【暇な大学生の学び】4 「顔が見えること」
ちらかった机。
目の前のニトリの学習机には、学びをまとめたルーズリーフやら電子辞書やら丸くなった手袋やらが堂々と占拠している。
卒アルやらなんやらの誘惑が多く潜むこの机で勉強はあまりしてこなかった。こんなに向かい合うのはいつぶりだろう。
輩どもが占拠する机のわずかな空き。スマホを横にすっと立てる。
画面には50歳ほどの男性。見た目の割に饒舌な人だった。
この講義のオンライン授業は初めてだ。
今はやりのzoomを使い、教授の講義を受ける。
教授は携帯かハンドカメラを使って自分の研究室で講義している。
生徒側はミュート&ビデオなしだから、パジャマも寝ぐせも気にしなくていい。なんて便利な時代だ。
教授がホワイトボードを使いpolysemyを教えている。どうやら単語の多義性のことらしい。難しい。プロファイルシフトってなんやねん。
内容は難しかったが、先生のカジュアルな話し方は聞いていて心地よい。しっかりと音声も聞き取れる。そこに家と大学の距離は感じられなかった。
大きな講義室だと見えづらい板書も、動画なら見やすいし勉強効率も上がるかもしれない。完璧やん。
先生が板書を消していく。
「これね、ホワイトボードクリーナーなんですよー。これをかけると、、、あらキレイ☆」
確かにきれいだ。ホワイトボードが反射して、撮影するカメラ側もうっすらと反射している。裏側には人影はなさそうだった。
ひとりか。教授はひとりで顔も見えない人たちに対して授業しているのか。
顔が見えないと、どう話していいか、どこを分かっていないか、どのくらいスベってるのか分からない。相手の反応が見えないのは、顔を背け無視する人に話しかけてるのと大きな相違はない。
オンライン講義は先生にとってしんどいのかもなあ。
便利って大変だなあ。