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商業用不動産ローンに要注意

米国で商業用不動産ローンの延滞率が上昇し続けています。特にオフィス部門の延滞率上昇が顕著で、2024年11月時点の延滞率は10.38%となりました(赤色の折れ線グラフ)。

オフィス部門のローン延滞率が上昇している背景として、コロナ禍をきっかけに進んだテレワークが挙げられます。テレワークが浸透したことでオフィス需要が縮小し空室率が上昇、オフィス価格が下落して不動産オーナーの資金繰りが悪化した結果、ローン返済が困難になっているわけです。

また、集合住宅部門のローン延滞率(黄色の折れ線グラフ)も大きく上昇しています。こちらもコロナ禍で住民が多く流入した米南部のサンベルトを中心に集合住宅が供給過剰となっており、価格が下落してオーナーの資金繰りが悪化したことが背景にあります。延滞率の数字自体はオフィス部門には及びませんが、こちらも注意が必要です。

商業用不動産ローンの損失拡大により、貸し手と借り手の間では金利減免や契約延長といった措置が取られています。しかし、高金利が長期間にわたり続いた場合、金利減免や契約延長を継続するのにも無理があるため、耐えられずローンのデフォルトが発生する可能性が考えられます。

商業用不動産ローンの保有主体は銀行

商業用不動産ローンの多くは銀行が保有しています。中でも中小金融機関は総貸出の約半分が商業用不動産ローンと商業用不動産ローンの影響を大きく受ける体質となっています。

商業用不動産ローンがデフォルトが増えた場合、銀行破綻が相次ぐ可能性があり、信用収縮を伴った金融危機に発展するリスクがあるでしょう。2024年8月5日に発生した令和のブラックマンデーのような急落が再来するかもしれません。

金融危機時には緊急的な金融緩和が実施される可能性

万が一金融危機に発展した場合には、当局による緊急的な金融緩和が実施されるとみられます。

2023年春の地銀ショック時に設けられた「BTFP」が復活するかもしれません。結果的に、2008年の世界金融危機のような大惨事は回避できる可能性があります。

また、トランプ次期大統領は株式市場にフレンドリーな姿勢を見せており、中間選挙に向けて好景気を演出したいと考えているはずなので、金融緩和は積極的に行うと予想しています。

長期的なリスクは依然として残る

短期的には金融緩和によって金融危機を回避できるかもしれませんが、長期的には依然としてそのリスクが残っていると考えられます。

理由は、商業用不動産ローンの借り換えが相次ぎ、さらに向こう5年ほどの経済環境を考えると再び高金利の世界になっている可能性が高いからです。

商業用不動産ローンは、2024年から2028年にかけて、毎年5,000〜6,500億ドル程度が期限を迎えるため、借り換えが相次ぐとみられます(下記リンクの図表5を参照)。

借り換え時に金利が低水準であればよいのですが、金利が引き上げられていた場合、借り換え後にオーナーが多額の利払いを迫られることになるため、資金繰りが悪化してローンがデフォルトに陥るかもしれないのです。

もしこのような自体になれば、再び銀行の倒産が相次ぎ、金融危機につながるかもしれません。

投資戦略

ここまで紹介したことを踏まえて、私自身は次のように投資しようと考えています。

向こう1年程度でショックが発生した場合は当局の動きを見ながら金融緩和の観測が出た時点で買い向かい、その後数年間は継続保有します。

再び金利が引き上げられて商業用不動産ローンの延滞率上昇が見られたら、全保有株を売却して本格的な金融危機に備えます。

私自身は商業用不動産ローンを巡る危機は二段構えでやってくると考えているので、初回の下落はリスクを取って買い向かう予定です。

なお、初回の下落時に投資する銘柄は、インフレ耐性のある鉱山株や鉄鋼株、原油株、非鉄金属株を予定しています。インフレ耐性のある銘柄に投資する理由は、金融緩和によりインフレが加速すると考えているからです。

本番の下落が訪れた後は、大規模な金融緩和継続により世界金融危機後と同じでグロースファクター優位になると予想しているため、成長力のある企業を選別して投資したいですね。

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