コンサルタントの実像#2
総合コンサルティングの罠
アクセンチュア、BIG4、独立系
コンサルティングに関する記事やSNSでの投稿を見ると、総合コンサルティングはどうやら10社以上あるらしいということがわかります。
その中でもよく目にする会社は、アクセンチュア、デロイト・PwC等の会計系ファーム、ベイカレントやアビーム、シグマクシス、NRIなどの国内独立系でしょう。
総合コンサルティングが総合といわれる理由は、すべての業界や機能領域をカバーするケイパビリティに加え、川上~川下(戦略から実行・実装)まで包括的に支援する規模を有しているから、と言われています。
この中でもアクセンチュアに関しては、DXのトレンドを的確に捉え、先行投資と積極的な人員採用を他社に先駆けて行うことで、システム導入や開発・実装案件に関しては先行者優位を確立しています。
その他の会社もアクセンチュアに追随する形で急激な規模拡大とシステム案件の獲得を過去5年間くらい継続しており、売上という数字面では非常に成長しています。
DXはデジタルトランスフォーメーションであり、デジタルという触媒を用いて新たなビジネスモデルを構築したり、既存事業のブレイクスルーを実現することを指していますが、DXまで実現できている日本企業はごく一部であり、多くの企業はデジタイズ、デジタライゼーションの段階にいます。
SAP S/4 HANA導入やシステム刷新、システム統一はデジタライゼーションであり、厳密にはDXではありません。
入社後のキャリア
事業会社にいると、こういった総合ファームに転職したあとどのようなキャリアを歩むことになるのか、ということは理解できません。
募集要項を見ていても、例えば会計系ファームであれば以下のような文言が並んでいます。
部門:Core Business Operation>Operations Transformation
部門:ファイナンス
これを見てどのような印象を抱くでしょうか。
横文字が多く他業界の若手を惹きつけるような、キャッチーな言葉が並んでいます。
如何にもクライアントの上層部が抱えるトップアジェンダを扱い、ビジネスモデルの改善や、それに基づく業務改革の構想立案をサポートしており、戦略から実行まで一気通貫して支援できるように映ります。
はっきり言って、こうした採用サイトや募集要項に書かれていることを鵜呑みにすることはやめた方が良いです。こうしたトップアジェンダを扱うプロジェクトは1割にも満たないか、すでに存在しないことも十分にあり得ます。
ただ彼らも採用して規模拡大をする必要がありますので、キャリア志向が高く優秀なビジネスマンに現実の業務をあえて誤解させるように誘導しています。
自分自身でトップアジェンダを扱う機会はほぼ存在せず、既に決まっているシステム導入やデジタライゼーションを実現するために、どのように実行していくかという計画策定業務やシステム導入の要件定義やPMOを実施することがほとんどです。
財務経理の経験があれば、そうした分野のシステム案件、営業や貿易の経験があれば、そうした分野のシステム案件、保険や銀行出身であれば、そうしたクライアントのシステム案件にアサインされる可能性が100%であると認識しても問題ないです。
誤解しないでいただきたいのですが、こうした業務・プロジェクトそのものを否定しているわけではありません。この分野の重要性は理解していますし、クライアント側もぜひ依頼したい領域になります。
十分に認識して理解の上で入社すれば全く問題ないのですが、誤解したままキャリアチェンジを図ると想像以上にイメージとのギャップがあるため、非常に失望感を得ることは経験から言えますので、同じ轍を踏まないように十分に吟味してください。
入社時研修
かつて総合ファームにて新卒研修や中途研修の資料を作成したことがあります。新卒研修は3カ月程度、中途研修は1カ月程度のスケジュールで研修が進みます。
特に新卒研修においては、入社後3カ月目くらいの時期にそのファームが契約しているシステム会社の知識を身に付けるために、実際にモデルビルディングをできるようになるためのカリキュラムが組まれていました。
財務データや営業データを渡されて、それをもとにシステムにCSVでインポートして、財務諸表の作成や営業シミュレーションを実施するような課題です。
ほとんどの社員が獲得したいスキルは、財務諸表における勘定科目の意味や具体的な会計処理などのテクニカルな知識や、営業改善の手法やチェンジマネジメントの実務の知見だと思いますが、そうしたことは研修では実施しません。
あくまでシステム案件のために、システムの使い方やダッシュボードの作成スキルを身に付けるための研修です。
テクニカルなスキルは自分自身で書籍を読んだり、資格を取得したりすることで身に付けていくことが必要ですし、実際に推薦書籍リストが配られ、自分で身に付ける必要があります。
自分で徹底的に調べる
企業は採用する前には魅力的な言葉で候補者にアピールしてきますが、入社してしまうとイメージとのギャップの有無や経験/未経験に関わらず、その企業のカルチャーや論理に従う必要があります。
ギャップがあるとどうしてもモチベーションが湧かないのでパフォーマンスやコミュニケーションへの意欲も高まらないと思います。
新卒入社した企業と決別し、新たな一歩を踏み出したせっかくの行動力を無駄にしないためにも、本当に自分がやりたいことや自分の望むキャリアのステップになりうるか、といった視点で転職活動をしましょう。
会社名ではなく、業務内容やエグジット(再転職)先はどんなところか、を積極的に調べることで、総合ファームの罠にハマらずに済みます。