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動画配信はファンとアーティストをつなぐ架け橋なんだよ、そこを感じてくれないか

翌日、アーカイブに残された映像を見た。
オープニングの映像からスムーズにライブ会場のまいやん(白石麻衣)へと切り替わる素晴らしい演出だった。「ああこういう映像だったんだ」と知った。
開幕早々盛り上がる楽曲。「盛り上がっていくぞー!」とまいやん(白石麻衣)が叫んでいたことを知った。
始まってすぐのMC。まだ泣いちゃダメ!と涙声を必死に隠そうとしながら笑顔を作るメンバーがいたことを知った。
「配信の皆さん盛り上がってますかー?」はメンバーの声。こちらには届いていなかった。
「開演が遅れてしまって申し訳ございません」と頭の大きい子が謝っていたことを知った。血の通った謝罪をしてくれるのはいつだってキャプテンだ。
まいやんをセンターに据えた「制服のマネキン」は、かっこよかった。昨日リアルタイムで観ていたなら、乃木坂の歴史を感じて感極まっていただろうな、と思った。



10月29日に見たものは、全て過去の情報だった。




10月28日。白石麻衣卒業コンサート。彼女が卒業を発表してから数ヶ月間、この日のために多くのファンが必死だった。早く仕事を終わらせた人。周囲に無理を言って何とか予定を開けた人。親に頭を下げてお金を払ってもらった人。一生懸命お小遣いを貯めた人。この日があるから勉強を頑張ってきた人。みんな、リアルな感情と同じ時間を共有したかったからだ。決して映像を見るためではない。
オープニングを見てこれから始まる時間にドキドキしたかった。
「盛り上がっていくぞー!」にテンションマックスになりたかった。
涙をこらえる笑顔に感情移入して一緒に泣いて笑いたかった。
謝るキャプテンの姿なんか見たくなかった。

見れたはずのものが、見れず、見ないで済むはずのものを見てしまった。



ライブ当日、途中からは鑑賞することができた。素晴らしい時間が流れていく。時の流れを感じるたびに、もし最初から見れていればと雑念が襲う。楽曲に魅入り、画面の暗転と共に感慨深くなる。気が緩むとふと思い出し、苛立ってくる。どれだけ集中しても、どれだけ切り替えようとしても、どれだけ感動して泣いても、ダメだった。二重課金に躊躇せずとっとと配信業者を替えれば良かったと自分を責めるが、そういう問題ではない。

気づけばアンコール。時計を見ると22時。高校生以下のメンバーが出演できなくなった。開幕が30分遅れた影響で全体が伸びたからだ。全員で最後に歌う姿を見たかったと言うのはオタクのエゴかもしれないが、ライブ中に溢れる涙を拭おうともせずにぐちゃぐちゃになりながらもまっすぐ踊る年少メンバーを、最後の楽曲でまいやんと一緒に踊らせてあげたかったと考えるのもオタクのエゴだろうか。


今後アーカイブをさらに残してもらっても、返金対応をしてもらっても、帰ってこない時間がある。味わえなかった感動がある。そもそも対応に期待をしていない。しかし、お願いがある。楽天TVの人間はアーカイブを見てくれないだろうか。白石麻衣という人間がどれほどの人間だったのか。どれだけ愛され、どれだけのものを乃木坂にもたらした人間だったのか。そんな彼女を担ぎ上げファンの元へと届ける気概を自分たちは持っていたのかもし、何も感じないのであれば、動画配信事業から撤退してほしい。あなたたちの事業はただのIT関連業務ではない。アーティストとファンをつなぐエンターテイメントの架け橋だ。想い・絆・愛・感動……臭い話ではあるが、そこにはデータでは処理できない多くのものが存在する。この日サーバーを落とした数十万アクセスはただの数字では無く、白石麻衣を、乃木坂46を愛するそれぞれ想いと背景を持ったファンの集まりだという、今更言うまでもない当然すぎる事実を改めて感じてほしい。


「楽天TVさん炎上してますねえ」と対岸の火事だと眺めているその他の配信業者も無関係ではない。今回のような出来事はどの規模でも起こりうる話であり、お笑い・演劇・スポーツ等、あらゆるエンターテイメントにおいて危惧すべき事案である。関わり方もトラブルもその後の対応も全てファンは敏感に感じているので、そこに愛があるのかどうか、容易にわかる。今回の件で、アーティストとの間に生まれている絆を踏みにじると簡単に信頼を失うことを学んでほしい。


「アイドルファンがぎゃあぎゃあめんどくせえなあ」と思った人もいるかもしれない。しかしこれはアイドルとか関係なくエンタメ業界全てに関係することだと思う。サーバーが落ちる。対応がずさん。ファンやアーティストの想いを汲み取らない。こういうことが頻繁に続くと、配信なら見なくていいや、と客離れも考えられる。それはアーティスト本来の魅力とは別な話。コロナで苦しみ悔しい想いをした今、さらにアーティストやファンと関係ないところでエンタメに不利益がもたらされるなんて、これ以上はゴメンだ。


まだまだ不安定さはあっても、コロナ禍の今、動画配信サービスはエンタメの肝。日本を元気にして多くの人が生きる糧にしているエンタメ、その未来や現状を引っ張っているという覚悟と自覚を持ってほしい、と言うのは大袈裟だろうか。なんども言うが、アーティストとファンとをつなぐ架け橋なんだ。

直接アーティストと会えない今、あなた方配信業者は我々名もなきファンの想いを乗せた拠りどころであるべきなのだ。

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