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私が役に立った時1

ある時、あるサークルの顔見知りの事務局の女の人に相談された。「簡単なルームシューズってどうやって作るの?」って。
彼女は私が手作りの洋服をよく着てたから、教えて欲しいって思ったらしい。
「なんで?どうしたの?」彼女に話を聞く。

彼女の母親が転んで骨折して整形外科に入院した。骨折がよくなったので、今はその整形外科がやってる隣の介護施設にいる。部屋は2階で、食堂とか談話室とかが1階にある。彼女のお母さんは足がものすごく変形してしまっててスリッパしか履けない。でもスリッパだと転ぶ可能性が高いから危ないので、部屋から出ちゃあいけませんって。だから部屋から出ることもできず、誰とも話せず、食事も個室で一人で食べるからでサビシイって。お母さんはじっとしてない動き回ってた人だから、元気なくなっちゃって死んじゃいそ~って彼女が話す。スリッパじゃあなくて、踵に引っかける物のある履物なら(サンダルならいい)1階に降りて、他の人と話も出来るし食事もみんなと一緒に食べられるのにって。なんとか履ける物を作ってあげたい!と。ミシンも使ったことない裁縫苦手な彼女が言う。

お裁縫しない彼女に教えて~って言われても教えても、そう簡単に作れないでしょ。しようがない、じゃあ、私がやってみる!ってことになったのだ。ルームシューズ風でいいでしょ?ってことで引き受けてしまった。図書館で本借りて、一人で黙々と作り始めた。私だって、ルームシューズなんて作ったことなかったけど・・・。


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これが彼女のお母さんの足型。外反母趾で土踏まずがせり出して、上下左右わかりにくいほど変形してしまっている。

問題点
○足の裏、足の甲共、皮膚が薄い。
○足の甲の皮膚は特に敏感で、少しの摩擦で腫れる。腫れると、足の甲が1cm以上厚くなる。
○重心が変なとこにかかる。

とりあえず採寸してみた。足の甲回り、足首回り、足先から足首までの寸法など。ついでに好きな色、好みのデザインを聞く。

私は図書館の”ルームシューズ”の本を片手に、型紙を作ってみる。図書館の本だけを参考にして、自己流に色々考えてみる、ズブの素人が変わった形のルームシューズを作ってみた。

1、足型に縫い代を付けて、底布を裁つ。   
    1枚目 デニム→ジーンズから。
    2枚目 フェルトの芯地
    3枚目 キルト綿
    4枚目 ニット布→トレーナーから。
2、足型周り寸法+余裕ギャザー分の甲布を裁つ。
    1枚目 外布(冬用ウール、夏用麻、帆布)→洋服から。
    2枚目 裏地 木綿→洋服から。

材料費節約のため、あるものを利用する。着なくなった洋服を切って使う。

気を使ったこと
○皮膚が薄く敏感なので、底布は厚めの布を。足の裏側には綿を入れてクッション性をよくし、肌触りのいい布を使う。重心がかかるとこは、綿を厚めに二重に入れる。
○足の甲はよく腫れるので、ゆったりと余裕をもたす。裏地はコットンで。
○足首で固定。調整も出来るようにする。
○靴底部分がいいものが見当たらず、厚いデニム地を使ってみたが、滑ったら危ないので、滑り止め用にボンドで水玉模様を薄く塗る。

おかあさんの好みの色とデザインを考慮しながら、作ったのが上の写真。ズブの素人だけど、とりあえずのルームシューズ。

出来上がっって、彼女のお母さんにとっても喜んでもらった。彼女もすごく喜んでくれて、お母さん顔が変わったって生き返ったみたいって。ずっと一人だったのが、1階に降りて人との交流ができるようになったし、たぶん今まではブカブカの男物の履物しか履けなかったのが、かわいい~って言ってもらえたらしい。

それからずっといつも履いてるから、洗い替えやら、季節が変われば夏用やら冬用やらって、色々変えながら5~6足は作ったかな。新しく作る度足型が変わっていて、型紙はやり直し。メンテナンスも承る。
お母さんには大切に大切に履いてもらって、時々は手洗いで洗濯もしてもらってヨレヨレ。作ったものがとことん使われると、こちらも嬉しい。

私の人生の中では、こんなにも喜んでもらったことはない。私が役に立ったと思えたことは、とても幸せを感じた。         2に続く。


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