読むTHINK#86_2018年2月2日/ゲスト:谷川じゅんじさん(スペースコンポーザー. JTQ 株式会社代表)
Introduction
2018年2月2日に行われた,THINK第86回目,谷川じゅんじをお迎えしての回を読むTHINKとしてお届けします.皆さんが目にしたことのあるブランドの空間ディレクションなどを幅広く手掛けられている谷川さん.ご自身が名付けた「Space Composer」と呼ぶ仕事へのアプローチと,そこに見据えているヴィジョンとは?
ーー定期購読マガジン THINK BOOK について
THINK BOOK は,読む "THINK" です.Suppose Design Office の谷尻誠が毎月魅力的なゲストを招き「"考える"ことを考える場所」として開催しているイベント"THINK"を読み物として再構成してまとめています. 多彩なゲストとの間で繰り広げられる本音のトークはここでしか聞けないヒントがたくさん詰まっています.過去100回以上に及ぶ記録資料などの掘り起こしを含め,月に2回程度,定期購読マガジンとして掲載します.ぜひ定期購読していただいて,皆さんの日常をTHINK するきっかけにしていただければ幸いです.(谷尻誠,西尾通哲:共同編集)
当時の告知資料より抜粋
2月のTHINKは、JTQ代表、スペース・コンポーザーの谷川じゅんじさんにお越しいただきます。
LEXUSやNIKEなど誰もが知っているブランドの空間ディレクションを手がけられている谷川さん。そのクライアントは、国内外の大企業だけにとどまらず、外務省などの行政機関、個人クリエイターまで様々。空間ディレクションにとどまらず、商品開発やブランディング、都市の開発コンセプトの立案までも手がけられています。
「空間ディレクションというのは、そこへ来てくれる人と空間の間にコミュニケーションや感動体験を創出すること」と語り、オーケストラの指揮者の様な立ち位置で、クライアントの要求をかみ砕き、クリエイティブな視点を持ちながらプロジェクトをマネジメントし、良い空間をアウトプットする。そんな「スペース・コンポーザー」として活躍されている谷川さん。
その原点は、過去にキャストとして働いたディズニーランドでのお仕事だったそう。そこで「人は喜びを求めて生きていくものだ」ということを感じ、様々なお仕事をされるようになった今でも、「個の満足」を追求することを根底に提案をされています。
「場を訪れる人に感動という化学反応を起こしたい」という谷川さん。その発想の源について、お話を伺ってみようと思います。皆さんのご来場をお待ちしております。
THINK_86
日時:2018年2月2日(金)
開場 19:00〜 開演19:30〜21:30
会場:広島市中区舟入本町15-1 サポーズデザインオフィス3階
Guest_谷川じゅんじ_JUNJI TANIGAWA
JTQ代表/スペースコンポーザー
2002年、空間クリエイティブカンパニー・JTQを設立。 “空間をメディアにしたメッセージの伝達”をテーマに、さまざまなイベント、エキシビジョン、インスタレーション、商空間開 発を手掛ける。独自の空間開発メソッド「スペースコンポーズ」を提唱、環境と状況の組み合わせによるエクスペリエンスデザイ ンは多方面から注目を集めている。主なプロジェクトとしてパリルーブル宮装飾美術館 Kansei展、平城遷都1300年祭記念薬師寺ひかり絵巻、NIKE WHITE DUNK、YOHJI YAMAMOTO Exhibition、GINZA SIXグランドオープニングセレモニーなど。
2018年現在、外務省JAPAN HOUSEロサンゼルス エグゼクティブアドバイザー、旅する新虎マーケットアドバイザー、MEDIA AMBITION TOKYOアーティスティックディレクター等を務める。
体育会系から突如ホスピタリティの世界へ
谷尻誠(以下,谷尻):
じゅんじさんって,特殊な働き方をされてますよね.何というか,それまであまり職業として確立されてなかったことを仕事にされているというか.その辺りの話を今日はお聞かせいただければと思って下(のオフィス)でちょっと雑談していたんですけど.今日はよろしくお願いします.
谷川じゅんじ(以下,谷川):
そうですね,それではまず自己紹介的な感じでスライドを見てもらいながら...
僕は空間デザインをやっているんですけど,Space Compose っていう造語なんですけど,「人を惹きつける”場”のデザイン」というものを掲げてやっています.
ーー小学校で剣道,ずっとスポーツ特待生で受験勉強ナシで学生時代を過ごしたという谷川さん.でも,大学の時に父親が病気になり,大学を辞めて仕事をすることに.そこで,家が程近かった事もあり,オリエンタルランド(東京ディズニーリゾートの開発・運営会社)に就職.そこでジャングルクルーズのクルー,トレーナーを3年経験したという経歴を持たれているーー
谷川:
そこで,ホスピタリティという概念と出会うんですよ.それまでは体育会系で上下関係の強い環境で過ごしてきて,いきなりフラットで上下関係なく誰もが「さん付け」で呼び合う世界に飛び込むことになったわけです.
でも,そこで結局,人が喜ぶ仕事は良いなと素直に思ったんです.そうしてふと考えると,人を喜ばせるオペレーションはだいたいマスターしたけど,ハードウェアは何も分からない,自分では手が付けられないと感じて,そこを知るためにディスプレイ会社で12年くらい勤めました.そこでは積算管理と工程管理が主な仕事で,実はいまとあまり変わりないですね.それで会社に居たころの最後あたりは施工の仕事でなく,職人やクライアントといった様々な立場の人が集まる現場の調整役としての役割がメインになっていた時に,ディスプレイ施工側が調整役をやるのではなく,仲介役としてフラットな立場に新しいニーズがあるのではないかと考え,2002年に空間クリエイティブカンパニー・JTQを設立し独立しました.
JTQという会社でやっていることは,
コンセプトデザイン Concept
空間のデザイン Space
体験のデザイン Experiment
これらを繋げると Branding になるということですね.
それらを通して,僕は Magnet design と呼んでいるんですけど,人を引きつけるしくみがポイントだと思っています.
というのは,インターネットで情報が溢れすぎてどれが一番いいかが分からないという状態になっていますよね.インターネットで「おいしいイタリアン」といっても,とてつもない数のレストランが出てきて,どれが正解か分からない.結果的に信頼できる人に聞くっていう事が起きていますよね.そんな時代だから,ひとを引きつけるってこと,あの人に聞けばわかる,上手くいくっていう状態をつくることが重要だろうと.
どうしてそんな仕事を頼まれるようになったんですか?
谷尻:
とにかくすごい幅が広いですよね.
谷川:
幅の広さは誰にも負けないかもしれないですね.僕がやっていることって,人が中心で,アウトプットにはあまり執着していないんですよ.とにかく人を惹きつけたい,そのしくみを考えるのが仕事ですね.その結果として色んな広がり(人脈や仕事のバラエティ)が生まれたと思います.
谷尻:
でも,実際にはクライアントは会社がこれまで手掛けた実績を見るでしょう?最初は特に実績もないのに,どうしてビッグネームに頼まれるようになったのかが知りたいんですよね.
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「THINK BOOK」は、サポーズデザインオフィスが企画する、THINKをテーマにしたプロジェクトを文字と写真でとどけるメディアです。 …
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