手放すことで理解が深まる読書ー適度な距離が距離を縮める

興味に沿って様々な本を買ったり借りたりしていると、どうしても難解で読み進められない内容に出会う。


そんな時の方策としては:

1. 目次で全体の流れにもう一度目を通したり、パラっと少し先に目をやって、果たしてその自分にとって苦しい状態がどのぐらい続くのか、おおよその目安をつける。


2. 乗り切れそう?
Yes→
2. 1 短時間で集中して何とか読み進めて次の章を目指す。
  そうすればまた快適な読書状態に戻ってくることができる。

No→
2.2
a) その章節の内容をとりあえず飛ばして次の章節にすすむ。
b) 続いていく章節が相変わらず難解な場合、その本はとりあえず断念する(本棚にしまう/返却する)。


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読書をしているとよくあることだけども、以前は読めなかった、或いは興味をもてなかった本が数ヶ月後、数年後にスッと目/心/頭に入ってくることがままある。

その理由は、その間に見聞きしたり考えたりしたことを通して新たな状態を手にしていたり、時間を置くことで脳と心が当時の情報の処理を終えていたりと、様々ではあると思う。


ここでのポイントは、


「自分の楽しめるタイミングがきた時には、その対象に頭を埋めて脇目も振らずに没頭する」


ということ。

それができれば、一つ一つの出会いや思いと、より良い形で対話する機会がやってくるチャンスにまた巡り合えるかもしれない。


手放すことで得られるものがあるという。
でもそれは必ずしも別のものとは限らない。
一度手放して、
少し距離を取ってみることで、初めてその尊さがわかり、のちにもっと大事にできることもある。

距離を取ることで、逆に距離が縮まる、そんな逆説的な意義がここにある。





実は、私自身は言語学を専門としているにも関わらず、ソシュールの考えや言語学の系譜をよく理解せずにここまで来たという野蛮人です。

そんな私が最近、心理学者と話していた時、かの有名な(!)「構造主義」の話になりました。


「言語学がご専門の方に構造主義、ソシュールの話をするのは気が引けるのですが、、、」


(心の声)
すみません。構造主義もソシュールのことも本当にほとんど知りません。

と言うのも、当時は個別の言語現象には強い興味があったのですが、恥ずかしながら学問としての歴史的潮流にはてんで興味がありませんでした。好意的に見れば、具体的な言語の分析に熱中していた、とも言えるかもしれませんが。

加えて、私の当時の知識ではそういった方面の文献を読み解く自信ときっかけがなかったとも言えると思います。


さて、何とかその場をやり過ごし(?)、

1) 内田樹『寝ながら学べる構造主義』
2) 橋爪大三郎『はじめての構造主義』

を入門書として勧めていただきました。早速 1) を読んでいくと、心地よく、頭に比較的スイスイと入っていくではありませんか。

数年前に表面的な情報としては知りながら、その必要性については説かれながら、それでも目もくれなかった内容ですが、どうやらこの間に私自身にも変化があり、それを受け入れる素地ができたようでした。 

 個人的な話にはなりますが、私はこの数年で主な滞在地を中国(北京)、日本、香港と変えており、他の欧米、アジアの国・地域にも公用私用含め、かなり頻繁に赴いていました。

その過程では、特定の国や地域、民族、大きくは世界情勢に対する見方も変わって来ましたし、特に最近は、かれこれ滞在4年を迎えようとしている香港で起こる民主的な動きにも少なからず影響されているように思います。

また、かつて2014年の香港雨傘運動に中心人物として関わった当時大学生だったアグネス・チョウ(周庭)さんが日本訪問時に言った

「日本に来て、政治的無関心も民主主義を機能不全に陥らせることがわかりました」

と言う言葉についてもここ数年思うところが少なくなくありました。



数え切れないほどの人との繋がり、対話、一つ一つの事象がそれぞれ私に働きかけ、そして私の中でこれまでに消化されたもの、これから消化したいものがあり、今、「民主主義」や「構造主義」を論じる書籍などを通してより大きな輪郭を掴みたいという欲求が湧いてきているのだと思います。

そして、それを自分の中で比較的うまく咀嚼できれば、言語学に対する理解も、思いもより強くなる気がしています。


何かにつけてスマホが気になってしょうがない昨今ですが、
読書に没頭することは、自分のペースで他者(本)と自分と向き合う格好の機会にもなります。著者の方たち、編集者の方たち、情報を共有してくれているいろんな人に感謝しながら。


P.S
間の抜けたことに、この文章を書いているこの瞬間にも、amazonでリンクを調べる際に、実は2)の書籍を3年前にkindleで購入していたことに気づい他のは嬉しい誤算です。


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Heidi NISHIMURA
あなたと私と私の周りにいてくれる人たちにとって小さくても何か有意義なものを紡ぐきっかけになれば嬉しいです。