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THINK_112(2021年3月19日)/藤井隆行さん(TNP/nonnativeデザイナー)

ーー定期購読マガジン THINK BOOK について
THINK BOOK は,読む "THINK" です.Suppose Design Office の谷尻誠が毎月魅力的なゲストを招き「"考える"ことを考える場所」として開催しているイベント"THINK"を読み物として再構成してまとめています. 多彩なゲストとの間で繰り広げられる本音のトークはここでしか聞けないヒントがたくさん詰まっています.過去100回以上に及ぶ記録資料などの掘り起こしを含め,月に2回程度,定期購読マガジンとして掲載していくので,よろしければ定期購読していただいて,皆さんの日常をTHINK するきっかけになれば幸いです.(谷尻誠,西尾通哲:共同編集)

(告知資料より)
世の中の状況が変わり、幾度となくTHINKを今後どうするか考えてきましたが、今だからこそやるべきだと判断して、集まることの意味を再定義していきたいと思います。みなさまの『考える=「THINK」』のキッカケになればという願いから、この度1年ぶりに開催致します。
今回のゲストは、TNP/nonnative デザイナー 藤井隆行さん。アパレルショップの販売員を経て、nonnativeのデザイナーに2001年就任されて、20年。シルエットとサイジングに強いこだわりを持ち、その洋服の用途にあった生地や丈夫な縫製、実用的なディティールを時流にあったシルエットに再編集しながら、唯一無二のクリエーションを展開され、東京ブランドとして確固たる地位を築き上げています。サイズには特にこだわりがあり、ニット以外の商品は洗い加工をしていて、「洗っても縮まない」というのもブランドのポリシーの一つだそうです。2001年から続くnonnative、長いキャリアを通じていい洋服を知り尽くし、気づいたら「長く着られる服」になっているようなワードローブのあり方を日々追求されながらも、ファッションブランドには留まらず、会社としてはファッションブランドのnonnative・ hobo・YSTRDY’s TMRRWの他に、お店としてはvendor・ROOTS to BRANCHESやコーヒースタンド SIDEWALK STANDも運営されています。
今回のCOVID-19の影響を受けてターニングポイントについて、自粛期間中の過ごし方で気づいたこと、今後の新しい取り組みとは。たくさんのご来場お待ちしております!と言いたいこところですが、どうぞご自身のご体調を優先いただき、ご無理をなさらぬようお願い申し上げます。

THINK_112
日時:3月19日(金)
開場 19:00〜
開演 19:30〜21:30
会場:広島市中区舟入本町15-1 サポーズデザインオフィス3階

絵を描いてファックス送れば売れた不思議な時代

まずは,ブランド,nonnative の拠点がある中目黒をめぐる映像が流される.

谷尻誠(以下,谷尻):
藤井さんは,最初から自分で店は作りたいと思ってたの?

藤井隆行さん(以下,藤井):
いや,もう見様見真似でやるしかなかったんです.
最初は何も知らなかったですからね.

谷尻:
出身は岡山でしたっけ?

藤井:
いえ,僕は奈良生まれで,その後で岡山の津山で育ったんです.
大学で東京に出ましたけど.それで,武蔵美に入ったものの,ファッションを学校で学ぶことに疑問を感じて行かなくなったんです.それよりも人と遊ぶことが大事じゃないかと思って.

谷尻:
あ,クラブ活動ね(笑)

藤井:
そうそう(笑)でも,今となってはあの時もっとちゃんと勉強しておけば良かったと少し後悔も正直ありますけどね.

谷尻:
そのあとは?

藤井
それで,遊んでたんですけど,親には心配かけたくなくて,ビームスジャパンがオープニングスタッフを募集してるって聞いて,もともとは店員になることが夢だったので,しかもちゃんとしたところに就職できたら親も安心するだろうくらいに思って応募したんですよね.まさかその時には,自分がデザイナーになるとは思ってなかった.

谷尻:
それでビームスに入ったわけね.

藤井:
そう.でも,もともと夢は店員になることだったので,最初はそれを達成して浮かれてたんだけど,だんだん飽きちゃって.

谷尻:
早い.まあ,物足りなくなったんだろうね.

藤井:
そうですね,物足りなくなって.
当時,裏原という一帯がちょっと流行って,そこでは,ファッションだけでなく,音楽とかカルチャーが共にあったんですよ.それと同時に,洋服のブランドやアパレル業界にも派閥みたいなものが見えてきて.そういう状況の中で,洋服だけの世界に飽きたという感覚だったんです.それで,2000年ごろにイギリスのブランドがオープンするというので転職しました.その頃,同じビルの上にいたサーフェン智くんと出会って.そこがノンネイティブの事務所だったんですけど,そのうち,そんな好きなら作ってみないか?って誘われて.それでまずはTシャツから始めて,作れそうなものから作ってラインナップが増えていったんですけどね.

当時は,今考えるとすごいんですけど,サンプルもないし,ただ絵を描いて,ファクスで地方の取り扱ってくれるお店にそれを送るんです.そうすると,欲しいっていう数を集計して発注,出来たら発送してた.

谷尻:
そうなんだ,すごい世界.ファックス営業.

藤井:
そう.生地も見せないんですよ,信じられないでしょう?絵だけですよ.でも,当時はほとんどのブランドがそうだったんです.いま思えばすごいいい加減な仕事というか.変な時代ではありましたね.

そして nonnative としての世界観の醸成

谷尻:
本当,確かにいい加減そうですね.でも,そんな適当な仕事でバンバン売れてたのに,はっきりとした世界観が今はあるのはなぜ?どの辺から意識したの?

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