ネクタイの結び方を覚えておいて下さい。
なつやすみのとある土曜日、
お付き合いで登戸にある藤子・F・不二雄ミュージアムへ。
ドラえもんやパーマン、エスパー魔美などはわたしも小さい頃から好きだった。
原画などの展示もさることながら、何の気なしに置かれたF先生愛用の持ち物なども実に心をくすぐられる。机は撮影不可なのだが、化石や筆記用具、たくさんの玩具。遊びが凝らされているのに机上はすっきりとして使いやすそう。上を見上げると一面の本棚にNゲージがタンタカタンタカ走っている。
何気なく曲がり角の階段を上がると1枚の絵画。
F先生が初めて求めた絵画というそれは藤田嗣治の少女の絵だった。
思わずぽーっとなり、立ち止まってしばらく見入ってしまう。
わたしは藤田の描くこどもや少女の絵が好きなのだ。
あちこち見てからF先生が当時まだ恋人だったであろう正子夫人へ宛てた一通のお手紙(富山‐東京の遠距離恋愛だったのかな?)が展示されていた。
これがまた素敵で。
季節の移ろう様子や今庭で鳴く虫の音、相手を気遣う様子。極め付けは、
「あなた。ネクタイの結び方を覚えておいて下さい。僕は頭がよわいのでいつもちぐはぐで…」と書かれていまして。
ほんとうに夫人のことが大好きなのだなぁというのがすごく伝わる、可愛らしくも微笑ましい、グッとくるお手紙だったのです。
心が震える文章って大抵素直な気持ちを綴ったものが多い。
こんなお手紙貰ってしまったら、もうどうしようもないですよね。
最近涙腺の弱いわたしはその場でしばらくの間、ぽろぽろ涙を零しながらちんまりと屈んでしまったのでした。