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米国の労働市場は減速傾向

2024年12月26日、新規失業保険申請者数と失業保険継続受給者数が発表されました。

新規失業保険申請者数と失業保険継続受給者数

12月15日〜21日の新規失業保険申請者数は21.9万人と、市場予想と前週の数値を下回りました。一方、新規失業保険申請者数の4週移動平均は22.7万人と前週から微増となっています。

また、同時に公表された12月8日〜14日の失業保険継続受給者数は191.0万人と、市場予想と前週の数値を上回りました。

2024年の推移をグラフで確認してみましょう。新規失業保険申請者数は以下のように推移しています。

新規失業保険申請者数の推移

週によっては申請者数が急増していますが、大まかなトレンドとして増加しているようには見えません。

一方、失業保険継続受給者数は以下のように推移しています。

失業保険継続受給者数の推移

足元では失業保険継続受給者数は増加傾向にあり、職を失った人が新しい仕事を見つけられておらず、失業期間が長期化していると考えられます。つまり、労働市場は悪化している可能性があるのです。

なお、新規失業保険申請者数が増えていない背景には、受給資格がない人や資格があっても申請しない人がいるためとの指摘があります。

今後も失業保険継続受給者数が増加していけば、労働市場の悪化が鮮明になり、Fedはハト派転換を迫られることになるでしょう。

ハト派転換で利下げ回数が増えれば、その分だけインフレが進行するリスクが高まります。Fedは労働市場とインフレ抑制のどちらを優先するか、選択を迫られる可能性が高まっているのです。

個人的には、Fedは最終的にインフレ抑制を諦め、利下げの回数を増やすのではないかと考えています。労働市場の減速だけでなく、米国債務残高の増加や重い利払い負担、商業用不動産ローンの借り換え到来といった材料があるためです。

また、商業用不動産ローンを巡って不穏な空気が流れています。11月時点でCMBSの延滞が急増しており、オフィスローンの10%が未払いになっています。さらに、高金利とオフィス価格の下落によって2025年末に返済期限を迎える商業用不動産ローン1兆5,000億ドルの4分の1がデフォルトに陥る可能性が指摘されているのです。

現在、商業用不動産ローンは金利減免や契約延長によって損失を先送りしていますが、高金利とオフィス価格の下落が続いた場合、耐えきれなくなって損失を認識せざるを得なくなるかもしれません。2024年時点でも、中小金融機関が多く保有するCREやCLOと呼ばれる担保証券のディストレス率は15%前後と高水準になっており、金融危機のリスクが高まっていると言えるでしょう。

このような材料によって、利下げ回数を増やしたり緊急利下げを実施したりした場合、中立金利付近、もしくは中立金利を下回る水準まで利下げせざるを得なくなるかもしれません。当然、インフレが加速してしまうでしょう。

金融危機が発生する恐れがあるため現金比率を高めにしておき、金融危機が発生して株価が下落した場合には、インフレ耐性のあるセクターの銘柄に少しずつ投資していく予定です。

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