「これ、もうほぼサトウトモミさんの新曲だ…」という位にメロディに素敵な歌詞を付けて見事歌いこなしたデモを頂きました。

デモを聴いて先にお伝えした「日本的な言葉」として僕が考えていた中の一つ「朧月」が組み込まれていた偶然の一致に凄く驚きました。

歌詞についてサトウさんがお話しされているnoteがあるので是非チェックしてみてください。

4.Still I keep plug-in ぽらぽら。

今回の4曲の中で一番Candy Collectionぽいと言うか北欧テクノポップな曲です。
これも元パターンは曲中鳴っているちょっとジャジーなエレピフレーズとベースラインからだったと思います。
展開が入ったのは冒頭のピアノを入れた位からで、その時にぽらぽらさんへのオーダーも考えていたので北欧系に流していこうと考えました。

シーケンス関係は全てグニュビヨーンしてます。
間奏はブレイクビーツを入れてお洒落な感じに持っていこうと思っていたのですが、ちょっとした遊び心でドラムにディストーションをガッツリ掛けてみたら気分が盛り上がってしまい「そういえば、高校の頃買ったインダストリアルのサンプリングCDがあった!」と思い出し、チェーンソーやらエアーコンプレッサーやらの音を取り込み…ほぼ本編を忘れて別の曲を作っていました。

これでは整合性が取れないと思い本編のジャジーなエレピシーケンスとぽらぽらさんの声をFRACTUREで加工したものを乗せました。
結果、僕の中では冷静なアンドロイドが途中暴走してまた元に戻る感じの展開が出来たので満足しております。
ぽらぽらさんには以前からLTCをご自身のイベントに誘って頂いたり、ライブでコラボしてもらったりとお世話になっておりました。


毎回ぽらぽらさんのライブを見る度にテクノポップな曲を歌うその声の裏にある何処か冷たくて悲しそうな、憂いがある感じが気になっていていつかそういった部分を引き出した曲を歌って欲しいと思っていたので、今回の曲の仕上がりは予想以上の相乗効果となりました。

歌詞に関しても全て英詞かと思いきや途中で自然に日本語を混ぜてあって凄くぽらぽらさんらしいし、センスがあるなぁと感じました。


今回コラボをオファーさせていただいた4人のアーティストは唯一無二の歌声を使いこなし、自身の曲で世界観を作っていらっしゃる方々なので当然の結果なのかもしれませんが、全曲コラボしてもらったアーティストのオリジナル曲のように自然に聴けてしまうのが制作した僕にとってとても幸せな事だなと感じていますし、そうなっていることで今回のコラボは大成功だなと一人自己満足をしている次第です。
また機会があったら是非ご一緒したいなと願っております。

どうか聴いてくれた方の数あるのお気に入りの中の一曲となります様に。