フルマラソンでの失速をどう防ぐか

マラソンレースの後半で失速する理由

それはオーバーペースしかない。

30kmに壁など存在しない。
そこにあるのはオーバーペース、それだけだ。

だが、オーバーペースにより何が生じたか、それを理解することが重要。

これらは主に3つあり、即自対応可能なものと、そうでないものとがある。
①グリコーゲンの枯渇
②筋肉疲労
③脱水
自らのペースダウンがどれに相当し、どう対策すべきかを把握できているとアスリートとしてレベルアップできると思う。
 

①グリコーゲンの枯渇(ハンガーノック)

オーバーペースを継続すると糖質を多く消費する。
体内に蓄えられる糖質(グリコーゲン)はおおよそ1500kcal。
つまり25~30kmでほとんど消費される量になる。
これが30kmに壁があると言われる理由であり、30kmまでなら根性で何とかなる。
そしてハーフマラソンとフルマラソンが全く異なる種目と言える理由でもある。

脳は糖でしか活動できない。
人間とはそのように作られている。
糖を消費し体内の糖質が枯渇してくると、脳は生命を維持するために体の活動を低下させ、脳と心臓を動かす以外の活動を止めようとする。(いわゆる低血糖症状)
これが30kmの壁を感じた時の体の状態で、精神が肉体の限界を凌駕して走ろうとすればやがて意識レベルが低下し、強制的に活動が終了させられる。

つまりレース後半で歩いている人はほぼハンガーノックが原因と考えていい。
また、レースで失速したにも関わらずレース翌日に筋肉痛が少なく、通常に近いレベルで走れる状態であった場合も、失速の主な原因はハンガーノックであったと考えられる。

ハンガーノックで失速した場合、それは長距離走の練習が足らなかったからではない。
体内に蓄えられる糖質の量はどんなに走りこんでも増えることはない。
また、脂質の利用には糖質が必要であるためどんな食生活をしても脂質だけでレースペース走ができる体にはならない。

ではどうすればいいか。
解決策は3つ。

プランA:

設定ペースを見直す。
10kmやハーフマラソンの自己ベストの値をダニエルの式やリーゲルのタイム式に当てはめればマラソンレースペースのおおよその限界値を計り知ることができる。
そこから算出したペースと失速したペースを照らし合わせて次戦での設定ペースを再検討する。

プランB:

走力を高めて、それがオーバーペースでないものにする。
これが理想的ではあるが速くなるほど理想は高くなり、おそらくさらにペースを上げて失速は生じる。
つまりオーバーペースに対する解決策にはなっても失速に対する解決策にはならない。

プランC:

ここから先は

3,393字

¥ 300

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?