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THINK73/石川直樹さん(写真家)

ーー定期購読マガジン THINK BOOK について
THINK BOOK は,読む "THINK" です.Suppose Design Office の谷尻誠が毎月魅力的なゲストを招き「"考える"を考える場所」として開催しているイベントTHINKを紹介するものとして,THINKに参加した人も参加できなかった人も,トークのエッセンスを追体験できるように読み物として再構成してまとめています.過去100回以上に及ぶ記録資料などの掘り起こしを含め,月に2回程度掲載していきます.
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今回は2016年の12月に実施された,73回目のTHINK(ゲスト:石川直樹さん)のダイジェストです.

日時:2016年12月9日(金)
場所:サポーズ・デザイン・オフィス広島

ゲストは石川直樹さん.当時の資料からプロフィールを掲載すると...

1977年東京生まれ。写真家。東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。人類学、民俗学などの領域に関心を持ち、辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、作品を発表し続けている。『NEW DIMENSION』(赤々舎)、『POLAR』(リトルモア)により、日本写真協会新人賞、講談社出版文化賞。『CORONA』(青土社)により土門拳賞を受賞。著書に、開高健ノンフィクション賞を受賞した『最後の冒険家』(集英社)ほか多数。最近では、ヒマラヤの8000m峰に焦点をあてた写真集シリーズ『Lhotse』『Qomolangma』『Manaslu』『Makalu』『K2』(SLANT)を5冊連続刊行。最新刊に写真集『DENALI』(SLANT)、『潟と里山』(青土社)、『SAKHALIN』(アマナ)、著書『ぼくの道具』(平凡社)がある。

オープニングは,飄々とした石川直樹さんを迎えた谷尻さんによる紹介から.

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谷尻さん:
なんか,展示会の準備で疲労困憊なんですよね?

石川さん:
はい,そうなんですよ,いま丁度大きい展覧会の準備をしていて...

谷尻さん:
どれくらい前から声がかかって準備を始めるんですか?

石川さん:
ええと,1年くらい前ですかね...会場が水戸芸術館で広いのと,間際になって慌てて準備するもんでなかなか大変で.

谷尻さん:
それって,写真は撮り下ろすんですか?

石川さん:
いやいや,これまで撮りためているものから構成を考えてですね...

谷尻さん:
だいたい何点くらい展示するんですか?

石川さん:
300点くらいですかね.

谷尻さん:
すごい数ですね...それ,展覧会が終わったらどうなるんですか,その写真たちは...

石川さん:
これが大変で(笑),ぜんぶ家に戻ってくるんですよ.いまは実家に置いていたり,部屋を借りたり...

谷尻さん:
もったいないですね・・・どこかに展示できたほうが良いですよね.売っても良いんでしょう?

石川さん:
はい,もちろんです.

谷尻さん:
丁度,東京の事務所を新しくするんです,広くして.そこでは,設計事務所のオフィスの中に一般の人も利用できるカフェやレストラン,ギャラリーなどを併設することで,うちのスタッフがちゃんとしたものが食べられるようにということと,設計事務所に一般の人が気軽に訪問できるような感じにしたいなと思っているんです.

石川さん:
まじっすか.

谷尻さん:
ええ,少し工事が遅れ気味なんですけど,そこのギャラリーにぜひ展示しましょうよ.

石川さん:
それはいいですね...

谷尻さん:
(会場を見渡しながら)すいませんね,こちらで盛り上がってしまってますが...今日のゲストは,こんな感じで,写真家・冒険家の石川直樹さんです.今日は石川さんが撮影された写真のスライドもたくさん持ってきていただいているので,それを見ながらお話を伺いたいと思います.

(会場拍手)

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力まない

石川さん:
分かりました.今写っているのがローツェの頂上から撮影したエベレストの全容です.こんなふうに,山に登ったりしながら写真を撮影しているんですけど.もともと,高校2年生の時の夏休みに,インド,ネパールに一人旅に出て,それより前に言えば,僕は東京生まれなんですけど,中学2年の冬休みの時に高地に一人旅をしたりしてですね.本をきっかけに,自分でも見てみたいなぁ,という憧れで旅をするようになって.

20歳の時にはアラスカに出かけて,デナリという山に登って,ユーコン川を下ったり,22歳の時に大陸縦断(Pole to pole)という旅に加わって世界中から集まった数名で北極から南極まで旅をしたり.それで23歳の時にエベレスト登頂して,いま39歳になったんですけど,その間もいろんなところに出かけて写真を撮って,はい,そういうことをしています.

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そう話しながら,これまでに撮影された写真や動画を見せる石川さん.淡々,飄々とした語り口の背後で流れてくる映像はしかし,なかなか過酷な状況を映し出している.切り立った山肌,道なき道,見るからに凍えそうな風景や凍傷にやられて痛そうに赤黒い頬...そして,山々の美しい風景
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谷尻さん:
写真を見る限り,なかなか過酷ですけど,普段からトレーニングをしてるんですか?

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