老舗に嫁いだわたしが、商売をしていて聞きたくない言葉とは。
老舗麹屋に嫁いでもうすぐ10年。
そろそろ麹屋の嫁としての自覚も確固たるものになりつつあります。
そんなわたしが、商売を通して聞きたくない言葉があります。
それは、
『安くして』
これ一択。
ごく、ごくたま〜に言われるんです。
「このくらい頼むから、少し安くできない?」って。
いや、わかるんですよ!『価格を安くする』ということは、確かに消費者的には魅力的。
すごく良い事のように思えるかもしれないけれど、じゃあ逆の立場で、自分が生産者だとしたら…どうでしょう?どんな気持ちになるでしょうか??
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安くするということは、何かを犠牲にして価格を下げているという事。
人件費なのか、給料なのか、それはわからないけど、その事業の何かを削ってそこに割り当てているんですよね。
だから、安くしても品質が保たれる保証はどこにもありません。
それは仕方ないですよね。だって、価格(価値)を下げているのだから文句は言えない。
同じ仕事をしてるのに、少ししかもらえないんならこの程度でいいや。そう思ってしまうことは、ごく当たり前の感覚だと思います。
少しの値切りのその先に、めぐり巡ってその商品や、製造元がなくなる可能性もあるということも知っておいて欲しいです。
そんな風にして、色々なものが絶えてきてしまったのが現代。
私たちの知らないところ、気づかないところで、たくさんの蔵が廃業してきました。酒蔵も、味噌蔵も、醤油蔵も、もちろん麹屋も。
昔から続く、技術や、文化、伝統を守ることって、ただでさえとっても大変な事なんです!
わざわざ生産性が低くて、効率も悪いことをやってまで、続けてきたやり方を守るとか、正直、何やってんだろ?と思う時ありますよ。
機械で作れば一発じゃん!って。
朝から晩まで働いて、休みの日でも常に半分は仕事。
麹の世話をして、その合間で生活をしているとか、麹の都合で旅行先も限られるとか、ぶっちゃけ意味わかんないですもん!
でも、わたしは、嫁いだ先で脈々と受け継がれてきた伝統を次の代に渡したい。
だから、正直に言いますが、アホみたいに安く売りたくないんです。そんな売り方したら、麹屋として続かないんです。
覚悟を持ってやってます。
だから、気軽に『安くして』という言葉を言うことを、わたしはしませんし、そんな言葉は聞きたくありません。
初対面のお客様、初めての注文でこんなことを言われると、
『注文する前から、私たちの仕事や商品には価値がないと言われているよう』でとても辛いです。
安く買いたければ、どうか希望に合うお店で購入していただきたいと思います。
応援してくださるお客様のためにも、技術を守るためにも、適正な金額で真っ直ぐ、対等なお付き合いをしていきたいものです。