2019.10.13

駄目、そんなロープではきっと千切れてしまうから、小指を結んでどうか微笑んで下さい。

氷山のゆりかごにしがみ付いて、いつまでも揺られている。眠ってしまったばかりにわたしは、あなたと海に落ちて、一応藻搔いているうちに、身体も慣れてしまって、わたしたちはこれが海だと分からなくなりました。氷床で手を繋いだまま、朝顔にキスをした。あなたの口からは次々に宝石がこぼれ落ちて、空に還っていく。空っぽになったあなたに、朝顔の種を植えて、蔓が伸びるのを待っている。あの日幽霊になってしまった街は今、どうしてるかな。どうか2人の抜け殻を抱いて、未来を拒み続けていて下さい。

暴風が右を見て、左を見て、それからもう一度右を見て、可愛い手を挙げて地球を横断していく。懐かしい歌を大声で口ずさんで、手を叩いて笑っている。思い出を巻いて浮遊する生活が、空におしまいの色を映していく。墨色の羽根が橙を抱いて、蕩けたおひさまが街に降る。蝉が一斉に這い出して、数億年守り続けたタンバリンを叩いています。耳を塞ぐ間も無く我々はその歌に馴染んで、無意識のうちに人間であるという形を忘れてしまった。あなたの口付けの跡が、消えてしまったわたしのいた場所に残って、小さな花となりました。何も知らない小さなお姫様は、その花を寝床にして、新世界の夢を見る。空はもう白んでしまった。

悠に身を任せいくつも針を刺しては、光を集めている。気軽な永遠が、本物の孤独を縁取ってまた、影は太くなる次第に   引き合う影が闇となって、夜となって、星々を引き立てるでしょうあなたの幸福が、わたしの上でいつまでも輝きますように。歌の歌えるお人形を抱いていつまでも眠るあなたがようやく目覚めた時、手を握っているのがそのお人形によく似た女の子でありますように。ありますように。わたしは意味のない言葉を繰り返しては、あなたのなかでただの活字になっていく。



せきららの夜、おしまいの朝、真昼を落として飛んで行くトンビ、を、見ている俺が唯一信じたありあけの嘘、撃ち落とされたカリガネ。この街では幸福に生きるための祈りが午前5時過ぎに起床し、羽根を畳み、朝焼けに混じる藍を睨んでいる。

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